ある男のレビュー・感想・評価
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ピオトル・ニエミイスキじゃない
成りすましまでして代えたい人生
未だ余韻の中
「どんな境遇でもいいから、今の自分を捨てて新しい自分になりたい。
そうでもしないと生きられない人がいるんです。」
城戸の言葉に胸を打たれた。
人の人生を追いかけていると気が紛れると言った城戸も、原誠や谷口と同じく自分のルーツや人生をどこか受け入れきれずに過ごしてきたのだろう。里枝の言葉「本当のことを知る必要はなかったのかもしれない。一緒にすごした時間ははっきりとした事実」という言葉でやっと、自分のこと、自分の選んだ妻、築いた家庭を受け入れ、向き合っていこうと思えたのではないだろうか。谷口大祐の調査を経て、彼もまた救われたのかもしれない。
そう思った矢先に、奥さまの浮気発覚。最後バーで谷口大祐の人生を語ったのは逃避だろうか。「人の人生を追いかけていると気が紛れる」という言葉の通りになってしまった。
最後にマグリットの絵「複製禁止」を映したのは、彼が自分自身を直視出来ない、受け入れられないということを表しているのだろうか。谷口や原誠がそうであったように。
妻夫木聡の、感情を押し殺した絶妙な表情の変化が素晴らしかった。激しく怒ったり泣いたりしなくても、こんなに心の内を表現出来るものなのかと。
安藤サクラの自然な演技も大好きだし、窪田正孝も可愛くて応援したくなってしまった。
亡くなった子供を思って名前を呼んでくれるシーンはぐっと来た。
柄本明怖すぎ。
最近は洋画ばかり観ていたけれど、邦画の力、役者の力を見たような気持ち。
自分の人生を捨てて、人の人生を生き直したい、そう思うほどの境遇に自分は居ないはずなのに、すごく共感できて、感情移入してしまった。
谷口大祐として生きた数年間は、原誠にとってどれだけ幸せな時間であっただろうか。
相手の名前やルーツではなく、今自分が見ている相手、一緒に過ごしてきた時間が大事だと改めて思うことが出来た。
見終わったあともしばらく余韻が残るような、素晴らしい映画だった。
違う誰かになりたいと思う。
引き寄せられる社会派エンタメ
社会派エンタメ、ミステリーとしてどんどん先が気になる映画だった。
血縁、人種だけを理由にしたレッテル貼り、迫害は絶対にあってはならないし、それから逃れたいと望む人は悪なのか?その人同士が望むなら良いのではないか?
最後妻夫木聡は窪田正孝の最後の人生を自分ごととして語る。
あるいは、妻夫木聡と仲野太賀の同意のもと名前を変え、安藤サクラと結ばれ、中学生の息子は名前を変えずに済んだのかもしれない。
蜜蜂と遠雷と比較すると、衝撃的な映像みたいなものは少なかった。
少しセリフ回しが不自然な印象はあった。
傑作。窪田正孝と安藤サクラは好演。なぞがいくつか残ったが。柄本明じ...
演技は上手い
原作未読。
役者は子役含め、みんな上手い人で揃えている。ただ、この役をこの人?って言うのが幾つか有った。
それと、妻夫木の在日三世設定って要るのかなぁ。原作でもそうなんだろうし、テーマ的に必要なのは分かるんだけど、小説ならその話題の時の妻夫木演じる弁護士の内面がハッキリと出るだろうけど、映画で見ている限り、それ程かなぁと。それより、本物の谷口が消える理由(原作ではどれ位触れているのか?)をもっと出して欲しかったかなぁ。
見終わった後、ググって妻夫木が妻の浮気をLINEで知った時にスルーした理由は分かったけど、映画だけだと「えっ?スルー?」ってなってしまう。
面白かった。ミステリーとしても、演出も。
原作未読で、上映時も観そびれていたが、妹が面白かったとラインしてきて、ようやくアマゾンで観た。安藤サクラ、妻夫木聡、窪田正孝は名演で、河合優美もさすがの存在感。名前でなく、各人の存在と相手との関係性が重要というメッセージを感じた。最後のオチがおおっと思った。
アマン
血と戸籍と家族
黄昏 ≒ 誰そ彼?
