流浪の月のレビュー・感想・評価
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切な過ぎる
孤独の影
何の言葉・映像に感化されたのか、タン塩が食べたくなった。『マイスモールランド』を観た後にもチキンケバブが食べたくなった。コンビニ行けばチンするだけの食材があるものだ。わたしはひととは異なる・・・何を書こうか迷ってしまうほど、この映画からは自分の心にある孤独さを浮き彫りにさせてくれたのだ。
中心になった土地は松本市。横浜流星演ずる亮の実家は勝沼町。長野自動車、中央自動車道で1時間ちょっと。特急あずさでも1時間ちょっと。個人的にも懐かしい距離感だ。それにしても松本市が中心になっているのに、国宝松本城が一度も映ってない。地域を特定させない、田舎町というイメージを醸し出すためかもしれないが、もっと意味があるようにも感じた。
城の中でも大好きな松本城には月見櫓があり、月との親和性も高いし、お堀にはスワンボートこそ無いが、月や天守を映すと幻想的な絵にもなるのだ。この天守の雄壮美はもしや男根をもイメージすることができるため隠していたのか?などと勝手な解釈も可能だ。
婚約者からのDV、幼少期の性的虐待。広瀬すず演ずる更紗は伯母に育てられたという孤独の上に、セックスに対するトラウマが強かったように感じられた。セックスシーンでも時折見せた更紗の嫌悪する表情、唾を股間に塗られていたのも濡れないことを意味していたのかもしれません。と、エロさを強調するつもりはさらさらありませんが・・・
とにかく、性的コンプレックスからくる陰を不気味なまでに表現した松坂桃李の演技は震えがくるほど凄みがあった。2ヶ月間一緒に過ごしたために逮捕されたという恐怖体験から来ているものだと思っていたが、最後にはその秘密が明かされる。文のアパートの隣室まで借りて無邪気に引き寄せられる更紗の様子を見れば過去に性的関係があったとは一切思えないし、週刊誌や警察の動きやSNSの悪の面などに腹立たしくなりましたが、さらにそこへ亮のストーカー体質まで絡んでくる。
「自分を愛してくれる人がいれば誰でもいい・・・」という投げやりな更紗の生き方。ロリコンと蔑まれても孤独に生きている文。両者を繋いでいる「月」。そこには周囲の人間にはわからないほどのプラトニックな愛があった。伝わらない・・・やりきれない・・・誰にも認められない純愛を見た気分になった。
そんな真面目に書くつもりはなかったので、ここで江口寿史氏の名言を記す。
「マッチ一本火事のもと。ポーの一族萩尾望都」
ポー詩集というアイテムも重要だったけど、どちらかというと『ポーの一族』を思い出してしまう(読んだことありませんが)。多分、原作者も「ポーの一族」を読んでるのだと推測します。今敏作品を観てるかどうかは知りませんが・・・
彼らは自分の居場所を探しもがき続けていた
人は無意識に自分を必要としてくれる誰かを追い求め生きているのかもしれない。
そこが自分の居場所になってほしいと願いながら…
文と更紗は出会うべきして出会ってしまった。
しかし、世間は若い男と小学生の関係。それを誘拐、拉致監禁、幼児虐待、小児性愛者と判断する。文は初めて自分を必要としてくれる存在に出会い、更紗も自分ではどうにもできなかった生活から抜け出させてくれた大切な存在だった。そして、この二人の関係性には何一つの性的要素はないのだ。
最後に明らかになる真実には驚きがあったが、文には生きることを根底から覆すほどのコンプレックスがあったのだ。そこから考えると実際、彼は小児性愛の性癖がなかったのだろう。
ただ一番の彼の問題点は、子供に判断を委ねさせたことだ。それが自分の首をさらに締めることになっていく。
15年経ち更紗は普通の大人の女性として、亮と同棲をしている。仲睦まじい様子なのかと思いきや、やり取りを聞いているとあら、この男なんかあるなと感じさせる。そして、更紗との間に気持ちのズレがあるのがわかる。
文も亮も母親という存在に固執している。
無償の愛を与えてくれるはずの母から、文は自分の存在を否定され、ほぼ抹殺されたも同じだった。亮の母のいきさつはあまりわからない。彼を置いて出て行ったのか、亡くなったのか。
結局ありのままの自分を受け入れてくれる存在はどこにもいなかった。
文と更紗お互いにそうだった。
