「藪の中」最後の決闘裁判 SP_Hitoshiさんの映画レビュー(感想・評価)
藪の中
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事実をもとにした話ということで、あまりエンターテイメント性は期待していなかったが、すごく面白かった。どこまで史実に忠実に作ってあるのだろう。
構成が芥川龍之介の「藪の中」(映画だと黒澤明の「羅生門」)を思わせる。思わせるというか、これもごうかんの裁判の話だから、そっくりだ。
一つの事件に対して、三者の視点から三様の「真実」が語られる。
中世の今とは違うルールと常識の世界が面白い。
特に、「女性」が「モノ」として扱われていた時代ということ。
また、宗教的な価値観により、現代からみたら冗談みたいな理不尽がまかり通っていたこと。
この事件の顛末は正義が勝ってスカッとする、みたいなことでは全くなく、「現実ってどろどろして複雑で理不尽だよね」ということ。
西欧の合理主義や実証主義的、宗教を徹底的にほかのものから切り離す考え方って、こういう時代に対する強い反省からきてるんだ、ということがよく分かる。
でも、現代もやはりまだ理不尽さがなくなったわけではない。
現代のごうかん事件の裁判も、女性の方の非を追求しがちという意味でこの映画に描かれているものと本質的には変わらない部分があるし、「女性はだまって事を大きくするな」という価値観のもと、女性が女性の敵になる、ということも現代でもおこりがち。
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