ある男のレビュー・感想・評価
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人生は上書きできるのか
サスペンスやミステリを期待していたが、人間ドラマの色が濃かったかな。
演技に関しては全員素晴らしかった。
今回は特に柄本明の底知れなさを感じる怪演が残る。
脇を含めて隙なし。(河合優実はもっと観たい)
反面、脚本はややまとまりに欠けた印象。
最後に真木よう子の浮気や妻夫木くんの騙りが入ったことで、『誰もが仮面を被っているし、誰かになりたいと思っている』という有り触れた結論に見えてしまった。
「真実を知らなくてもよかった」というところで締めた方が綺麗だったのでは。
まぁそうすると、様々に描いた差別や偏見が無駄になってしまうのですが。。
しかし、窪田くんはボクシングジム周りの人間関係には恵まれてたハズなのに、それでも足りなかったのか。
そこから2回も戸籍を変えた、その背景や心情を知りたい。
別の人になりかわってみたいことあるよね。
鏡に自分の後頭部が写ったら?どんな世界が見えるんだろうか?
3年9ヶ月愛した旦那が、ある日突然に「ある男X」になる。そんな状況に巻き込まれて翻弄する里枝(安藤サクラ)が真相を探る為に弁護士の城戸(妻夫木聡)に依頼することから始まるミステリー。城戸はこの依頼に仕事を超えて、自らの出自と重ねるようにのめり込んでいく。
在日、戸籍、差別、なりすましが主なテーマの原作だけに、かなり複雑で重い。しかし最後まで目が離せない脚本と演出はお見事❗️
死刑囚の息子が暗い過去を塗り変えたことは全く違和感はない。自分だってそう思うだろう。
城戸と小見浦(柄本明)の刑務所のやり取りが今作の見所。城戸に向かって小見浦が言う。「先生はなんで私が、小見浦ってわかるんですか?顔に書いてありますか?」このセリフに少しゾッとすると同時に、戸籍なんてただの紙切れなんだよなあと思う。ラストの城戸のバーのシーンと奇妙な絵がなにか色んな想像をさせながら締めてくれた。キャストの感想。窪田正孝のボクサー役は凄い。「初恋」を思い出した。安藤サクラさんは気丈な母親役を見事に演じてました。その義父の柄本明の短いシーンだが謎解きの鍵になる役を怪演。わざとらしい関西弁が逆に面白い。清野菜々さん今年は何本映画撮ってるんだ〜?売れっ子ですね。でんでんも何やらせてもしっくりくるなぁ。仲野太賀はラスト一瞬だけ贅沢に使いましたね。
久々の骨太の邦画ミステリー満足でした👍
ある男だらけ?
ミステリーとしての雰囲気は最高 だが、あの人物の描写がないのが残念
里枝(安藤サクラ)が大祐という人物と再婚して、大祐が事故で死亡した後、大祐が実物とは別人と判明するところから始まる物語です。
結局、原という男が曽根崎という人物と戸籍交換し、さらに大祐と戸籍交換したことが判明します。
肝心の曽根崎という人物についての描写がないため、説明不足に感じました。
最後の弁護士の城戸についても、なりすましを匂わせながら幕を閉じましたが、衝撃はそれ程ありませんでした。
ミステリー映画としての雰囲気は最高ですが、曽根崎という人物の描写は、ある程度いれるべきだったと思います。
追記 ミステリー映画としての引き込み度は、今年のトップクラスだと思います。
タイトルのある男とは誰のことなのか?純文学を映画で読む
直木賞・芥川賞は以前は読んでいたのですが、仕事が忙しくなったタイミングで読まなくなったのが平野さんが受賞した頃のため、受賞作も本作も読んでいません。
京都大在学中に芥川賞を受賞したとのことで当時メディアによく出演されていました。
2歳ころ父親を亡くしたため気持ちがそこへ向かうとのことを話していたことがあり、そのことが何故か印象的でした。
本作も義理父と子供の交流のシーンなどもあり、なんとなく納得。
全体的にほんわかしたゆっくりムードで進みますが、飽きることなくテンポよく最後まで進みます。
タイトルや予告編と異なり、謎解き要素は少ないです。
謎解きサスペンスではありません、爽快感や面白さを求めて鑑賞しないほうがいいかと。
人としての存在について考えさせられることが多かったです。
見ていて考えすぎるほど強くはなく、問題提起というかんじでしょうか。
妻夫木くんを映画で久しぶりに見ましたが、大人の男を非常にかっこよく演じられており、さすがだな~と思いました。ほかの出演者も見事です。
1つ気になったのは特に法律関係の仕事は守秘義務が発生するため、家族間の会話に出すことはできません。ですが弁護士がどのような人探しをしているかを奥さんが知っていて会話をしていることに少し違和感を感じました。
結局タイトルの「ある男」とは「どの男」を指すのかについては、見た人によって異なります。
ラストもあまり過度な期待はしないほうがいいかもしれません、こちらも見た人によって異なるかと思われます。事実?それともただのつくり話なのか?ここを見る人がどのように受け取るかにより異なります。
いずれにしても別の人生を生きてみたいと思うことは誰でもありますよね?
