「ヤバいの観た!」死刑にいたる病 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
ヤバいの観た!
原作未読ですが、重そうなタイトルと阿部サダヲさん主演ということで、期待して鑑賞してきました。その期待を裏切らない、怪演が光る仕上がりでした。
ストーリーは、鬱屈とした大学生活を送る青年・筧井雅也が、24件の連続殺人を犯して拘置所にいる榛村大和から届いた手紙に誘われ面会に行くと、榛村から「最後の事件だけは自分の犯行ではないことを証明してほしい」と頼まれ、昔の榛村の優しい一面を知っていたこともあって、独自に事件を調べ始め、じわじわと真相に迫っていくというもの。
冒頭は、花びらのようなものを用水路に撒き散らす意味深なシーンから、あれよあれよという間に残虐な拷問シーンが描かれ、ここでやっとタイトル。グロ耐性のない自分は、ここですでに軽く疲れてしまいましたが、物語はもちろんここからが本番です。絵的には、手がかりを手繰る雅也の地道な聞き取りと現場調査、その後の面会室での榛村とのやり取りの繰り返しで、総じて地味でゆったりした雰囲気なのですが、淀みなく滑らかに展開するため、実にテンポよく感じ、ぐいぐい引き込まれていきます。今思えば、観客も早々に榛村に取り込まれていたような感じがします。
その後、次々と判明していく事実からしだいに真相に迫り、中盤あたりで観客は結末を予想するのですが、それは見事に裏切られます。そして、最後にもうひと押しのオチがつき、さらに裏切られる展開はなかなかおもしろかったです。巧みなミスリードにまんまと嵌められた感じです。ストーリー展開もさることながら、面会室で向き合う雅也と榛村の顔の重ね方、アクリル板を越えてくる榛村、同席する刑務官の態度の変化等、面会室での描写も見応えがありました。
ただ、真相に至る終盤が、面会室での二人の問答のみだったのはちょっと残念でした。しょせんはサイコパスのシリアルキラーの犯罪なので、常人には理解できない心理かもしれませんが、もう少し榛村なりの理屈や彼の生い立ちから、観客を納得させる動機や心境が見えるような描写があるとよかったです。これは、ラストのオチについても言えます。そのため、「そうきたか、やられた!」と思っても、直後に「でも、なんで?」となってしまいました。同様の観客が多かったらしく、終幕後にあちこちの客席から互いの疑問を確認し合うような声が聞こえてきました。
主演は阿部サダヲさんで、冒頭でも述べましたが、殺人鬼・榛村を見事に演じています。深淵の闇のような彼の瞳がとても印象的でした。対する、岡田健史くんも、闇に取り込まれそうになる雅也を好演しています。この二人に負けず劣らず存在感を発揮していたのが、宮﨑優さんです。知らない女優さんでしたが、今後注目したいと思います。
終盤への不満は多少ありますが、ストーリー、テンポ、役者、そこに残酷シーンを加えて、なかなか胸くそ悪いサイコサスペンスに仕上がっており、久しぶりにヤバいのを観たなという感じです。
イイねありがとうございます。手が込んだ良作なのですが「なんで?」の不思議顛末、動機映画でした。現実にはこんな犯罪者以前も1人もいないし、今後も永久にいないと思いました。動機が「何かの欲望に基づく感じ」が全くしない。「育てて・ヤル」のはなんらかの性的高揚や怨恨がなければ、連続殺人まではいかないと思いました。人間の「もっとも根本的な自然な本能」に合致していない「作家の妄想、力技 机上のもの」に思えてなりません。
長文すみません。どうもありがとうございました😊😊😊