ある男のレビュー・感想・評価
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分人の一評価だよ
小説は未見
平野啓一郎さんの書く社会時評は好きなので、観るべき作品とおもいました。
結果
各出演者は的確だし、石川監督の歯切れのいい展開はいいと思いました。
特に良かったのは子役はさておき、やっぱり安藤サクラさんでした。人生の一断面を演じるのに、その前日譚や愛する人の複雑な心境を思いやったラストのシーン等彼女無くしてはありえない演技構成で唸りました。
文頭にあるように原作は未見なので、谷口大祐(太賀くん)の入れ替わる前、入れ替わった後の人生がどうも消化不良で、もう一方のXに主題を絞った結果に主題はわかりやすいのですが、映画的なカタルシスが減じられたような気がします。
純文学の映画化であり、最後の弁護士のシーン等いくらでも深読みができる象徴的な表現は素晴らしいのですが・・
映画としてはどうなのだろう?
不穏な気持ちを引きずらせる
原作は未読です。
淡々と静かな描写ですが、どこか不穏感の漂う、複雑な余韻の残る作品でした。
何より安藤サクラと窪田正孝、妻夫木聡の演技に引き込まれます。
何気ない日常の中で涙をこらえる表情に、息子を想う母親の表情など、リアルな存在感を放つ安藤サクラ。
穏やかな父親の表情から狂気じみた父親の表情のギャップ、過去に苛まれる無気力な絶望感を伝えてくる窪田正孝。
窪田正孝がランニング中に倒れる場面、この込み上げる感情をどう表現していいのか、当人にも観ている側にも分からないような、印象深い演技でした。
弁護士として安定した生活を送っているけれど、妙に不安定な佇まいを見せる妻夫木聡。
登場人物の日常を淡々と捉える中に、社会の中に根強くある差別意識も描かれており、理不尽さを強く感じます。
自分ではどうしようもない出自などから、他人に成りすまして逃れたいと追い詰められるのは、やるせないです。
それでも、名前や戸籍に関係なく、実際に接してその人間を知る、共に過ごして大切に思い合える人間だったという事実が重要なのだと、強く胸に響きました。
終盤の清野菜名と仲野太賀の再会の場面や、安藤サクラ親子の会話の場面などから、そういう想いが伝わります。
しかし、安堵できる穏やかな場面なのに、何故かそこには暗く響く音が入っており、そこはかとなく不安をあおられます。
ここでスッと終わるかと思いきや、そこからの不穏な気持ちを引きずらせる展開が、なんとも複雑でした。
本人を知り大切に思い合える存在、それが妻夫木にはないために、それらの場面では妻夫木の立場で心がざわつくような不穏さを表していたということなのか。
他の人に成りすましたいという気持ちがあり、自分の存在があいまいになっているということなのか。
冒頭の場面からすると、もしかしたら妻夫木は他人に成りすますような言動を繰り返しているのか。
そうやって自分を保っているのか。
差別意識は社会の中に根強くあるので、それに苛まれる人間はまだまだいて、不穏さは消えないということなのか。
などと、いろいろと考えさせられる、複雑な余韻のラストでした。
見応えありです。
堂々
タイトルなし(ネタバレ)
原作未読で例の如く窪田正孝さん目当て 笑 で鑑賞。今回はラッキーなことに初日舞台挨拶がゲット出来たのでそちらで行ってきました。本編とは打って変わっての和やかなトークで楽しかったです。
本編に関してはドキュメンタリーを観ているような感覚で大祐こと、ある男Xの人生を遡っていく中で個人とは、自分とは、大事な事は何なのかを妻夫木さん演じる城戸と一緒に考えさせられるような内容で終始重苦しい雰囲気で進んでいきます。そしてXの正体と何故彼はXにならねばならなかったのかの真実を知ったとき、生まれた時からの呪縛と他人の無責任な発言や先入観に苦い想いになると同時に観ている私自身も彼に勝手な想像を抱いていた事にハッとしました。窪田正孝さんの、暗い過去を背負いながらももがき生き、そして人生の最後に小さな幸せを掴んだ男Xの演技がとても良かった。
結末も今作の題材を上手く使ったダークな終わりで良かったと思いました。妻夫木さんの、表面上は上手く取り繕いながらも周りからの期待や押しつけ、そして彼自身の生まれのヘイトに内心ドロドロになっているであろう演技が良かった。海外では笑いが起きたとのことで確かに向こうの人にはブラックジョークに聞こえるのかもと感じました。
微妙
心の深淵で繋がり向き合う中で
結末に迫る時の流れを引き延ばしたくなる様な、不思議な魔力に満ちていた。丁寧な心理描写で結ぶ演者の感情表現が素晴らしく、惹き込ませ心を離さなかった。溢れるヘイト、止まない憎しみ、隣人への不信感…生き直す真っ白な台本に希望を託しても、人は別人には成り得なく。社会の病理とは、付き纏うレッテルと抗えない血筋などではなく、それを掘り起こさせる情報網なのだ。ただ、それすらを払拭できること、それは過ごした時間で抱いた愛情であり、事実そのもの“真心で交わした経験”なのだ。だから、冷ややかな選択によるミステリアスな結末は、その温もりを沈静化するに値した。探り、知り、生きる為に捨てる。人は、苦悩の解放を渇望する旅を続けていくのだろう。
悠人に泣かされる。
原作は知らないけど良かった!
