劇場公開日 2022年1月21日

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「世の中知らない方が良いこともある」さがす 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0世の中知らない方が良いこともある

2022年1月25日
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鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

※後半で若干ネタバレ含みます。
「お父ちゃんな、今日電車で指名手配犯見たんや。」
その翌日、父・原田智は姿を消した。
母親を亡くし、日雇いで働く父親と2人暮らしの楓は、早速父親を探し始める。
しかし、行方不明の父親を探していくと、知らなかった真相があらわになっていき…

心の奥がモゾモゾした。
『パラサイト』を観た後に近い感覚との口コミを聞いていたが、確かに邦画ながら韓国映画のようだった。
連続殺人鬼を追う父親を追うだけでは終わらない、予測不能な父親探索。
探せば探すほど、見ようとすれば見ようとするほど、見たくなかった真実が見えてくる。
「君はいったい誰を探してんの?」
最初は父親を探していたはずが、観ている側も途中から何を探していたのか分からなくなる。
明らかになる父親失踪事件の真相も、良いか悪いか簡単に判断できない、なんとも言いがたいものだった。
あの境遇と状況で山内照巳にあんなこと言われたら、誰だってそちらへ靡いてしまうよ。

とにかく構成が上手い。
登場人物ごとの視点による章立てと少しずつ過去に遡るやり方は『悪なき殺人』を彷彿とさせる。
ポスタービジュアルから分かるように、それぞれの視点によるすれ違いを意識しているらしい。
原田家の家族の繋がりを表すような卓球も効果的。
会話のキャッチボールならぬ会話のラリーや、踏み潰されるピンポン玉、そしてエンディングの音楽にも取り入れられているピンポン玉の弾む音は、いつまでも耳や目に残る。

伊東蒼という女優さん、最近来てます。
一個一個の表情が本当に良い。
無口な役のイメージだったけど、喋らせるとなお良い。
今年はもしかしたら彼女の年かも。
冒頭で、車道へ飛び出したりスーパーに入ったり『空白』っぽかったのでヒヤヒヤしたけど、万引きしたのは父ちゃんでした…
その父ちゃん役の佐藤二朗もまた良い。
最近は福田組でのあのノリを捨てた、静かな佐藤二朗が見れて嬉しい。
私的にはうるさい佐藤二朗も嫌いじゃないけど、静かな狂気を纏った佐藤二朗は無敵なので。
清水尋也は冗談抜きで怖かった。
「これは人助けです」とか言ってる時の正義に満ち溢れた目も怖いし、人殺しをなんとも思わなくなった時の何かに取り憑かれたような目も恐ろしい。
とりあえず役者みんな良かった。

案外探し物はすぐそばにあるのかもしれない。
父親捜索中に楓のすぐ近くに父親がいたように。
死は思っている以上に隣り合わせなのかもしれない。
指名手配中の“名無し”が楓に深く関わっていたように。
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唐揚げ