劇場公開日 2023年4月14日

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「情報を伝えるツール(SNSとかその使い方を含め)がいくら進歩しても人間の欲と悪意とは少しも変わっていないことを19世紀のパリの出版業界と上流社会を舞台に赤裸々に描く群像劇。」幻滅 もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0情報を伝えるツール(SNSとかその使い方を含め)がいくら進歩しても人間の欲と悪意とは少しも変わっていないことを19世紀のパリの出版業界と上流社会を舞台に赤裸々に描く群像劇。

2023年4月15日
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鑑賞方法:映画館

①やはりパルザックは偉大だ、ということが最初の感想。
②続いて、情報が真であっても偽であっても金になれば良いという拝金主義は現代のモラルの低い出版界そのまま。
メディアが金儲け第一主義になったりフェイクニュースを流したり世論操作をするのも形が変わっただけ(テレビ・SNS・YouTuberやインフルエンサー等に)。
③貴族になることに拘ったリュシュランも愚かだが、本当の貴族がエセ貴族を自分たちの仲間と認めるわけもなく、盛大に脚をすくうその悪意。
④バルザックの作品にある社会感と、その社会で翻弄される人間・賢くはないけれども心優しい人間・日和見な人間・上手く潮や風の流れを読んで振る舞う人間・自分の世界には相応しくない人間を排除する人間等々、様々な人間群像を忠実に且つ我々現代人にも共感できる映像作品に仕上げた演出・脚色・演技・美術は見事。
⑤ラスト、金色の光を浴びながらリシュランが湖に入っていくシーンは、一度幻滅を味わった人間が一旦裸になって再生する姿を表しているようで美しい。

もーさん