人それぞれ捉え方は違うかもだけど、個人的には切ない、報われない大祐(窪田正孝)って感じでした。
テンポ的にはゆっくり話が進んでく感じ、そのゆっくりテンポで序盤、中盤辺りで合間合間に眠気が。
眠気のおかげでストーリーは100%理解はできてないけど...。
主演の妻夫木くんは雑誌の読モ時代から知ってるけど変わらなすぎて驚く!(笑)
てかどうしても気になったんだけど妻夫木くん植毛しました?髪のわけ目の生え際に違和感あってそっちばかり見ちゃった(笑)
最後に里枝(安藤サクラ)の息子の悠人に2度泣かされた。
悠人の部屋での里枝とのやりとり「寂しいね」。
ラスト軽トラの荷台で「お父さんが何で優しいかがわかった」を聞いた瞬間、涙が出た。
自分の素性を隠して生きる人生
ある男の正体を追及していくが
思ったほどミステリーではなかった
引き込まれる迄に時間がかかった
…どうしてだろう
登場人物が多数いて分かりにくい
ところにきて
…ある男
に余り興味が湧かないところかな
もう少し…演出に面白味が欲しかった
妻夫木の最後は
謎めいていて…よかった
…もしかすると
・・・素性隠して生きるのだろうか
追記。
[2024.3.4]配信にて
亡くなった男…ある男
ある男が何者なのか素性を
調べていく弁護士の城戸(妻夫木聡)
…ある男の正体は偽名を使っていた
事がわかった(谷口大祐)のなりすまし
何故に偽名だったのか
調べていく内に彼の生い立ちに…
『名前』の意図するものは
という問いかけのように感じた
名前はその人を現す名
すなわち。名前を変えれば
違う人物になり得る
…犯罪者の息子
というレッテルから逃れたかった
自分の出生を知られない様に
生きたかった
このある男は新たな自分に
なり新たな人生を送りたかった
弁護士の城戸にとっても
在日三世というコンプレックスに
生き辛さを感じていた
…偏見…差別にさらされる社会
生まれた環境は
変えることはできない
…自分は。と
日本人として生まれたかった
まさか、ある男の調査で
自分と対峙することになるとは。
後ろ向きの男の絵画
顔が見えないので何者なのか
わからない
…誰にでもなり得る
"自分の人生は自分のもの”
そうですね~この人生は手放したくない
ですね~ 城戸の言葉
これって…谷口大祐の人生を
なりすましちゃったの
何となくだけど。城戸が言おうとした
…名前は
ミステリーではなくヒューマンドラマ
あまり深掘りしていない感じというか、分かったことをそのまま表す、今いる人たちが紡ぐ言葉や表情からストーリーを味わう、そんな感じの映画でした。
物足りなく感じる方もいると思いますが、私は逆にそれが良かった。
けっこうよかった
ミステリアスな物語がとても面白い。前半は安藤サクラ、後半は妻夫木聡が主役になる。結局のところ犯罪者の血縁者は苦しくて、息子が素性を偽って生きるほどつらい思いをするという話で、その娘は果たしてどうなるのか、自分の出生の秘密を知ったら大変なことになるのではないかと心配だ。
僕自身は血縁のない子どもが二人いてとても幸せに過ごしている。なので血縁で苦しい思いをするのがあまりピンと来ない。身近にアル中がいないし、人殺しもいない。そんな安全で恵まれた場所にいるからだろうか。住所を変えて名字が変わってボクシングで活躍していてもバレてしまうものなのだろうか。もし本当にそうならつらい。
妻夫木聡が苦労して調べたのに、安藤サクラは「やっぱり知らなくてもよかった」と語っていたが、知ったからと言ってどうなるわけでもないので、気にしなければいいだけのことでないないだろうか。
ミステリーとしても、人間ドラマとしても、描き込みが足りず、物足りない
「嘘を愛する女」のように、「自分が愛した男性はいったい誰だったのか?」と悩む女性の話なのかと思っていると、男性の正体を調査する弁護士の話がメインになっていく。