国籍、血縁、変えられない多くの背景が重く感じることもあります。
見終わったあと、なんともいえない、考えさせられるような要素が残りましたが、それもまた読書をした後の感じに似ていて心地いいです。そういった意味では良い映画だと思います。
何回も見たいという幸せな映画ではないですが、純文学を映画で読める印象はわるくはないです。
人は自分の過去を上書きできるのか
平野啓一郎のヒューマンミステリーを映像化。俳優陣の演技、作品テーマ、脚本・演出の力など、今年の日本映画では出色の出来になっている。
冒頭、安藤サクラと窪田正孝の出会いのシーンから、ただならぬ密度の濃さ。二人の関係が深まり、幸せな家庭を築いたことをしっかり描いた上で、突然訪れる悲劇と混乱。ここから主人公である妻夫木聡が登場し、身元調査を始めてからの展開は、十分謎解きになっていて、引き込まれる。
調査によって明らかになる男の過去は、あまりに辛いもの。在日三世である主人公は国籍変更により出自を消したが、人は自分の過去を自分の手で上書きすることができるのか、そんな根源的な問いかけに感情が揺さぶられる。それでも、二人が築いた家庭が幸せなものであったことは確かで、そこに希望を見たい。長男が自分から妹に真実を伝える覚悟を示すシーンには、涙がこぼれた。
安藤サクラは、ほのかな色気も感じさせて、とにかくうまい。窪田正孝は、ピュアさと狂気さが彼ならではの持ち味。妻夫木聡は難役だった。脇では、柄本明の怪演が強烈。掘り出し物は、小籔千豊。コメディリリーフとしてうまくはまっていた。
向井康介のシナリオの功績は大きい。石川慶の演出は、これまでの作品で時折見られたギミックを排し、正攻法で好ましい。ラストは、なるほどと思いつつも、それまでの展開からすると軽いように感じた。
塗り替えたい人生
ずいぶん前に原作を読んだが、正直 その時には
それほどピンとくる感じではなかった。
…が、しかし役者に惹かれて鑑賞。
個人的には、原作より分かりやすく面白かった。
安藤サクラは、まさに田舎町の文具屋さんにピッタリの
配役だったし、窪田正孝も親の罪を背負ったような
苦しみを切なく演じている。
それに、妻夫木聡は登場した際に、おやっと思うくらい
雰囲気が変わっていて、弁護士という富裕層の立ち位置と
在日という生まれを背負っている複雑な生い立ちを
良く表現していた。
生きてきたことを何もかもリセットしたい。
そんなふうに思う人は多いのだろう。
この作品は、見方によってそちらにも重心が
置けるし、また 安藤サクラの「ある男」が
結局は、誰でも良かったという「愛」の物語として
感じることもできる、とても面白い映画と思う。
しかし、江本明はどの作品に出てもどんな性格
の人物でも、いったい演技なのか本人なのか…
彼が出演することで、作品の深みが数倍上がる
ようなきがする。
複製禁止
本作のオープニング。一人の男の背中しか映っていない一枚の絵。目の前の鏡にも背中しか映っていない。
顔のない男。原作を読んでいたので、この絵が、ルネ・マグリットの『複製禁止』であることを知る。
複製禁止のはずの人生を歩まざるをえなかった「ある男」。その男の背中を追いかけることで、自分をそこになぞらえる弁護士。過去に見切りをつけたい男たちが、どこかで重なり合っていく様。
『複製禁止』の絵が、ずっと脳裏から離れなくなる。
戸籍の交換の詐欺罪で服役している男は弁護士に、交換じゃなくて、身元のロンダリングだ、と言う。過去を洗浄したい人はいっぱいいる、と言う。
