「【”善意と悪意あるSNSの狭間で翻弄される、名誉と尊厳。”主人公が体験した、賞賛から一転して罵倒される姿は他人事ではない。今作は、人間の倫理観とは何かを問い掛けてくる見応えある作品でもある。】」英雄の証明 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【”善意と悪意あるSNSの狭間で翻弄される、名誉と尊厳。”主人公が体験した、賞賛から一転して罵倒される姿は他人事ではない。今作は、人間の倫理観とは何かを問い掛けてくる見応えある作品でもある。】
◆感想<Caution! 内容に触れています。>
・主人公、ラヒム(アミル・ジャディディ)の”善意と悪意あるSNSに翻弄される姿が観ていて、キツイ。
と共に、イランの刑法制度や社会制度も少し学ぶ。(軽犯罪者の休暇制度、死刑が金銭により回避できる制度、犯罪者を助けるためのチャリティ協会の存在など。少し、驚く。)
・金貨の入ったバッグを恋人が拾い、預けられたラヒムが、一度はそれを借金の肩にしようとするも、ラヒムの借金を肩代わりした義兄との示談が成立せず、役所に届け出て、善意あるSNSにより、一時的に”正直者のの受刑者”として、マスコミに取り上げられるも、悪意あるSNSにより、窮地に追い込まれていく様の描き方の巧さ。
- 脚本がハイレベルなのである。ー
・ラヒム自身も、小さな嘘(自分が、バッグを拾ったetc.・・。)を積み重ねて行き、逆に自らを追い込んでしまったことに悩む姿。
・ラヒムの義兄が発する、”拾得物を拾ったら届けるのが当たり前なのに、何故受刑者だからと言って、賞賛されるのか!”という疑問も良く分かる。
- 所謂、行なう者の肩書、境遇により行為の位置づけが変わるという、”認識の歪”の描き方の巧みさよ。-
<ラヒムが、頭を剃り、爽やかな顔で獄に戻るシーンは、SNSの柵から解き放たれたからであろう、と私は思った。
今作は、人間の倫理観とは何かを問い掛けてくる見応えある作品である。
イランでも、SNS社会の不条理な出来事は多数あるのだろうな、と思った事と、イラン独自の法制度を含めた社会制度も、興味深かった作品でもある。>
<2022年5月22日 刈谷日劇にて鑑賞>
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