「原作ファンはガッカリ」嘘喰い lemenさんの映画レビュー(感想・評価)
原作ファンはガッカリ
原作の大ファンです。
脚本が本当に酷かったです。原作のシーンをいくつか切り貼りしただけで、原作とは別作品という印象を受けました。全くの別物として観るとしても、島で情報提供した男性は何者?蘭子のカジノで貘が既に佐田国のイカサマをほぼ見抜いていた理由は?なぜ貘はロデムだけを救いに森に戻った?なぜマルコを仲間にした?貘のお腹の傷は?貘と蘭子の関係は?そもそも「嘘喰い」って?賭郎の会員権に皆が拘る理由は?なぜ屋形越えを目指すのか?などなど…かなりよくわからない部分が多いです。原作を読んでいたから一部は脳内補完出来ましたが、原作未読の方はより一層意味不明だったのでは。
vs九重太郎編は特に酷かったです。原作で描かれていた、命を賭けている状況下で一瞬で高度な知略を巡らせる貘の魅力が皆無でした。映画では、高校生でも思い付きそうなトリックばかり…。録音した音声を流して敵を誘い出すくだりはホームアローンみたいでした。
vs佐田国編は設定の違いはあるものの、途中までは佐田国役の迫力もあり良かったと思います。しかし、相手の嘘を見抜いた上で逆手に取る=「嘘喰い」なのに、貘が急にカードを伏せて「さぁ引け」と言い出したのは本当にガッカリでした。原作では梶にそれを提案されて、それでは運任せになってしまうと否定しているのに…。原作では貘の人間離れした観察眼と知略で佐田国に完璧に勝ちましたが、映画では「何故か相手のイカサマを見抜いていた貘が運も味方して勝った」という印象です。佐田国は原作と同じく勝負に負けて吊られましたが、貘が「殺しはしない」と発言したシーンがあったので、幸せだった過去を想起しながら殺されていく佐田国の感動的描写に矛盾を感じました。イカれたテロリストの最期の嘘まで看破して倒す原作とは大きく違いますね…。助手の女性が一緒に吊られたのも意味がわからなくて可哀想。佐田国も助手も賭事以外に何か悪い事をしたのでしょうか?
蘭子から九重太郎の情報を得たシーンから察するにマルコを仲間にしたのは偶然のようでしたし(戦力としてではなく単に可哀想だったから(?))、最初の屋形越えについてもシンプルに貘が負けたことになっていましたので、原作のような貘の桁外れの知略の描写は全くありません。(原作ではどちらも貘の計画の内でした。)そこが嘘喰いという作品の醍醐味の一つだと思いますので、正直それも残念です。
完全オリジナルとしても楽しめなかったですし、原作ファンとしては本当にガッカリでした。キャストのビジュアルだけは原作そのままで良かったです。