多かれ少なかれ誰しも思っている。なりすましへの憧れ。あるべき自分に近づきたいという願望。それには過去を洗浄しなければという焦燥感。
人として生きることの危うさ。忘れたころに、再び『複製禁止』の絵が映し出される。
「ある男」の妻は、一緒に暮らした日々は幸せだった、とほのめかす。
救いの言葉だ。一瞬でも、あの絵の呪縛から解き放たれるような気がした。
謎はすべて明かされるが爽快感はない
平野啓一郎の社会性が出た作品
原作者の根本思想として、自分の実態を消去したいほどに差別的で抑圧的な社会を告発したいということがある。そこをベースに考えれば仕掛けの意図がよく分かりる。
妻夫木聡、窪田正孝の演技はなかなかのものであった。妻夫木の被抑圧的な気分の表現は素晴らしいし、窪田のボクシングシーンは違和感を抱かせない動きでセンスを感じた。
しかし、それ以上に感嘆したのは柄本明の演技だ。歳を重ねるごとにすごみを増している。ベテランの男優では、石橋蓮司と双璧ではなかろうか。一方で主役級では目立った俳優がいなくなった気がする。例えば緒形拳は善人と悪人を対照的に演じ分けることができたが、そういう俳優は今は思い浮かばない。これは映画産業の衰退と軌を一にしているのだろうか。監督に巨匠と呼ばれる人がいなくなったのも同じようなことだろう。
これはミステリー?
ラスト暗いなぁ...
窪田さんの谷口の判りやすい闇ではなくって、
妻夫木さんの城戸の笑顔の嘘っぽさというか、
どこか影のある感じが上手かったなー。
ラストのバーのシーンも感情のなく、ただただ語ってるだけみたいな、
だから、こっち側で判断を任せられたような、にしても、まったく前向きさを感じなかったな。
安藤サクラ親子のシーンと真逆だよね、正直。
城戸だけが、完結していない感じで、これから、この男がどうなっていくのかが、めっちゃ気になってしまった。
といっても、何にせよ、柄本明さんの小見浦憲男が、
いちばん心に残って怖くて痛かったなー。
帰化した在日3世の城戸に対する
他人の痛いところをえぐるような煽るような言葉と演技が...。
他のみなさんの演技もスゴイし、ストーリーも面白かったんですが、
ただ、残ったのがそのシーンで、この作品のメッセージが、
柄本明さんの言ってること全てに思えてしまいました...。
だから、わたしの中では他がボヤけてしまって、薄まってしまった。
あとは、
違う自分になってでも自死することなく生きるなら、
戸籍売買が犯罪だとしても.、それはそれで良いと思ってしまいました。
うん、原作を読んでみよう。
与えられた背景と自身が生んだ経歴と
宮崎で林業に従事する谷口大祐が亡くなって1年後、法事にやって来た大祐の兄から弟ではない別人と告げられたことで、弁護士が身元を調査する話。
谷口大祐は誰なんだ?過去に何が?が主な話しかと思ったら、確かにその部分もあるけれど嫁に呼ばれてやって来た横浜の弁護士がメイン!?
結構なご都合主義でXの父親の素性と遭遇、判明しちゃったのは頂けなかったけれど、そこからみえてくるXの過去はなかなかキツい。
ただ、リアルな話しだと正式な手続きでも氏名は変えられるはずだけど。
そして小見浦に見透かされた弁護士は、ここで知り得たそんな世界に憧れて、初めての店での息抜きですか…これは憐れで哀しさを感じた。
そして、プライベートでは仕事を活かしたのか泣き寝入りなのか、その先が気になった。
ラストシーンまで引き込まれます
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