死刑にいたる病のレビュー・感想・評価
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分からない、を分からなければ
爽やかな上天気の日に、あえてこんな暗い映画なんて…と思っていたら、意外にも大入り。8、9割の席が埋まっていた。周りに気兼ねするかも…と気後れしたのは最初だけ。あっという間に深い沼に沈められ、他の人の気配どころか、底なしの孤独感。ぽつんと一人でスクリーンに対峙しているような錯覚に陥った。
うさん臭いと思いながらも、ずるずると連続殺人の謎に引き込まれていく大学生•雅也。鬱々とした日常から逃れる憂さ晴らしのはずが、「自分だけが知っている」かもしれない真実のかけら集めに、自らのめり込んでいく。
そんな彼と対照的なのが、白石組の常連•音尾琢真が演じる、かつてのボランティア仲間だ。中盤のワンシーンのみながら、強い印象を残す。本作では唯一、カラッとした明るさ(軽薄ともいう)の持ち主だが、榛村の本質をいち早く見抜いた人物でもある。彼と雅也との決定的な違いは、榛村の不可解さとの付き合い方ではないか。雅也は、不可解さを抱えきれず、「分かる」ことを急ぎすぎたのかもしれない。
とにかく、阿部サダヲ演じるパン屋•榛村は怖い。事前の予想(覚悟)を、軽々と飛び越える狂気に満ちている。黒みの多い目は、何を考えているのか分からない。黙ってそこにいるだけで、得体の知れないオーラが漂っている。けれども、皆なぜか彼をやり過ごせない。彼の所業を知れば知るほど、初めは小洒落ていると思えた服装や店の作り、柔らかな物腰が、ぞっとするものに反転する。一体何を見聞きしていたのかと、自分の感覚に自信が持てなくなるほどに。
彼を取り巻くキャスティングの意外性に加え、拘置所の面会室でのやり取りに、毎回息を呑んだ。アクリル板に反射する互いの顔が、初めは向き合い、次第に重なり合っていったかと思いきや、すっと指先が触れ合う。気付くと、そっと肩を抱かれている。透明な板に仕切られ、安全な遠い対岸にいたはずが、いともたやすく繋がってしまう。そんな危うさが、視覚的に描かれ秀逸だった。
「あなたが決めて」、「君はすごい」、「あなただけ」、「私にはわかる」、桜の花びら、きれいな手指…。冒頭から折り込まれていた恐るべき伏線に、最後は息を呑む。観終えてからも、日常の中で映画の言葉や物事に再度触れたとき、あの世界が、自分の住む世界と地続きなのだと、思い知らされる。こうやって本作について幾たびも思い返していること自体、すでに榛原に支配されつつある証なのかもしれない。
サイコな怖さよりゴア描写の痛々しさが悪目立ち
ゴア表現がきつめなので、サイコサスペンスというよりホラー寄りの印象だった。PG12作品だが、加害方法がいかにも痛そうなせいか、R15+と言われても驚かない。
阿部サダヲの目から光の消えた表情はよかったが、何か怖さが物足りなかった。漠然とした恐怖感は残ったが、よく考えるとほぼゴアシーンの怖さだった。
いわゆるサイコパスの犯人が、自分は手を下さず周囲を操って殺人をさせる犯罪ノンフィクションの本を何冊か読んだことがある(尼崎連続変死事件や北九州連続監禁殺人事件など)。読後の個人的な感想としては、他人を洗脳して行動までもコントロールするには、優しさだけでなく恐怖も植え付け、その匙加減を絶妙に調整する必要があるように思えた。
榛村はもともと、最終的に相手を力で拘束し、肉体を損壊して残虐な苦痛を与えることを目的とする殺人者で、だからこそ恐ろしい。そのために必要な人心操作の技術は、上記の事件の主犯とは違い、ターゲットに優しさや理解を見せてある程度近づけるレベルであれば事足りる。近づけたらその後は力ずくで目的を完遂するからだ。
だが本作では、彼が既に収監されているところから話が始まるので、榛村は雅也始め主要な登場人物に実力行使をすることは不可能だ。そうすると、面会室での挙動とと手紙と会話だけで今の榛村の恐ろしさを見せていかないとならないのだが、彼は人間を遠隔操作することは本来専門外で、トークスキルはほぼ相手を褒めるだけなので、警戒してもつい取り込まれてしまいそうになる魔性の話術のようなものが全く見えなかった。
そもそも、雅也に嘘をついてあれこれ調べてもらうことの目的がよく分からなかった。真面目な中高生の肉体損壊行為がなければ生きていけないとまで言い切る彼が、その目的達成に全く繋がらないあのやり取りをする意義は何だったのだろう。
