ある男のレビュー・感想・評価
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ミステリーとしての雰囲気は最高 だが、あの人物の描写がないのが残念
里枝(安藤サクラ)が大祐という人物と再婚して、大祐が事故で死亡した後、大祐が実物とは別人と判明するところから始まる物語です。
結局、原という男が曽根崎という人物と戸籍交換し、さらに大祐と戸籍交換したことが判明します。
肝心の曽根崎という人物についての描写がないため、説明不足に感じました。
最後の弁護士の城戸についても、なりすましを匂わせながら幕を閉じましたが、衝撃はそれ程ありませんでした。
ミステリー映画としての雰囲気は最高ですが、曽根崎という人物の描写は、ある程度いれるべきだったと思います。
追記 ミステリー映画としての引き込み度は、今年のトップクラスだと思います。
タイトルのある男とは誰のことなのか?純文学を映画で読む
直木賞・芥川賞は以前は読んでいたのですが、仕事が忙しくなったタイミングで読まなくなったのが平野さんが受賞した頃のため、受賞作も本作も読んでいません。
京都大在学中に芥川賞を受賞したとのことで当時メディアによく出演されていました。
2歳ころ父親を亡くしたため気持ちがそこへ向かうとのことを話していたことがあり、そのことが何故か印象的でした。
本作も義理父と子供の交流のシーンなどもあり、なんとなく納得。
全体的にほんわかしたゆっくりムードで進みますが、飽きることなくテンポよく最後まで進みます。
タイトルや予告編と異なり、謎解き要素は少ないです。
謎解きサスペンスではありません、爽快感や面白さを求めて鑑賞しないほうがいいかと。
人としての存在について考えさせられることが多かったです。
見ていて考えすぎるほど強くはなく、問題提起というかんじでしょうか。
妻夫木くんを映画で久しぶりに見ましたが、大人の男を非常にかっこよく演じられており、さすがだな~と思いました。ほかの出演者も見事です。
1つ気になったのは特に法律関係の仕事は守秘義務が発生するため、家族間の会話に出すことはできません。ですが弁護士がどのような人探しをしているかを奥さんが知っていて会話をしていることに少し違和感を感じました。
結局タイトルの「ある男」とは「どの男」を指すのかについては、見た人によって異なります。
ラストもあまり過度な期待はしないほうがいいかもしれません、こちらも見た人によって異なるかと思われます。事実?それともただのつくり話なのか?ここを見る人がどのように受け取るかにより異なります。
いずれにしても別の人生を生きてみたいと思うことは誰でもありますよね?
国籍、血縁、変えられない多くの背景が重く感じることもあります。
見終わったあと、なんともいえない、考えさせられるような要素が残りましたが、それもまた読書をした後の感じに似ていて心地いいです。そういった意味では良い映画だと思います。
何回も見たいという幸せな映画ではないですが、純文学を映画で読める印象はわるくはないです。
人は自分の過去を上書きできるのか
平野啓一郎のヒューマンミステリーを映像化。俳優陣の演技、作品テーマ、脚本・演出の力など、今年の日本映画では出色の出来になっている。
冒頭、安藤サクラと窪田正孝の出会いのシーンから、ただならぬ密度の濃さ。二人の関係が深まり、幸せな家庭を築いたことをしっかり描いた上で、突然訪れる悲劇と混乱。ここから主人公である妻夫木聡が登場し、身元調査を始めてからの展開は、十分謎解きになっていて、引き込まれる。
調査によって明らかになる男の過去は、あまりに辛いもの。在日三世である主人公は国籍変更により出自を消したが、人は自分の過去を自分の手で上書きすることができるのか、そんな根源的な問いかけに感情が揺さぶられる。それでも、二人が築いた家庭が幸せなものであったことは確かで、そこに希望を見たい。長男が自分から妹に真実を伝える覚悟を示すシーンには、涙がこぼれた。
