「英雄の証明を見て感じたこと」英雄の証明 コショワイさんの映画レビュー(感想・評価)
英雄の証明を見て感じたこと
1 落ちてた金の扱いを巡り、マスコミやSNSに翻弄される男と周囲の人々の喧騒を描いた社会派サスペンス。
2 金銭トラブルで収監された男が主人公。映画の前段では、拾った大金を正直に持ち主に返したことが美談としてマスコミに取り上げられ、男は英雄ともてはやされた。表彰、寄付金や職の提供がもたらされた。
直後、ある噂がSNSに出回り、男の評価は暗転する。金の返却は嘘で、男はペテン師だと。男は返却した相手から受領書を貰わなかったため、相手方を特定できない。迂闊であった。男は名誉回復のため、返却相手の捜索をするが、事態は更に悪化していく。
3 本作では、マスコミやSNSなどメディアが持つ情報伝達力の功罪、情報の出どころや真偽が不明のままでも既成事実化するとひっくり返すことが困難となる恐怖、情報化社会の中では、何事にも裏付けを取るなど慎重に事を運ぶことの重要性が描かれていた。
4 ファルハディは、情報化の今日的なテ−マ取り入れ、面白い作品に仕上げた。筋立ては、後段の主人公が思惑どおりいかなくて精神的に追い詰められていく様は、見ていてしんどくなるほど優れていた。また、人物造形は役人や周囲の人々の役どころは的確であった。何事も脇の甘い主人公と用意周到な人事部長との面談は人物対比として面白かった。
5 主人公は人間的には優しいがちょつと弱々しすぎるように見えた。結局、周囲の人々はメディアをうまく利用しようとし、主人公はメディアに翻弄されてしまった。
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