劇場公開日 2022年3月4日

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「季節は着実に春から冬へ」余命10年 せつこんさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0季節は着実に春から冬へ

2022年9月20日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

幸せ

余命10年の難病を発症した茉莉のその10年を駆け抜ける話。

恋愛ものが苦手&余命ものなんてもっと無理な私でも、恋愛をガッツリメインに置かず、茉莉の「生」を綺麗な映像と一緒に春夏秋冬を通して描いていくので藤井監督作品としてめっちゃ楽しめた。藤井さんの映像センスやっぱり最高。私はやっぱり「泡」のとこが良かったな(笑)

あと、最後に茉莉が見るもしもの映像が4Kで撮ってるんじゃないかぐらい急に綺麗なのに対して、実際に茉莉が撮ったのはビデオカメラで荒い画質なギャップが悲しい。

全体的に春夏秋冬を繰り返して10年が進んでいくのだけど時が進むにつれメインの季節が徐々に春から冬へと移行していく。それは着実に茉莉が死へと近づいていることでもあるし、繰り返しの毎日を送っているようでも少しずつ成長・変化していく登場人物達ともリンクしてるように見えた。

そして、登場人物達の髪型が変わるのも心の変化と対応してるのかなと思った。単純に時の流れとも言えるけど、周り(茉莉の友達、姉)は髪型が変わっているのに対して茉莉は中盤までずっと同じミディアムヘアのストレート。でもただ死を待つだけと思っていた茉莉が和人と出会い1歩踏み出した時に、数年変わらなかった髪型にウェーブがかかり、それがロングヘアになって最後はショートに。

沙苗にいたっては彼氏できたら茶髪に染めて別れたら黒に戻ってて(たぶん)、好きな人が好きなバンドを好きになるタイプの女だなとか邪推をしてしまった(笑)

でも、1個気になるのは東京オリンピック決定や令和の元号決定とか実際の時事を入れてるのに、コロナがスルーされてるのが不自然に感じちゃった。普通に考えれば最後の桜のシーンはコロナ禍の春、あるいはもっと時が過ぎたコロナ禍後の世界になるけど、和人は飲食店経営だし最初にでてきた東京オリンピックは結局延期されてるんだからコロナ触れないのがノイズに感じちゃった。

せつこん