安藤サクラは、ほのかな色気も感じさせて、とにかくうまい。窪田正孝は、ピュアさと狂気さが彼ならではの持ち味。妻夫木聡は難役だった。脇では、柄本明の怪演が強烈。掘り出し物は、小籔千豊。コメディリリーフとしてうまくはまっていた。
向井康介のシナリオの功績は大きい。石川慶の演出は、これまでの作品で時折見られたギミックを排し、正攻法で好ましい。ラストは、なるほどと思いつつも、それまでの展開からすると軽いように感じた。
塗り替えたい人生
ずいぶん前に原作を読んだが、正直 その時には
それほどピンとくる感じではなかった。
…が、しかし役者に惹かれて鑑賞。
個人的には、原作より分かりやすく面白かった。
安藤サクラは、まさに田舎町の文具屋さんにピッタリの
配役だったし、窪田正孝も親の罪を背負ったような
苦しみを切なく演じている。
それに、妻夫木聡は登場した際に、おやっと思うくらい
雰囲気が変わっていて、弁護士という富裕層の立ち位置と
在日という生まれを背負っている複雑な生い立ちを
良く表現していた。
生きてきたことを何もかもリセットしたい。
そんなふうに思う人は多いのだろう。
この作品は、見方によってそちらにも重心が
置けるし、また 安藤サクラの「ある男」が
結局は、誰でも良かったという「愛」の物語として
感じることもできる、とても面白い映画と思う。
しかし、江本明はどの作品に出てもどんな性格
の人物でも、いったい演技なのか本人なのか…
彼が出演することで、作品の深みが数倍上がる
ようなきがする。
複製禁止
本作のオープニング。一人の男の背中しか映っていない一枚の絵。目の前の鏡にも背中しか映っていない。
顔のない男。原作を読んでいたので、この絵が、ルネ・マグリットの『複製禁止』であることを知る。
複製禁止のはずの人生を歩まざるをえなかった「ある男」。その男の背中を追いかけることで、自分をそこになぞらえる弁護士。過去に見切りをつけたい男たちが、どこかで重なり合っていく様。
『複製禁止』の絵が、ずっと脳裏から離れなくなる。
戸籍の交換の詐欺罪で服役している男は弁護士に、交換じゃなくて、身元のロンダリングだ、と言う。過去を洗浄したい人はいっぱいいる、と言う。
多かれ少なかれ誰しも思っている。なりすましへの憧れ。あるべき自分に近づきたいという願望。それには過去を洗浄しなければという焦燥感。
人として生きることの危うさ。忘れたころに、再び『複製禁止』の絵が映し出される。
「ある男」の妻は、一緒に暮らした日々は幸せだった、とほのめかす。
救いの言葉だ。一瞬でも、あの絵の呪縛から解き放たれるような気がした。
謎はすべて明かされるが爽快感はない
ある男が誰か、なぜそうなったのか。その謎はすべて解明してくれます。だが見終わった後、私は爽快感をあまり感じられませんでした。
この映画の根底にある問題意識は「本人に責のない差別」。それは解決できるようなものではなく、そこがズーンと重い感じで残ります。苦しむ窪田君の演技は良いです。こういう役に彼はとてもよく似合います。
平野啓一郎の社会性が出た作品
原作者の根本思想として、自分の実態を消去したいほどに差別的で抑圧的な社会を告発したいということがある。そこをベースに考えれば仕掛けの意図がよく分かりる。
妻夫木聡、窪田正孝の演技はなかなかのものであった。妻夫木の被抑圧的な気分の表現は素晴らしいし、窪田のボクシングシーンは違和感を抱かせない動きでセンスを感じた。
しかし、それ以上に感嘆したのは柄本明の演技だ。歳を重ねるごとにすごみを増している。ベテランの男優では、石橋蓮司と双璧ではなかろうか。一方で主役級では目立った俳優がいなくなった気がする。例えば緒形拳は善人と悪人を対照的に演じ分けることができたが、そういう俳優は今は思い浮かばない。これは映画産業の衰退と軌を一にしているのだろうか。監督に巨匠と呼ばれる人がいなくなったのも同じようなことだろう。
これはミステリー?
