「病は感染して流行するまで時間がかかる」死刑にいたる病 @花/王様のねこさんの映画レビュー(感想・評価)
病は感染して流行するまで時間がかかる
甘言で懐柔してから相手の絶望する顔で興奮する異常者の話を聞かされる大学生の話。
殺人と言う一線を超えてしまった人間へのリスペクトが少なからずある。
それは戦争で多くを殺した兵士に勲章が授与されるのと同じだ。
一線を超えた先にいる、自分が未知の領域に達している存在に憧れてしまうのは仕方のないことかも知れない。
サイコパスは大きく分けて秩序型と無秩序型に分類される。
今作の榛村は秩序型に分類されるだろう。
この手のシリアルキラーに関わるとロクなことにならないのは、火を見るよりも明らかなのだが、主人公だもの関わっていくのですよ。
ストーリーは次々に展開して面白いけど、主人公のウジウジ拗らせ具合が映画の速度を落としている。
自分の出自を疑ってしまうくらい機能不全な親子関係の中、一つ屋根の下で生活しているかと思えば一人暮らししている。
家とアパートの間取りが似ているせいか、主人公はどこで寝起きしているんだ?この部屋はどっちだ?と分からなくなる。
感情移入して楽しみたいのに、主人公が優柔不断でやっていることも探偵の真似事、つまらない日常で異常を見つけて興奮する10代のフラストレーションの吐口のようで痛々しい。
あれかな?友達いないのを拗らせて、いつか誰か自分の思考を100%理解してくれる他人が現れるはずとか思っているのかな。
そんなもんはいない。
登場人物がみんな不健康すぎて、心が不健康な自分に酔い過ぎて、サイコパスよりも怖い。
自分が生きていくために、習慣化するほど殺人を繰り返していた榛村の方がよっぽど自分の体調管理ができているように感じてしまう。
作中には拷問シーンも描写される。
ちと悲鳴が苦手な人の鑑賞はオススメしない。
ホラーを観慣れている人は物足りないかも知れない。
ツッコミどころが多い。
特にキーアイテムになる爪は、剥がして空気に触れるとあんなに綺麗なピンク色を保つのは無理だろうとツッコミたくなる。
私自身、怪我で生爪再生中の身なので剥がれた爪はそれはもうゴミ以外の何者でもない色をしている。
偽物だから、あんまり本物に近い描写をするとコンプラ的に難しくなるんだろうな。
話の展開も早くて、最後まで飽きずに鑑賞できるが、この胸のモヤモヤ感はなんなんだろう。
そもそも、タイトルが「病」を謳っているのに、殺人の衝動が感染していく過程があまり描かれていない。
ラストシーンでチョコっと芽が出たなくらいである。
それとも、関わりをずっと覚えてトラウマになることが「病」だったんだろうか?その辺がいまいちピンとこない。
感染力が低下したウイルスは新しい細菌の糧となって生き続けるってオチだったのか?
どちらにせよ、おかしいと思った時に即座に逃げられる瞬発力を身につけることが変質者と関わらない幸福な人生の送り方だと思う。
私が生活しているすぐ隣でも、誰かが人を殺してるかも知れない。
何かのきっかけがあれば、簡単に一線を超えて自分も人殺しができてしまうかも知れない。
それは自分が獣のような衝動を肯定し、理性をぶん投げた時に顔を出すのかも知れない。
と、自分のかも知れない恐怖に向き合う作品ではあった。
ただ、私は健康第一主義なので。
健全な精神に健康な肉体でもって普通の生活がしたいなぁと思いました。
デート向きではありません。
ホラーやグロ描写が大丈夫で、現実とフィクションを楽しめる友人との鑑賞をおすすめします。
観なくても、健康に生きていけるので、大丈夫です。