ただ、その割に、謎を解く手掛かりが偶然によってもたらされるなど、ミステリーとしては、緻密さに欠けていると言わざるを得ない。
物語の核心部分となる、男性が他人に成りすました理由にしても、同情はできるものの、「やむにやまれず」といった切羽詰まった必然性は感じられない。
作品を通して度々提起される「差別」に対する問題意識も、ストーリーにうまくマッチしているとは思えないし、心にもあまり刺さらない。
何よりも残念なのは、柄本明演じる戸籍交換ブローカーの扱いで、せっかくインパクトのあるキャラクターだったのに、もっと物語の展開に活かすことはできなかったのかと、もったいなく思ってしまった。
「自分とは違う人間になって、別の人生を送ってみたい」という思いは、今の人生に対する不満の裏返しなのだろうが、誰もがそうした願望を持っているということを描いたラストシーンには、少なからず共感することができた。
自分を捨てて他人の人生を生き直すほどのわけ
ストーリーは重厚な社会派ドラマ。生きづらい宿命を背負う、登場人物たち。でも、自分の人生を交換するほどの生きづらさってなんだろう。交換すれば生きやすくなるのか?
窪田正孝のまとう暗さが役によくあっていた。安藤さくらはセリフの間合いが素晴らしい。愛情深い役柄がよく表現されていた。
旅館の次男坊が、自分の戸籍を捨てるほどの苦悩があったのかは、よくわからなかった。あのお兄さんは、弟が亡くなっているのを望んでいるみたいではあったが、失踪前にそれほど、酷いことしたの?一体何があったのか?
あと、疑問なのは、殺人シーンで去って行く人、窪田正孝でしたか?別人に見えたよー。
#80 リアルなりすまし
ネット上なら誰でもなりすましできるけど、リアルワールドでは中々難しいよね。
でも日本には戸籍制度があるから、本人さえ同意すれば簡単に他人になりすませちゃう。ある意味そこは問題。
みんな本当のことを言っているのかどうかわからない中、刑務所内にいる囚人が言ってることが実は1番リアル。
特に1番まともそうに見える弁護士の家庭が1番ひどい。
うその世界でほんのいっときでも本物の幸せを感じれたニセ谷口の人生のほうが良かったのでは?
差別や偏見にとらわれずに本質を見ることの重要性を教えてくれる良作
キーワードは
在日、ヘイトスピーチ、身元ロンダリング、snsなどのなりすまし…
自分の力ではどうすることもできない生まれや家柄、ルーツ…
人をワインの“ラベル”のように貼って見る人間の愚かさよ。
本作には差別と偏見によって苦しむ人の声が根底にある。
大祐たちは、犯罪を犯していなくても、名前を変えないと生きていけない人たち。
こういった人が、世の中にいることを改めて気付かされた。
二度目の人生を前向きに生きようとした大祐。
彼を愛した里枝。
血はつながらないものの、本当のお父さんのように慕っていた息子。
この事実が真実なんだと。
大祐の正体を追えば追うほど、在日3世である自身とも重なる城戸。彼がこれほどまでに本件にのめり込んだのは、自分自身を投影していたからではないだろうか。
家柄、職業、肩書き、出身地、そもそも名前だって単なる記号でしかないのかも。
重要なのはその人の人間性や本質。
差別といった意味では「ザリガニの鳴くところ」と基本的なテーマは同じだと思う。
安藤さくらと義父の柄本明が同じ作品に出ているのは面白い。そして、柄本明の名演には唸る。
ところで、最後、城戸の妻のLINEの通知は(浮気相手からのLINE)は、皮肉を込めたメッセージですね?
一見幸せそうな家族だって、本当のところはわからないですよ!ってことかな?
原作未読なので、読んでみようと思う。
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