物語自体が静かに流れていくが、扱っているテーマは重い。愛した人が亡くなって、その兄に弟でないと言われたらどんな感情になるのか?
そうしたら過去は知りたくなるし、兄からしたら、、。
本当によく練られた作品で、次から次へと伏線が張られていく。
ネタバレになるのでこれ以上は無理だが、ラストシーンは衝撃。画面やセリフは穏やかなのにこの怖さ。
CMの作りも観に行きたくなるいい出来だったが、作品は大きく越える結果だった。
ラスト暗いなぁ...
窪田さんの谷口の判りやすい闇ではなくって、
妻夫木さんの城戸の笑顔の嘘っぽさというか、
どこか影のある感じが上手かったなー。
ラストのバーのシーンも感情のなく、ただただ語ってるだけみたいな、
だから、こっち側で判断を任せられたような、にしても、まったく前向きさを感じなかったな。
安藤サクラ親子のシーンと真逆だよね、正直。
城戸だけが、完結していない感じで、これから、この男がどうなっていくのかが、めっちゃ気になってしまった。
といっても、何にせよ、柄本明さんの小見浦憲男が、
いちばん心に残って怖くて痛かったなー。
帰化した在日3世の城戸に対する
他人の痛いところをえぐるような煽るような言葉と演技が...。
他のみなさんの演技もスゴイし、ストーリーも面白かったんですが、
ただ、残ったのがそのシーンで、この作品のメッセージが、
柄本明さんの言ってること全てに思えてしまいました...。
だから、わたしの中では他がボヤけてしまって、薄まってしまった。
あとは、
違う自分になってでも自死することなく生きるなら、
戸籍売買が犯罪だとしても.、それはそれで良いと思ってしまいました。
うん、原作を読んでみよう。
与えられた背景と自身が生んだ経歴と
宮崎で林業に従事する谷口大祐が亡くなって1年後、法事にやって来た大祐の兄から弟ではない別人と告げられたことで、弁護士が身元を調査する話。
谷口大祐は誰なんだ?過去に何が?が主な話しかと思ったら、確かにその部分もあるけれど嫁に呼ばれてやって来た横浜の弁護士がメイン!?
結構なご都合主義でXの父親の素性と遭遇、判明しちゃったのは頂けなかったけれど、そこからみえてくるXの過去はなかなかキツい。
ただ、リアルな話しだと正式な手続きでも氏名は変えられるはずだけど。
そして小見浦に見透かされた弁護士は、ここで知り得たそんな世界に憧れて、初めての店での息抜きですか…これは憐れで哀しさを感じた。
そして、プライベートでは仕事を活かしたのか泣き寝入りなのか、その先が気になった。
ラストシーンまで引き込まれます
血と戸籍の話です。
3人の演技はさすがというか、かなり良い。
窪田正孝は、優しい表情と狂気。
安藤サクラは、優しいお母さんと涙ですね。
妻夫木聡は、冷静なエリートとコンプレックス。
他にも子役とかそれぞれ素晴らしいですね。
河合優実がまた出てたね。
ド派手なアクションシーンとかはありませんが、とてもよいストーリーで、何より映像とか間とか演出がとても好き。お気に入りの監督がまた増えてしまった、、、
オープニングの「絵」から「最後」まで、いい映画だなと思いました。
ある人生
平野啓一郎原作×石川慶監督「ある男」を観る。「愛したはずの夫は全くの別人でした」というコピーに「よくあるストーリーだよな、でも平野啓一郎さん原作だし」とあまり予備知識無しで観たら、予想を覆えす作品で、妻夫木聡が在日3世の人権派弁護士役でその妻を真木よう子が演じ、王道ミステリーの形式を取りながら、人を出自で判断する行為がいかに当事者の人生を狂わせるかを描き、その愚行を糾弾する傑作。妻夫木と窪田の演技と2人の人生がシンクロしていく構成は圧巻だった。
劇中のニュースでリアルなヘイトデモとカウンターのシットインが登場し、露骨なヘイトスピーチもあります、今もあるヘイトを描くために必要なシーンなんだけど、結構しんどいのでそこは気をつけてください。
#ある男 #妻夫木聡 #窪田正孝 #安藤サクラ #石川慶
自分の中の偏見に気付かせてくれる作品
差別はしていないと言いながらも「◯◯の子どもだからアレなんだよね」と言ったりする。
あるいは「××で生まれた人だから」とレッテルを貼っていたりする。
それらは全部自分達が気付かないうちに、周りから、あるいは自分達の親から聞かされていたりする。そしてそれを、当たり前のように継承していく。
相手の中身も見ないまま、場合によっては相手と直接会話することもなく、知ったかの顔して判断していく。
これって、おかしいことだよね。
そう言うことができなければ、いつまで経っても《ある男》は生産され続ける。
良い作品でした。原作の小説、買いました。
立ち止まって自分自身を振り返るために必要だと思ったので。
ラストで「そっちだったんかぁ~い」って叫びたくなる邦画! 本年度ベスト!!
