劇場公開日 2021年12月10日

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「テーマは重いが、演技、美術の素晴らしさで爽やかな印象すら残す一作。」ラストナイト・イン・ソーホー yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5テーマは重いが、演技、美術の素晴らしさで爽やかな印象すら残す一作。

2022年1月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作鑑賞以降、作中のエロイーズ(トーマシン・マッケンジー)と同じく、二人の姿と『Downtown』のメロディーが頭に住み着いちゃった感じです。

エドガー・ライト監督の『ベイビー・ドライバー』(2017)は音楽と演技、そしてカーアクションを信じられないレベルで一致させた作品ですが、本作の冒頭で見せるトーマシン・マッケンジーの動きはそれを彷彿とさせ、序盤のダンスシーンと併せて、「ああ、ライト監督の映画をスクリーンで観てるんだな」と実感させられます。

ライト監督の初めてのホラー映画という触れ込みですが、悪夢のような襲撃場面を除いてそれほどきつい描写ではなく、『返校』(2019)が大丈夫だったという人ならまず問題にならないでしょう。むしろバリバリのホラー映画を期待すると肩すかしになるかも。

テーマとしては、『プロミスド・ヤング・ウーマン』(2021)と重なるところもあり、作中の抑圧的かつ加害的な男性像に居心地が悪く感じる男性観客も多いはず。『プロミスド・ヤング・ウーマン』が実際に被害に遭った女性の「当事者視点」という面で少し弱かったことと比較して、本作は(物語上の仕掛けという側面は多分にあったとしても)きちんと当事者の心情を具体的に描こうとしたため、結末も収まりが良くなっています。

エロイーズと同様、両親の影響で1960年代のロンドン文化漬けだったというライト監督の「好き」が全部込められたような美術、衣裳がとにかく素晴らしく、監督としては不本意かも知れないけど、ともすればテーマの重さを凌駕するほどに印象的です。

エロイーズとサンディ(アニヤ・テイラー=ジョイ)がついに接触する場面、ゲーム『Detroit: Become Human』を思い出して少し泣いてしまった…。

yui