トムボーイ
劇場公開日 2021年9月17日
解説
2019年・第72回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞するなど高い評価を受けた「燃ゆる女の肖像」のセリーヌ・シアマ監督が、2011年に手がけた長編第2作。引っ越し先の土地で新たに知り合った友人たちとの間で男の子として過ごそうとする主人公ロールの、みずみずしくもスリリングなひと夏を描いたドラマ。ある夏休み、家族とともに新しい街に引っ越してきた10歳のロールは、自ら「ミカエル」と名乗り、少女リザをはじめとする新しく知り合った友人たちに、自分を男の子だと思い込ませることに成功する。やがてリザとは2人きりでも遊ぶようになったロールだったが、リザがミカエルとしての自分に好意を抱いていることに気づく。そのことに葛藤しつつも、距離を縮めていく2人。やがて、新学期の始まりでもある夏の終わりが近づき……。
2011年製作/82分/PG12/フランス
原題:Tomboy
配給:ファインフィルムズ
オフィシャルサイト スタッフ・キャスト
全てのスタッフ・キャストを見る
主人公の少女ロールは10歳。少年になりたいロールは外ではミカエルと名乗って男子たちから一目置かれ、少女のリザから熱視線を浴びている。ロール/ミカエルの一夏の出来事に密着するセリーヌ・シアマの長編第2作には、必然的に主人公が体も少年になろうと工夫する場面や、やがて常識の洗礼を受ける後半部分など、生々しくて痛々しいシーンが用意されている。でも、これをトランスジェンダーについての映画と言い切ることに少し抵抗がある。なぜなら、観客各々が少年みたいな少女ロールや、少しだけ少女の面影のある少年ミカエル、そのどちらにも思春期一歩手前の自分、またはその時に側にいた誰かを重ね合わせることができるからだ。同性と異性の区別が曖昧な季節だけに許された、まだ幼くて、正直で自由だった気持ちを思い出させるのだ。
この映画を成功に導いた最大の要因は、ロール/ミカエルを演じる撮影当時11歳だったゾエ・エランの瑞々しさ、これに尽きると思う。彼女が醸し出す、見た目少年80%、少女20%の絶妙な配分が、性差を超えて魅力的に見えるからこそ、誰もが息を殺して見入ってしまうのだ。
2022年5月5日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
ー ご存じの通り、今作は『燃ゆる女の肖像』で、世界を驚嘆させた(含む、私。)セリーヌ・シアマ監督による長編第2作である。ー
■夏休みに新しい街に引っ越した10歳の少女・ロール(ゾエ・エラン)。
周囲に「ミカエル」と名乗った彼女は、新しくできた友人・リザたちに自分を男の子だと思い込ませる。
リザからの好意に葛藤しつつも、2人は距離を縮めていくが、夏の終わりはすぐそこまで近づいていた。
◆感想<Caution! 少し、内容に触れています。>
・妹ジャンヌ(私見であるが、ロールのボーイッシュな雰囲気を前面に出すために、可愛らしい女の子が演じている。)から”強いお兄ちゃんが欲しい・・”と言う言葉を聞き、ロールは一夏だけ、男の子「ミカエル」に成り済まそうと決意する。
- 彼女が、決して好奇心だけから男の子に成りすましたとは、私には思えなかった。-
・そして、転入前、級友になる筈のリザたちとサッカーなどをしながら、交流を深めて行く姿。
- 30年位前の記憶であるが、ボーイッシュな女の子はスポーツが得意だった子が多かったと記憶する。-
・けれども、リザから好意を寄せられ、戸惑いながらもそっとキスをするシーン。
- 極、自然に描かれている。
それにしても、「ミカエル」を演じた、ゾエ・エランを見出したセリーヌ・シアマ監督の慧眼と、それに応え、勇気ある(相当な勇気だと思う)演技を披露したゾエ・エランさんには、敬意を表したい。ー
・妹のジャンヌを”ウザイ”と言って苛めた男の子に対し、身体を張って抗議、喧嘩する「ミカエル」。しかも、見事に勝利する。
- が、この一件から「ミカエル」が女の子である事が、周囲に伝わって・・。-
<人間は、男女を問わず第二次性徴期前には、中性的になる瞬間がある。今作は、そのわずかな瞬間を物語性を絡めて、鮮やかに切り取った稀有な作品である。
それとともに、、「ミカエル」を勇気を出して演じたゾエ・エランさんが、現在ジェンダーに関わらず、幸多き人生を送っている事を、遠き日のいずる国から願った作品でもある。>
■友人の人類学者から言われた事であるが、人間は第二次性徴期前と、人によっては(女性に多いらしい・・。)70歳を超えると再び中性的になる方がいるらしい。
成程。
理に適っている気がする・・。
2022年3月1日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
少女を通じて描かれるジェンダーは、成人のそれに対する後ろ楯となるだろうか。
フランスで同性婚が合法化する前の制作であることはこの設定に何か依拠しているのか興味深いところである。
2021年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
小学生の高学年になってもまだ男の子として通じる女の子が、男の子と嘘をつき新学期が始まるまで過ごすドラマ。夏休みの開放感や思春期の直前のような世界に眩しさを感じるものの、これから新学期が始まって可愛いサスペンスのような嘘をどうするかわからないドキドキがある。
見ている間そればっかりはしょうがない、でも許してあげて欲しい、みたいなことをずっと考えていた。
すべての映画レビューを見る(全19件)