私はどうやら本作の主人公を終始勘違いして観ていた様です(笑)
でもこれが本作の満足度が上がった感じ。
巧妙に作られた脚本が良かった!
個人的に脚本賞を差し上げたい!
ラストの騙された感からのエンドロール。
最初に出てくるキャストの方の名前。作者の、してやった感が伝わって来る。
安藤サクラさん演じるバツイチの谷口里枝。
里枝の住む街にやって来た窪田正孝さん演じる谷口大祐。
二人が急接近して結婚するものの、大祐が仕事中の事故で他界。
疎遠だった大祐の兄が遺影を見て大祐では無い事が発覚。
妻夫木聡さん演じる弁護士の城戸が大祐が何者なのかを究明して行くストーリー。
大祐と呼ばれる男の過去が少しずつ解き明かされるストーリーに引き込まれる。
窪田正孝さん演じる男の過去が重い。
でもお目当てだった河合優実さんとのシーンは羨まし過ぎた(笑)
彼女はトータル2分位しか登場しないと言う贅沢な使い方だけど河合優実さんファンなら必見の作品かも(笑)
窪田正孝さんをはじめ、安藤サクラさん等、ベテラン俳優さんの安定した演技が良かった。
真木よう子さんや清野菜名さんは美しかった。
河合優実さんは別格(笑)
終始シリアスな展開に加え、笑わせてくれるシーンもあり大満足の作品でした( ´∀`)
邦画ミステリーで1番でした。 「違う人生を生きたい。」 自分の中に...
邦画ミステリーで1番でした。
「違う人生を生きたい。」
自分の中にある消したい過去を、他人の人生で上塗りしていく男達。
ゆっくりなのに、無駄はなく、最後の最後までおもしろかった。
最初の絵に戻ったのが‥
誰しも
誰しも有るのかも知れない。
人に知られたく無い、いや自分の経歴自分の記憶からすら無かった事にしてしまいたい過去や事実。
そんな個人の「秘め事」をミステリとして解釈し暴いてしまう映画です。
知りたいと思う、知る権利が有る。
まあそりゃ解る、俺も映画館に足を運んでしまったのだ、人の秘密となれば暴いてみたい知りたいのです。
本作では主演、妻夫木聡や安藤サクラが「知りたい者」として描かれ、最終的にその秘密を知る事とゴールを迎えます。
まあそれなりのハッピーエンドだ、目的は達成されエンドロールですよ。
が、この映画の面白くも怖いところは
じゃあ、あなたが秘密を暴かれる側になったらどうなの?
じゃあ、求めてもいない秘密を知らされても受け止められるの?
って、意地悪に提示してくるんすよ。
人の秘め事を探し暴くのも大変だけど、それを知り受け止めるのにも命張って下さい。
たぶんそうしないと釣り合わないんですよ、知るって行為は。
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