余命10年のレビュー・感想・評価
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情景描写が素晴らしい
始まって数分間で、主人公の背景がわかってしまう演出が秀逸。日記のようなものだったり、友人達との語らいの中にしっかりとこれまでの経緯がわかる。ふたりが出会ってからは、しばらく夜が続く。心を通わせてからは夕焼けだったり、雨の中だったり、霧の中だったり。太陽と日差しに意味を持たせているのかな〜と思いながら、ラストに近づき理想の未来を思い描いたふたりには眩しいほどの太陽の日差しが降り注ぎ、ラストの坂口健太郎にも、、、あとは、時の経過がスライドショーのようにいきいきと描かれていてこれまた素晴らしかったです!余命10年普通なら短い時間と思ってしまいますが、本人でなきゃ分からない「長い」の意味。
いい意味で裏切られた。
愛すること、生きることの意味に真摯に迫る
定番の難病恋愛映画だと思っていたが、従来の恋愛映画の枠を越えて、愛すること、生きることの意味に真摯に迫っている。心に深く染み渡り、深い余韻に浸ることができる感動作品である。
本作の主人公は、高林茉莉(小松菜奈)。彼女は、余命10年の難病に侵されても懸命に生きていたが、恋愛はしないと心に決めていた。しかし、故郷の同窓会で真部和人(坂口健太郎)に出会い徐々に惹かれ合っていく。そして、二人の運命は大きく変わっていく・・・。
今までのイメージをかなぐり捨てて本作に挑んだ小松菜奈と坂口健太郎の迫真の演技には息を飲む。懸命に生きようとするが、余命10年との葛藤で苦悩する茉莉を小松菜奈が物静かで達観した演技で巧演している。坂口健太郎は、生きることに絶望した和人を生気のない佇まいと虚ろな目の表情で表現している。本作は、二人の演者としての飛躍の起点になるだろう。
脇を固める演技派俳優陣も手堅い演技で二人を支えている。特に、リリーフランキーが人生を知り尽くした枯れた佇まいで放つ台詞は人生訓のようであり、作品に深みを与えている。
生きる姿勢が全く異なる二人の愛は、生きることの喜びになっていくが、茉莉は生きたいという生への執着が高まり厳しい現実との狭間で苦悩する。和人は、生きる喜びを知り生まれ変わっていく。本作は、苦悩を深める茉莉と再生していく和人を描くことで、人間の運命の非情さと不条理に迫っている。恋愛映画を越えた領域に達している。
本作は、日本の四季の美しさ、変化を背景に描かれる。四季の美しさは刹那的だからこそその美しさが際立つ。四季の変化は時間の経過であり、着実に時間が過ぎ去っていることを告げている。そう考えると、四季の描写は、限られた時間のなかで懸命に愛を育んで生きた二人と重なり切ないが美しい。
ラストはリアルで切ないが清々しい。誰の人生にも限りがあるからこそ、懸命に生きることが大切だと本作は教えているからである。
期待しすぎたかな
人生で一番泣いた映画
親父という存在の希薄さよ
藤井道人監督でなければ絶対に観ることが無かったタイトルであるし彼が撮っていなければこの名作(恥ずかしいが他に相応しい言葉が無い)は生まれなかったであろうしそもそもがあまりにもベタで恥ずかしい(原作者の小坂流加さんには申し訳ないが)物語であるしそれに加えて野田洋次郎(RADWIMPS)が音楽で感動を上塗りするわけでどこから見ても「お涙頂戴」であることは間違いなく「ヤクザと家族」という傑作のあとによくもまあこの作品を手掛けたなぁという興味一点で鑑賞したがあまりにも真摯で純粋で嘘が無く良く出来ていたし相変わらず自然な会話のやりとりを大事にしていて今回も125分と長尺になる所以。職人映画監督として俺はやるんだという宣言を聞いた気がして「新聞記者」の監督という色から全力で逃れようとしているのかとも思ったり。彼がオファーを受けた際に出した条件は一年を通して撮影することだったそうだが主人公が回すハンディカムの四季点描を通して残された年月がぐるぐる駆け足で2周する描写は圧巻で恐れ入ったがどうしても職業柄「この1年目の桜並木と2年目3年目の桜並木を同じ日に撮影したんだろうなあ」と思って撮る側から観てしまう自分が情けない。撮影の今村圭佑がやはり素晴らしい。
泣きました…!
