劇場公開日 2021年10月15日

「この残虐描写が可なら、傑作漫画「シグルイ」もNetflixで実写化してくれまいか」最後の決闘裁判 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0この残虐描写が可なら、傑作漫画「シグルイ」もNetflixで実写化してくれまいか

2021年12月31日
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鑑賞方法:VOD

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脚本がマット・デイモンとベン・アフレック、出演に前述の2人とアダム・ドライバー、そして監督がリドリー・スコットという強力な布陣。1億ドルという潤沢な製作費は、同監督のスペクタクル史劇「エクソダス 神と王」の1億4000万ドルには及ばないものの、CGを多用した特撮が少ない分、重厚かつ壮麗なセットや衣装に注ぎ込まれたことが見応え十分の映像から伝わってくる。

中世フランス、14世紀のパリで、騎士カルージュの妻マルグリットが夫の旧友ル・グリに暴行されるが、ル・グリは合意があったと主張し、カルージュとル・グリは勝者の主張が真実と認められる決闘裁判に臨む――という実話に基づく。これを、芥川龍之介の短編「藪の中」を原作とした黒澤明監督の「羅生門」と同様に、カルージュ、ル・グリ、そしてマルグリットの順に異なる視点から描いていく。この3回の反復の中に微妙な違いがあったり、新たな事実が明かされたりして、劇的な効果をある程度生み出してはいるのだが、単なる筋の繰り返しも多く、評者にはやや冗長に感じられた。2人目、3人目の視点によるパートから重複部分をある程度割愛していたら、2時間半の長尺にはならずよりタイトなドラマになったはず。

百年戦争のさなかの時代であり、合戦の場面や、カルージュとル・グリの決闘など、かなりの残虐描写が含まれる。夫婦の性生活、マルグリットがル・グリにレイプされる場面も直接的に描かれる。日本ではこれでPG-12のレイティングなのだから、エログロ描写に相当甘い(ちなみに米国ではR指定、英国では18歳以上推奨)。でもこれが映画化できたのだから、御前の決闘という点でシチュエーションが近い傑作漫画「シグルイ」も、Netflix製作で実写映像化してくれないだろうか。WOWOWで2007年に12話構成でアニメ化されたのだが、内容的には原作全体の半分にも満たないところで終わっている。三池崇史監督に「オーディション」や「殺し屋1」の頃の振り切り具合で撮ってほしいと願うがいかがだろうか。

高森 郁哉