榛村の普段の振る舞いは(言っている内容を除けば)終始あまりに普通の善人で、きつめのゴア表現との対比で異常さを表現したかったのだろうが、それ自体創作サイコパスにお決まりのキャラ設定だし、あそこまで狂気の気配がないとかえってリアリティに欠ける。阿部サダヲが特異な人間を演じることにも意外性がない。
もし、虐待を受けた人間の心の傷の深さを描こうとしていたのなら、直接的な残虐描写はせず、榛村と雅也や子供たちとのやり取り描写に重点を置いた方が伝わりやすかったかも知れない。
そんな感じで作品世界に上手く入り込めなかったので、後は細かいことばかり気になってしまった。
犯罪歴のある人間が、自分のパン屋に来る高校生を中心に地元ばかりで、冒頭で語られるような規則性を持って犯行を繰り返していたら、さすがに被害者が24人に至る前に捕まるのではないだろうか。几帳面そうな榛村が、遠景に人通りがあるようなその辺の道で、声を上げる女性を真っ昼間に車に引き摺り込んで殴りつけるのも性格に不似合いな脇の甘さで、唐突な感じがした。
雅也があんな怪しい手紙に始まった榛村の依頼をすんなり受けたのも違和感を覚えた。雅也の描写の流れからして、家庭が機能不全で大学でも馴染めてない人間は、あのレベルの話にも釣られてしまうということなのか。そういう動機付けだとしたら、偏見のようであまり好きではない。
その後、榛村に指示されて担当弁護士に会いに行き、そこでいきなりアルバイト採用される。裁判資料の管理があまりに甘いので、担当弁護士も榛村に洗脳されているのかと思ったが、弁護士は物語後半で殺人鬼榛村への偏見をあらわにするので、そういうことでもないようだ。何だか都合がよすぎて、雅也が裁判資料を見られる状況に持っていきたいという作り手の意図が悪目立ちしたように見えた。それに弁護士事務所の名刺が万能過ぎないか。
拘置所から出す手紙に差出人名を書いてなくても問題ないのか。傍聴席に阿曽山大噴火氏がいるなあ(これは結構気が散った)。ロッチ中岡に見えてしまう岩田剛典(頑張っていたと思います)。
岡田健史は、鬱屈した大学生の危うさが出ていてよかった。彼の存在感で見応えが補われた。
白石和彌は止まらない。
「つながれた犬」というタイトルだった櫛木理宇の原作を見つけたこと。白石和彌監督にサスペンスを撮ってもらいたいと考えたこと、阿部サダヲの映画における新生面を拓いたことに加え、未ださほど顔の知られていない若き俳優、岡田健治を起用したこと。俗に云う“新しさ”を求めたこと。大ヒットの要因はいくつも思い当たる。
葬式で帰省した大学生、筧井に獄中の猟奇殺人犯、榛村から手紙が届く。犯した罪は認める。でも最後の犯行は自分ではない。冤罪を晴らすために真犯人を見つけてくれないか。突然の申し出を受けた流すこともできた。だが、煮え切らない学生生活を持て余していた筧井は面会室へと向かう。弁護士事務所を訪れた筧井は24件もの榛村の犯罪履歴を辿り始める。
犯罪履歴を追い始めた筧井は、若さと情熱、探究心に目覚める。弁護士見習いの名刺を偽造してまで能動的に動き始める。監督は、グロテスクな被害写真を並べた部屋でカップ焼きそばを喰らわせる。青年の変化を瞬時に見せるこの描写は効いている。また、取材の過程における人との新たな関係性が築かれていくことも秀逸だ。
『凶悪』にあった面会室の描写は、より密室度が増した部屋で、より濃密なふたつの人格を重ねる。
その様は、高村薫の問答小説「太陽を曳く馬」のように互いの胸の内を探り、雌雄を競う駆け引きとなる。褒め称えるかと思えばいなし、突き放すかと思えば慈しみを示す。そっぽを向いたかと思えば瞳に涙を浮かべる。これは究極の心理戦だ。どちらが勝つかではなく、どちらが優位に立ち、会話というゲームの主導権を握るのか。しかも、ガラスで隔たれたはずの手が伸びて互いに触れ合うことすらある。鏡に写る相手の影が重なり、ふたりは同一の業を宿した化け物のように見えてくる。化け物、その様はコッポラの『地獄の黙示録』で、密命を帯びてカーツに対峙したウィラードの覚醒を思い出させる。
真実は藪の中。几帳面な字で書かれた獄中からの手紙が依頼する、意表を突いた真犯人探しの依頼。長髪で猫背、常に俯き加減な岩田剛典が演じた青年によるミスリードの妙。自分では決められない母の秘められてきた過去、キャンパスで青年を注視する幼馴染、観客の眼前で凶暴化していく大学生、その先にある獄中からの手紙が支配する世界。