彼らは初めから決まっていた運命のように一緒に生きていくのだ。
「悪人」「怒り」に続き、同じく重たい独特の空気感が漂う李監督の作品。
松坂桃李、広瀬すず、横浜流星の3人がそれぞれが心に闇をも抱えた難役に挑んでいました。
松坂さんもただでも細いのに折れそうなほどに減量されていて、病み感が滲み出ていました。
流星くんも今までに見たことがない役柄で新境地が開けたのではないでしょうか。更紗に執拗にせまり罵声を上げているときの目は血走り、狂気に満ちていました。
広瀬さんも役者としてのキャリアも積んで着々と成長しているとは思うのですが幼さがどうもちらついてしまうのは否めない。
頭に残り、涙してしまった文の台詞
「更紗は更紗だけのものだ。誰にも好きにさせちゃいけない。」
これには文の更紗に対する深い慈愛を感じずにはいられませんでした。
過剰な設定ではないのか
最初、みんな演技がいいなと思ったの。「松坂桃李はいい役者になったなあ」とか。
横浜流星がカフェに入ってくるところとか「いいなあ」って感じで。
監督の演出がいいんだろうな。李相日監督の他の作品も観てみようと思ったもん。
画も良かった。「松本は良い街だ」って感じで撮れてる。
ロケ期間は冬だったのかな。夕暮れの空の色がとても良かった。
だから映画としては良いと思うんだよね。
でもノリきれなかったのは、元々の話に原因があんの。
この話、事情説明劇になってる気がすんの。
「登場人物はこう動きました。それは実は、こうだったからです」ってやってくのね。
何かを描き込んでいるというよりは、事情をどの順番で、どう呈示していくかに心が砕かれるね。
話としては、周囲にどんなに認められなくても、引き裂かれた自分の半身ともいえる相手と添い遂げるってことなんだよね。
それを描くのに、ここまで設定いるかな。ここまで設定を作り込まないと描けないのは、作り手の弱さなんじゃないかと思っちゃったのね。
そして、登場人物たちは、その作り込まれた設定に翻弄されて終わるね。
翻弄される中で出会えた半身と、一緒に翻弄されていこうと決めたっていう。
そんなこんなで、そこまで良い作品とも思わなかったけど、事情説明劇は人気あるんだよね。
でも、そうじゃなくて、僕が観れてない、読めてないだけかも知れない。
他の人のレビューを読んで考えてみようと思ったよ。
映像が
フィクションだけど本当
広瀬すずって顔がいいなあ。天才的に優れた容姿以上に、人を引きつけずにおかない顔をする人だと思う。CMで見せる笑顔もそれは素敵だけど、ほの暗いものを溶かし込んだ瞳は訴えかける力がすごい。出力何ワットみたいに、数字で表せそうに他より一段強い。どこだったか、亮と対峙しているシーンで、まなざしが下弦の月みたいに弧を描いてゆっくり動くのを見て、怒りの深さが伝わってきて、私はその怒りに共感しているのに、それでもちょっと怖かった。
松坂桃李も横浜流星もすごい。悲しさって普通は他人から簡単に見えないもので、見せようとしたら滑稽に映ってしまうし、だから映画で悲しさを撮るのって難しいだろうなと思うんだけど、三人とも素敵な表現だった。
またバイプレーヤー秀逸。「脇を固める」っていう言葉があるけど、この映画、脇をがっちり固めすぎじゃない?っていうぐらいの強力布陣で。白鳥玉季さんのこの少女と女性のあわいの感じ。趣里さんの新境地。文の母の内田也哉子の静かなド迫力。わー、映画だ映画だ。楽しい映画じゃないけど、視聴体験としてめちゃくちゃ楽しい。
ただ、同じ監督の映画で同じ俳優の演じる役がまた性暴力を受けているのが、ちょっと引っかかりはする。
最近はどうにも心配事が多い。それでも、“ある”のに“ない”ことになっていた時代よりは今がマシだと思うしかない。この映画は、性のことが時にこれほど人ひとりの人生に濃い影を落とし続けることがあるのを伝えている。フィクションだけど本当。噛みしめる。
二人だけの世界
思い込みの激しい人間が正義感を振りかざすほど鬱陶しくて目障りなものはない。
世の中そんな人間だらけで成り立っていると思えてしまう。
自分の目で足で直接確認した訳でもなく人から聞いた話を世間の風評を
マスコミの話題を鵜呑みにして信じ込んでいる人間ほど厄介な存在だ。
この下世話な社会では真実を伝えることは困難で無理なことなのかもしれない。
あなたは私の何を知っているのか?解ろうとしたのか?なぜそんなことが言えるのか?