気軽にみていい
頬を撫でる桜色の春風
思い出しても鼻水が止まらない導入。「泣かせる」とわかっていながらもオープニングからやられるのは中々ない。素晴らしい入りだった。しかも、それがずーーーーっと尾を引いていて、ラストまで鼻水が止まりませんでしたよね、かんべんかんべん。
素晴らしい所は皆さんが余すところなく紹介して下さっているので割愛して、ひじょーーーに残念な所を一点だけ。
マツリが友達と会うお洒落(風)飲食店の件。飲食業を25年程やらせて頂いて、自営でショットバーもやっていた事のある身としては、「結婚しまーす(うふ)」のシーンはクソ(失礼)だった。その前の邂逅のシーンから違和感はあったのだけれども、あそこで爆発。「ココはテメェらのリビングじゃねぇよ!テメェの店だったとしてもな!」とファッ○ン(失礼)な気持ちになってしまいました。アレは油断の演出と感じてしまいましたねー…。わざとだったら恐ろしいですけども。
菜奈さんは「明日僕は〜」が一番好きでしたが(きっと一番好きなのは変わらない)、コレは「凄いな…」と思いました。これからの俳優人生が楽しみで仕方がありませんね。
ただ泣かせるだけの作品ではない
彼女の為の映画、それで良かったと思う
彼女のための映画であり、伝記の様な映画だった。前評判にあった「薄っぺらい」と言う気持ちも分かるんだけど、単純に場面の変化に心情が付いて行けてないだけだと思ったり。
邦画に良くある余命モノ。そう言われることも多いが、大体こういう作品は実話がベースとなっていて、そこにドラマを盛り込むことが多い。この作品には、そんな色があまり無いように思った。彼女の10年にいくつもの景色が流れ、周りも変化している。
ただ、変化に留まっているのが惜しかった。心の内を描くのに、藤井道人監督の映し出す画の可憐さに寄りかかりすぎて、補いながら感情を補完していくように観なくてはならない。場面もかなり移ろうので、ドラマに関しては物足りなさを感じてしまった。ただ、その中にも、彼女のワードチョイスにキレがあったりしたのが何とも上手い。ほとばしる文才と、言語化されない痛みを拭っていく。
主演は小松菜奈さん。彼女の作品にハマりにくいのだが、本作は演技も素晴らしく、とても良かった。共演の坂口健太郎さんもいい抜け感だったし、さすがの1言。2人にとっての永遠がより華やかに写ったし、その繊細さを引き出してくれる。脇役も豪華で抜かりないが、大学の友達グループに上原実矩さんがいるとは!なんだか微笑ましかった。松重豊さんの佇まいも刺さり、チクッとする。
余念のない完成度が持ち味だが、少し出来上がりすぎて引いて観ていたのも事実。彼女はこの本を発売したあとに亡くなったそう。彼女の為の映画、それで私は良いと思った。
観てよかったです。
映画の定番を詰め合わせた作品
余命10年
難病純愛ものは古今東西映画の王道テーマの一つだが、この出尽くした時代において、まだ傑作が産まれる余地があったか‼️
劇場での観賞時、近くの席にお母さんと中高生くらいの女の子二人の家族連れがいた。このお母さんが後半はず〜っとすすり泣き。上映が終わって、両脇にいた娘さんたちが泣き崩れたお母さんを気づかっていた。
まぁ、このお母さんは極端だとしても、これで泣かなきゃ人じゃない…という感じだ。
ベストセラー小説の映画化だが、内容はかなり違う。
岡田惠和による脚色(共同脚本 渡邉真子)は、実話に基づいて同氏が脚本を担当した『8年越しの花嫁 奇跡の実話』と対になっていると言えなくもない。主人公茉莉(小松菜奈)を同じ病気で夭逝した原作者と同化させたようなアレンジが、観客の気持ちを強く映画の中に引き込む。
難を言えば、自殺しようとしていた和人(坂口健太郎)が生きることに向き直すトリガーが弱い気がした。茉莉の母親が病気だと勘違いして彼女に詫びるが、茉莉から「もう死にたいなんて言わないで」と言われたときには既に死ぬ気が失せていたように思う。
彼女を好きになって、彼女のために生きようとする…でもよかったのではないだろうか。
映画は満開の桜のショットで幕を明け、それが病室の窓越しだと判る。
命を終えようとしている入院患者の女性が、茉莉に「サイゴまで生きて」と言ってビデオカメラを渡す。
誰でも命を終える時が「最期」なので矛盾したような台詞だが、命がつきるその時まで生き抜いて欲しいという死を目前にした者からの願いとして、重い台詞だ。
茉莉は残された数年間をビデオカメラに切り取る。折りあるごとにビデオに撮るその様子が、ビデオ映像を見せる終盤の演出で見事に効いてくる。
若者4人組の交流を追って2013年から2016年の時の経過を見せるシーンが、なんだか良い。青年たちが友情を深めていく様子が、心の荒んだジジイの目には眩しい。
奈緒と黒木華が泣かせる。
巧い役者というのは、何をやらせても上手に訴えてくれる。
四季折々の風景が見事にスクリーンに映えていて美しい。
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