意識のレベルがこの映画の評価を変える。阿部サダヲのチカラを監督は見極めている。画面に出し続けることではない、既に支配下に置いた彼は画面から姿を消すべきなのだ。勇気ある演出、白石和彌は止まらない。
灯里役・宮崎優を世に出す衝撃作
全体的に好キャスティングが光る。シリアルキラー・榛村を演じる阿部サダヲは、大人計画入団時に提出した履歴書の写真で顔色が悪かったことから芸名が「死体写真」になりかけたという逸話がよく知られるが、常に死んだような目をしていることもそんな印象に影響しただろう。穏やかな物腰と細やかな気配りで狙った相手の心を支配するという人物設定に、あの眼差しが説得力を与えている。
榛村に取り込まれそうになりながらも抗おうとする大学生・雅也を演じた岡田健史も、阿部とのコントラストが絶妙だ。長髪の謎の男は誰が演じているのかわからないまま、エンドロールで岩田剛典の名を見て「ああ、あの男か」とようやく気づいた。それほど見事にスターオーラを消している。
そして、雅也と同じ大学に通う灯里を演じた宮崎優。初めのうちこそ彼女の目立たず内にこもった感じが、映画の中で“映えていない”ように感じたが、次第に秘めていたものが表に出てきて、あの地味目な見かけも実は伏線だったかと驚愕させられた。過去の出演作「任侠学園」「うみべの女の子」を観たのに印象に残っていないが、本作での演技は映画関係者と観客の心にしっかりと刻まれるだろう。宮崎優を世に出す一本でもある。
阿部サダヲの“遊び”を心まで堪能する作品
見応えのある作品だけど、胸糞悪い話だ
マインドコントロールに長けたシリアルキラー
といってしまえば、カッコいいけど
精神はただの弱いものいじめと、命の尊さをわからない人にあらざる物です
能力があっても、獣なんですよ
社会に害する物は排除対象
賞賛すべきでは無い
そこはしっかりと心に留めておかないといけない
マインドコントロール時の光の無い眼はさすが阿部サダヲだ
恐ろしい
ただ、拷問のシーンでは狂気のオーラが無い
この男は不能なのかな?
性的欲求より、拷問の方が快感に感じる人間はいるだろう
たが、残虐な行為には、性的欲求が付随する
場合によっては、残虐行為が性的興奮を増長させる
しかし
彼にはそれがない
この事が犯罪者をヒーロー扱いさせてしまうことになる
実際、彼のことを悪い人と思わないと言わせていましたね
あれを言わせた以上、作品の中で彼を人非人であることを証明しないといけない
この作品において、彼をヒーローたらしめないためにも、性的暴行を描くべきだったと思う
いかに、醜悪であるかをみせて、彼をおとしめてこそ社会的意義があると思う
マインドコントロールの能力や頭脳ゲームに終始する限り、悪もまたヒーローに祭り上げられる
”羊たちの沈黙”シリーズもそうですよね
映画は原作以上に、犯人のの心理を補足して分かりやすくしているようです
それは評価できる
ただ、結末にオリジナルの追加シーンを入れたのは賛否両論あるかな
まあ、ホラー映画の最後のどんでん返しのような軽い気持ちでやったんなら、監督権限でいいでしょう
そうでなければ、原作とは変わってしまう
気になったのは、最後の面会で、今日は時間をいくら使ってもいいと言われた事
もしかして、翌日に死刑がおこなわれるのかな?って思いました
たしか、本人には当日までわからないはずだけど
職員にもマインドコントロールをしているようなので、教えてもらったのかな
宮﨑優という女優は初めて見ました
古い言い方ですが、エッチな感じがとてもいい
それでも僕はやってない(23人殺ってる)
僕はこだわりの殺人鬼!
被害者と信頼関係を築いてから、
懇切丁寧に殺すのだ!
「なぜ?どうして!?」と、困惑する姿がたまらんのじゃー!
調子乗ってたら警察に捕まったわ
やっちまったわー
警察に罪を立件されたけれども待ってれ!
違うって!他の殺人は確かに僕だけど、
その殺人は僕じゃないってば!!
その1件だけは違うんだってば!!!
そんな雑な殺人を僕がするわけないじゃないですかー!ヤダー!!
近所の顔見知りの大学生君に頼んで真犯人を探してもらおう!!
頼むぞ学生君!
僕の無実(別に無実ではない)を証明してくれーー!!