あなたのその自分勝手な思い込みと価値観はどこから来ているのか?
私はあなたの思うほど可哀想な人じゃない。
事実とは違う事を言われたら人は必死で否定する。だけど言えない人間もいる。
またかよ もういいよ 何も知らないくせに 怒りと憎しみと諦めの感情が昂って、
それはまるで必死で言い訳しているかのようで情けなくて自分で自分のことを言えなくしてしまう。
言えない言いたくないこともある。
どうして私のことをわかってくれないの?
真実を知ったところで他人は理解しようとしないだろう。
もう誰にも理解してもらわなくていい。二人だけの世界でした。
脚本家にシナリオを書いて欲しかった。
ノワールなのかも
観られ方としては、ずっしり重たいドラマ映画だけれど、ノワールとしても観れる。というか松阪が二回目の連行の時に気がついた。横浜流星は嘘喰いとかキラキラ映画で可愛い男の子として活躍している印象があったが、抑圧、束縛、DV型の男として完璧だった。顔が良い男でありながらこのタイプの男性見掛けたことある。というか、先週の飲み会で嫁が料理作らないことのグチを聞いた。こんなことになってなければ良いけれど。
松阪のコミットの仕方どうでしょう。私ならそもそもこんな固いガチガチのトーンで中学生に話しかけない。もっと面白トーンで話しかける。何より、子供が居る女性に相談するのではないか。そんな社会の窓口を考えられない人も居るのかもしれない。それにしても、この広瀬すずさんが、松阪を追い掛けるような展開事態が男性原理的に感じてしまうような。それにしてもかなり画にはこだわりを感じられる。松阪はこの役柄に近いのをよくやっている印象があるが、横浜流星と広瀬すずは次の年齢層の役ができそう。二人とも賞レースとかでも強そう。
なにもそこまでしなくても・・・・
wip)評価が難しい一作
想定内。
性愛は喜びと苦しみを与える
何も考えず楽しむ娯楽映画ではありません。主要な登場人物がそれぞれ心に闇をかかえているので、気持ちに余裕のない人は観ない方がよいです。
また、社会的に問題のある異常な状況を話の軸としているため、生理的な不快感や嫌悪感を感じる人も少なくないと思います。
しかし、私にとっては素晴らしい作品でした。密度の濃い映画鑑賞時間を過ごすことができました。
よかったところ。
ひとつは描かれているテーマ。
ロリコンの女子誘拐という、誰しも嫌悪感を感じる特異な事件が、この物語の中心にありますが、描かれているのはそこではなく、性愛という我々全員に共通する人生の課題だと感じました。
人には性愛が本能として遺伝子に組み込まれていて、誰しも逃れられません。
運よくその本能と上手につきあえる人もいますが、様々な事情で悩む人は少なくありません。人によっては絶望したり破滅的な行動に至ったりすることがあります。
しかしそれほど大事な問題であるにもかかわらず、社会的・文化的に性愛を語ることはタブー。恥ずかしいことなので、人は隠します。
この映画に登場する登場人物の悩みの原因は性愛です。誰にも救いを求めることができず、孤独で苦しい人生を送っています。それぞれの悩みにどこかしら思い当たるところがあり、共感できる部分、考えさせられるところがありました。
二つめは役者さんの演技。
特に広瀬すずさんの演技には目を見張るものがありました。最初の長いベッドシーンには賛否あるかと思いますが、あらゆるシーンで、主人公の心が表現できていたと思います。容姿が綺麗というだけでなく、人の繊細な心を表現できる素晴らしい女優さんだと感じました。
松坂桃李さんは最も難しい役どころだったと思います。人物のもつ空気感をスクリーンから感じました。
また横浜流星さんのクズ男っぷりも素晴らしい演技でした。予想できる範囲をだいぶ超えていたと思います。演技指導なのか、もともとの表現力なのか気になりました。
三つめは映像です。
状況を説明するための映像ではなく、観客の感情を動かす抒情的な映像づくりが丁寧に行われていて、撮影・編集の感性と努力を感じました。映画館の大きな画面で観るとよくわかりますね。
原作は未読ですが、そのうち読んでみようと思います。
今年の映画賞をたくさんとりそうですね。
異形の愛のかたち
“誰悪”社会
中々の力作でした。そして色々と考えさせてくれました。
そしてこの作品、まず俳優陣の気合に気圧される。俳優なら挑戦したい作品であることは間違いない。まず、各俳優に対して思ったこと。
・広瀬すず…大人になったなぁ~。最初姉ちゃん(アリス)かと思ったが、本作はすずの役で間違いない。
・松坂桃李…いつも作品チョイスが素晴らしい。優秀なブレーンがいるのかな?
