劇場公開日 2022年11月18日

  • 予告編を見る

「意味深な終わり方に絶句した」ある男 R41さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0意味深な終わり方に絶句した

2024年3月9日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

興奮

知的

この物語の主人公は、作品の途中から登場する妻夫木くん演じる弁護士だ。
彼が登場したとき、彼の役を妻夫木くんがしていたことで違和感が走った。
在日3世という逃げようない血筋と、そのことを妻の父にまで軽く言葉にされてしまうのは、彼にとってはどこまでも付いてくるレッテルだ。
彼は安藤サクラ演じる理恵の夫が何者なのかを調査することになる。
彼が妻に話したように、彼自信この事件にのめり込んでいくのは、「X」という人物がなぜ身分詐称をしたのかということと、彼に罪はないものの、そのどうにも逃れられない事情を知りたいと強く思ったからだ。
やがて、理恵の夫は谷口大祐ではなく原誠だということが判明するが、その逃げようのなかった人生に深く共感する。
同時に本物の谷口大祐を見つけ出すが、彼もまた老舗温泉旅館の次男坊という肩書を変えたいと思っていたのだ。
作品の面白さの一部は、誰が主役なのかわからないというのか、主役が交代していくように描かれているところだろう。
これはヘイトスピーチ、つまりレッテルや差別と同様だ。
他人からの決めつけとレッテルこそ、この作品のテーマだろう。
身分を変える 他人と交換する 身元ロンダリング
「そうしなければならない人がいる」
この作品の一番強いメッセージだ。
理恵は弁護士に「知ってしまってからなんですが、本当のことなんか知る必要などなかったのかもしれません」
つまり、夫は彼ら家族が見たそのままの人で、見た通りの人だった。それ以上でも以下でもない。名前さえ、どうでもいいのだろう。彼と過ごした3年9ヶ月こそたった一つの真実なのだ。
さて、事件が解決してまた幸せを噛みしめるような日常を取り戻した弁護士だったが、妻の携帯の着信を見てしまう。
そして映画の冒頭のとあるお店に誰かが現れ、あの変な絵画へと戻って来るシーンがエピローグとなる。
そのとき妻夫木が何者なのかはわからないが、そこはバーで、彼は初めて会う客と雑談する。
彼は「私は伊香保にある老舗温泉宿の次男です」という。「名刺を切らせて、あいにく…」
在日3世… 妻の浮気… 彼は仕事で得た知識を使い、谷口大祐になったのだ。
その過程は描かれてないが、彼の顔には「その二番目の人生を楽しみたい」と書いてあるようにしか見えなかった。
若干オソロシイ…

R41
コバヤシマルさんのコメント
2024年4月7日

共感&フォロー有難う御座います。
ある男の終始仄暗さはホラー感満載でしたね。和製サスペンス楽しめました。
誰もが何者かになりたいと言う変身願望的な仮面🎭ペルソナ論にはいつの時代も魅力的に映る題材ですね。
この映画は🎞️役者自体が、台本のある役になりきり誰かを演じると言う嘘の上塗りが面白く映像化と相性が良かったと感じます。
魂まで誰かの役になりきるので、自分自身を無くし一体自分が誰なのか分からなくなる。だからこそ観客は見ていて面白いと同時に、本人たちも普通の人間なので、残酷な世界だなと感じます。
なので映画やドラマは面白いですね。

コバヤシマル
琥珀糖さんのコメント
2024年3月17日

共感ありがとうございます。

ラストが面白いですね。
原作には妻夫木君のが谷口になりすますようなシーンは
なかったんですよ。
石川慶監督のアイデアだそうです。
なんか奥行きが増して良かったですね。

琥珀糖