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あらすじからして面白い
内容も面白かった
バイオレンス映画好きな人に勧められたから、
おそらくバイオレンスなだけのクソ映画なんだろうなぁと、思ってたけど内容面白かった。
冤罪を扱った作品は数あれど殺人鬼が
「その殺人は俺じゃないよっ」てのは、なかなか見ないシチュエーションかも。
前半数分のエグい表現を我慢すれば、普通のミステリーだったわ。
単純に真犯人気になるものね。
阿部サダヲってやっぱ演技上手いな、狂人が普通の人として暮らしてる演技上手いな。
深い闇を感じる目の演技マジよかった!
演者の演技みんな良かった
日本映画のわりにテンポいい作品なので非常に見やすくて好感が持てました。
何かが足りない印象です
阿部サダヲの演技はとても素晴らしかったですが、キャラクターがとても映画的というか・・・個人的にはリアルな怖さを感じませんでした。
最後のオチに関しても犯人の闇は犯人が死刑になっても終わらず、主人公の光の部分を担っていたキャラクターがああいう事になるのは予想できたというかサスペンス系にありがちだなという印象です。
10話くらいのドラマとして作ってじっくり内容を練り上げたほうが良かったような気がします。
暗闇を彷徨うような想像できない展開
連続殺人犯のサイコパスを阿部サダヲに抜擢した人は誰?素晴らしい仕事ぶりと拍手をしたい。とにかくこの男に主人公を含め多くの登場人物、ならびに観客までも振り回されることになる。
序盤からエグい拷問シーンから始まり、なぜ主人公が殺人犯の頼みを聞いてるのか?という疑問だらけから話はスタート。物語が進んだと思いきや、今度は家族を巻き込んだ展開に…
何が正しくて間違っているのか、謎が謎を呼び、とにかく物語がどのように着陸するのか全くわからなくなる。
まるで暗闇を彷徨うかの如く、主人公の鬱屈した感情を晴らすシーンも重なり、気持ちが重くなりながらも目が離せなくなる。
阿部サダヲの面会シーンなんかは、相手の心に入り込む様をとてもうまく表現していた。加えてラストでは頭を抱えてしまった…
とんでもない邦画サスペンスだなと感じました。高評価。
怪演
君みたいに普通の人間達は、どこかで特別な人間になりたいと思ってる
・阿部サダヲさんの怪演が光ってるなあという第一印象。でも謎に迫る雅也役の水上さんも、一定のトーンで役を演じている印象があり凄い
・原作を読んでないけど、タイトルの通り病が伝染していく表現が全体を通して感じられ、オチもしっくりきた。ただ、他の批評にもある通りこの先(映画終了後)、どうなっちゃうんだろうと鑑賞者側に考えさせる余地も与えている気がして、そこんところ考えて作られてるなあと思った。
・猟奇的な場面が最初から映されてちょっとウッとなったけど、だんだん慣れた。リアルでこういう人が世の中にいると思うとうかつに人を見た目で判断したらいけないよなあと思えてしまった。
怖かった、鳥肌が
想像を超えて容赦なく残忍で、しかし人当たりがよく一切反省しない犯罪者。
ぞっとした、一旦手なづけてからいたぶるとは本当に酷すぎた。明らかになる真実、でも面会の最後が唐突だった。まさかの彼女まで??
後味が悪すぎた、しかしラストまで見入ってしまったが終わり方がよくわからない。あの後が気になって仕方ない。
久々に面白いと思えた邦画〜こっち側に来たらもう戻れないよ…
2022年公開、配給はKlock Worx(クロックワークス)。櫛木理宇による同名の長編サスペンス小説を原作としている。
監督:白石和彌
脚本:高田亮
監督の白石和彌は『日本で一番悪い奴ら』、『孤狼の血』などハードタッチなクライムサスペンスを得意としている。
【榛村大和】:阿部サダヲ
【筧井雅也】:岡田健史
【金山一輝】:岩田剛典
【加納灯里】:宮﨑優
【筧井衿子】:中山美穂
1.犯行シーンの残虐さ
R12となっていたので油断した。
R18で良いと思う。
2.岡田健史がイケメンすぎる件
原作によると筧井雅也は、陰キャである。
イケメンすぎると陰キャが負けてしまう。
3.面白い展開&緊迫感のある映像と音
4.その他
書こうかどうか迷いましたが、
雅也の母親の衿子役は、別の女優さんが良かったかも。
久々に面白いと思えた邦画でした。
ゆえに、☆4.0
久々エグい
殺害方法が残忍過ぎて
他の内容があまり入ってこなかった。兄弟の歴史や養子の歴史や、みんな繋がってたり(洗脳)、そこに十分恐ろしさがあるから殺し方はもう少しライトでも良かったと思う。グロすぎてただただ気持ち悪い。二度と見たくない。
惹き込まれるが
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