・横浜流星…存在感大。一番の儲け役
・白鳥玉季…新星登場。宮崎あおいの子役時代にソックリ。
・増田光桜…子役の鏡。上手
・内田也哉子…これも上手い。
・趣里…名脇役であり適役
・三浦貴大…同上
・多部未華子…損な役回り(無名女優で可の役柄)
・柄本明…意味なしキャラ(友情出演か?)
って感じで、(下2名以外の)役者映画でした。
物語については、文と更紗の運命的出会いと別れと再会の物語であるのだけど、ラストは別にして、この物語の悲劇は結局誰が一番悪いの?とつい考えてしまいます。
勿論、原因は一つではなく様々な問題や要因が重なり合っての悲劇ではありましたが、過去パートでは“幼児監禁罪”が成立するので仕方ないにしても、現在バートの方は社会が正常で健全であれば、ひょっとしたら避けられたのではないかという苛立ちを、観客目線として感じて辛くなってしまいました。
ここからは、映画から脱線します。
最近“誰得”という言葉がよく使われますが、本作の現代パートについては“誰悪”と言いたくなる様な話でした。
勿論、文の母親、更紗の従兄の“悪”、亮のDVについては他者がどうすることも出来ない問題ではありましたが、問題は現代パートの社会的なバッシングの悲劇にあります。
文、更紗の今のパートナーに対しては、本来はそれぞれの対応(対処)問題となりますが、“SNS”“マスディア”“警察”等々による問題については本人達の力ではどうにもならない。それに、社会が健全であれば、そもそもこういう悲劇は生まれない筈。
なので、こういう悲恋が成立する根本的な要因としては、社会としての民度の低さが一番大きな問題の様に思えますし、現実でもこうしたニュースが絶えないのだと思います。
しかし、“SNS”や“マスディア”の愚行・愚劣はどうにもならないにしても、警察など公的組織がそれを真に受けてしまうってどうなの?
本作の場合“ロリコン”という言葉が一人歩きしていたが、他にも“オタク”“セクハラ”“パワハラ”等々、バッシング対象の曖昧な言葉は山ほどあるけど、結局文はロリコンなのかどうかは別にして性犯罪は犯していないし、公的機関が“SNS”や“マスディア”と同等の判断基準しかないというのは大問題でしょう。
こうした物語やニュースを目にする度にネットやマスディアの信憑性や犯罪性についての判別する公的機関は必要であると思うし、所謂“ネットクズ”や“マスゴミ”と呼ばれているモノに対しての(間接)犯罪に対しての公的な対処機関も絶対に必要だと思いますけどね。
ホント、こういう作品は良い作品でもあるし、嫌な作品でもあるよな。
ちょっと消化不良かな
私太らない体質なの
少女が男に誘拐される。
彼らは幸せだったのだが、周りはそれを許さなかった。
少女が大人になった現在と過去を交互に描写している。暗めの話。
良い点
・子役が声以外はいい感じに似ている
・ピザ
・友人の娘の登場のシーンの切り替わり
・文の彼女
悪い点
・冒頭の男子学生らがいきなり棒演技
・子供の頃の声がやや野太い
・ただでさえ尖った名前なのに名前を変えない
・田舎行きシーンが無駄に明るい
・唐突に場所特定
・唐突に隣の部屋
・そっちが出口
・謎のウインドチャイム設定
・謎の雑貨屋設定
・友人の娘が蔑ろ
・オカンがややベトナム風
・時系列がややめまぐるしい
・オチがややわかりにくい
・街を通るシーンがやや微妙な箇所も
・風刺がやや柔らかい。もう少し強いほうがよい。
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