役者が良い
Amazonプライムで観た。
展開が重い。全部が重い。
のちに戸籍を偽る事になるある男の子どもの時
家族ぐるみの付き合いがある友達を誘いに来たら、そこで自分の父親が友達一家殺してて血塗れのお金くれる
原誠がまず変えるべきは戸籍じゃなく顔だったのでは?って思った
殺人を犯したことで自分の人生すら狂わせた憎い父にそっくりな容姿がつらいのが理由だから。
そのあとに戸籍も変えたらもっと人生楽に生きれたのかなと思った
殺人犯の息子、在日だとか、そういう差別をする人達の中で必死で生きて、戸籍を変えてでも必死に生きる強い人だなと思った
どうしたって自分に流れる血から逃れることができない。
だからもういっそ戸籍を変えて、
自分を象る名前を捨てて、
血のつながりから目を背け続けた。
そして新たに自分を創り始めた。
城戸(弁護士)も
在日であることに、自分に流れる血液から目を背けられなかった。
自分をどんなに創り続けても、
貼られるレッテルから逃れられない。
それは自分でなく他人でさえもその人に流れる血液に目を向けるから。
自分が必死に自分を創っても、
他人は人を認識する時、その人に流れる血液や障害がある等を知った途端、以降その人を細胞レベルで認識し始め、その見方をなかなか曲げないし曲げる気も起こさない。
今の自分を捨てて生き直したい
その気持ちは痛い程分かる。
人を見る時に大事なのは
その人が自分にとってどんな存在だったか。
相手と自分との関係性はどうか
表面上では無く、
その人が行ってきた事実に目を向けて、愛してくれる人はかなり貴重な人
彼の血縁など、全てを知った上でも関係なく愛してくれる人に出会えたある男は報われたと思う。
あなたも。。
タイトルなし(ネタバレ)
原作未読です。
鏡に映った自分に向かって「お前は誰だ」と問い続けると、人は発狂するらしいですね。まさに鑑賞者にあなたは何者ですか?と問いかけるような作品です。最初は犯罪者の家族の人生にスポットが当てられた作品なのかと思いましたが、妻夫木聡演じる弁護士が在日コリアン3世であることが語られた辺りから、ああ、出自やバックボーンのようなことも含めもっと広いことを扱いたいんだなと感じました。色々考えさせられました。
とにかく役者さん達の演技が素晴らしかったです。冒頭から引き込まれます。窪田正孝さんはこういう役がよく合いますね、顔立ちもあると思いますが、鋭さや暗さの中に無垢さもちゃんと感じられてかなり良かったです。安藤サクラさんは言うまでも無し。最初の20分程駆け足ですがここまで説得力あるのが凄い。この後展開していくのでここがマズイと総崩れです。他の役者さんも皆んなめちゃくちゃ良かった。
ラスト、お酒のシーンで、弁護士が自分のことを話す時に嘘を言いますよね。あれが良かったですね。一瞬、え?どゆこと?と混乱しましたが多分そういう事ではなく。あのシーンがあることで鑑賞者にとってテーマがグッと近くなるんだと思います。皆んなあるでしょ?ちょっと話盛ったり、違う自分を演じたり。でもどれも自分自身なんだ。
私には英語が堪能な友達がいるのですが、日本語を話す時と英語を話す時では若干キャラ変わるなーと思ったことがあります。そもそも扱う言語が変われば発声の仕方や表現方法、文化が丸ごと変わるので当然なのですが、それも同じ当人なんだよな…人には色んな顔があり、そういうものなんだよなーと思った次第です。
死刑囚の絵画展で、本人が特定されるところはちょっと都合良すぎな気はしますが、全体的に良作でした。暗いけど淡々と運ぶ感じも良き。個人的に好きなのは、中学生の息子(坂本愛登)が「お父さんは自分が父親にして欲しかったことを僕にしたんだと思う」と言った時、安藤サクラさんが「それだけじゃなくて君を好きだったからだよ」と言うシーン。丁寧で温かくて好きです。
ある男とは
前から観たかったが、なかなか時間がなくて観れてなかった作品。
原作は平野啓一郎の同名小説。
離婚を機に宮崎に帰郷しさまざまな辛い気持ちを抑えながら日々を送る里枝(安藤サクラ)は、実家の文房具店に買い物に来る谷口大佑(窪田正孝)という男と再婚。
家族も増え、幸せを実感しながら生活に張りを取り戻した矢先、大佑は仕事中の事故で帰らぬ人となる。
その後、大佑の一周忌に兄の谷口恭一(眞島秀和)が現れるが、遺影を見て「大佑じゃない」と主張する。
里枝は前夫との離婚で世話になった弁護士の城戸(妻夫木聡)に再び手続きを依頼。早速城戸は調査に乗り出すのだが…。
果たして、里枝の再婚相手は一体誰だったのか?
少しづつ解けていく真相とその裏に隠された人々の想いが交錯する過程が、なんとも言えない深みを描き出しているように思う。
ちなみに映画版では、谷口大佑及びその家族の描写が割とばっさりカットされているようで、終盤、城戸が里枝と恭一に結果報告をする場面で見せた、語気を強めて恭一に言うセリフに集約されている気がする。
さて、事件は解決したのだが、物語は何か釈然としない。
そう。弁護士の城戸が抱える葛藤のような複雑な想いは何一つ解決していないのではないか。
原作は未読なので映画版のみの個人的な感想だが、ラストで「ミイラ取りがミイラになる」という城戸の心情がオチのように描かれているが、そもそも城戸は「元からミイラだった」のではないだろうか?
「ある男」とは真相を追っていた側、つまり城戸弁護士の話なのではないかと思えて仕方がないのである。
「市子」とセットで鑑賞すると、よりこの世界観が同一線上の物語として楽しめるのではないかと思う。
深さがいまいち掴めなかった
あまりの高評価と絶賛の感想に驚いている。平野啓一郎さんの原作だと知らずに観てしまった。平野啓一郎さんの分人主義も読んでいて複数の自分を肯定する考えに深く共感していたのに、映画からテーマである平野啓一郎要素を読み取れなかった自分が情けない。
ミステリアスな謎解きを期待しすぎたのかもしれない。柄本明さんがヘイトで妻夫木さんに悪態をつくのは物語のファシリテーター的な役割なのか?本物の谷口弟(仲野太賀)はただ老舗の次男が嫌になったただけ?
そこを深く考えなくてよいのなら、窪田正孝Xの生き方や、安藤サクラさんの幸せだった現実を素直に受け入れる姿、母子で支え合う姿はとても好感が持てたし、過去やしがらみに捉われず今の自分を精一杯生きればいいのだと教えられた気がした。
イケメン弁護士にやられる
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