劇場公開日 2022年11月18日

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「ミステリーとしても、人間ドラマとしても、描き込みが足りず、物足りない」ある男 tomatoさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0ミステリーとしても、人間ドラマとしても、描き込みが足りず、物足りない

2022年11月18日
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「嘘を愛する女」のように、「自分が愛した男性はいったい誰だったのか?」と悩む女性の話なのかと思っていると、男性の正体を調査する弁護士の話がメインになっていく。
ただ、その割に、謎を解く手掛かりが偶然によってもたらされるなど、ミステリーとしては、緻密さに欠けていると言わざるを得ない。
物語の核心部分となる、男性が他人に成りすました理由にしても、同情はできるものの、「やむにやまれず」といった切羽詰まった必然性は感じられない。
作品を通して度々提起される「差別」に対する問題意識も、ストーリーにうまくマッチしているとは思えないし、心にもあまり刺さらない。
何よりも残念なのは、柄本明演じる戸籍交換ブローカーの扱いで、せっかくインパクトのあるキャラクターだったのに、もっと物語の展開に活かすことはできなかったのかと、もったいなく思ってしまった。
「自分とは違う人間になって、別の人生を送ってみたい」という思いは、今の人生に対する不満の裏返しなのだろうが、誰もがそうした願望を持っているということを描いたラストシーンには、少なからず共感することができた。

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