MEMORIA メモリア

劇場公開日:2022年3月4日

MEMORIA メモリア

解説・あらすじ

「ブンミおじさんの森」などで知られるタイの名匠アピチャッポン・ウィーラセタクンが「サスペリア」のティルダ・スウィントンを主演に迎え、南米コロンビアを舞台に撮りあげ、2021年・第74回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したドラマ。とある明け方、ジェシカは大きな爆発音で目を覚ます。それ以来、彼女は自分にしか聞こえない爆発音に悩まされるように。姉が暮らす街ボゴタに滞在するジェシカは、建設中のトンネルから発見された人骨を研究する考古学者アグネスと親しくなり、彼女に会うため発掘現場近くの町を訪れる。そこでジェシカは魚の鱗取り職人エルナンと出会い、川のほとりで思い出を語り合う。そして1日の終わりに、ジェシカは目の醒めるような感覚に襲われる。共演に「バルバラ セーヌの黒いバラ」のジャンヌ・バリバール。

2021年製作/136分/G/コロンビア・タイ・イギリス・メキシコ・フランス・ドイツ・カタール合作
原題または英題:Memoria
配給:ファインフィルムズ
劇場公開日:2022年3月4日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第74回 カンヌ国際映画祭(2021年)

受賞

コンペティション部門
審査員賞 アピチャッポン・ウィーラセタクン

出品

コンペティション部門
出品作品 アピチャッポン・ウィーラセタクン
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Photo: Sandro Kopp (C) Kick the Machine Films, Burning, Anna Sanders Films, Match Factory Productions, ZDF-Arte and Piano, 2021

映画レビュー

5.0 音の映画

2022年5月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

映画の「音」とは映像の従属物に過ぎないのか否か。近年、それを覆そうと試みる、音を優位に置いた映画作品が散見されるようになってきた。電話の音だけで事件を解決する『THE GUILTY/ギルティ』などがそうだが、本作も映像以上に音の方が物語に核心に迫っている作品だ。誤解を恐れず言い切ってしまうと、映像に映っているものより聞こえる者の方がはるかに重要な位置を占めている。
主人公の脳内に響く音の正体はなんなのか、それは映像では全く切り取ることのできない、壮大なイメージを観客に与え、想像力を無限に広げてくれる。映像は具象的な表現だが、音は抽象的な表現。あらゆるものが映像化されて、見たことのないものを提供することが困難になりつつある時代、観客が体験したことのない未知の世界を提供できるのは、映像よりもむしろ音なのだとこの映画は教えてくれる。

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杉本穂高

4.0 アピチャッポンらしい悠久の時間と陶酔と

2022年3月4日
PCから投稿

アピチャッポンの映画には眠りと陶酔がある。それほどまでに心地よく、なおかつ、その向こうで深淵に繋がっているかのような神秘性を持つと言うべきか。舞台をいつものタイからコロンビアへ移した本作は、耳元で爆発音が鳴るのを感じる主人公の物語。サスペンスか、ミステリーか、超常現象ものか。頭の中をハテナで一杯にしながら、アピチャッポンらしい心地よい時間と空間に身を浸していく。本作を理路整然と言葉で説明することは困難だ。でも我々は頭で考えることに決して固執せず、心で感じることができる。私は本作で太古に刻まれた記憶の声に耳を澄ませたり、他人と対話したり、自然に身を委ねたり、はたまた音響技師が効果音を使って爆音を再現したりする中で、なぜだかふと「映画の本質」に触れたような鮮烈なイメージに貫かれるのを感じた。映画とはつまり、記憶を発見し、再現し、そして共有する作業ではないかと、この作品に包まれながらそう思った。

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牛津厚信

4.5 超難解な作品

2025年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2022年 超難解な作品
この物語は、昨今発見された「記憶媒体」に関することからヒントを得たのかもしれない。
我々は一般的に、記憶媒体と聞けば磁気テープ系やハードディスク系を想像するが、ごく最近「石」や「水」も記憶媒体になることがわかってきた。
もしそれら物質から、太古まで遡ってその記憶を取り出すことができたなら?
この作品はこのことを言っていたのかもしれない。
特に「大きな音」は、自然の音とは違い、物質に深く記憶として刻み込まれている。
それをキャッチできるアンテナがあれば、一般的に言われる超能力に目覚めることで、その記憶を「再生」してしまうことが起きるのかもしれない。
このことと「アカシックレコード」という概念がこの作品の下敷きとなっている。
この作品は2021年カンヌ国際映画祭において審査員賞を受賞しているが、審査員たちは博識故にこれらのことがすぐに理解できたのだろう。
この作品は、正直何を言っているのかわからない人が大半だろう。
特に最後の「OOO」にはひっくり返ってしまっただろう。
太古の地球 大きな音 その正体
さて、
主人公ジェシカ
彼女がおかしな音に悩まされ始めたきっかけは、愛犬を安楽死させたことだったようだ。
しかし奇妙なことは「音」だけにとどまらない。
入院していた妹との会話や、妹の歯科医が生きていること。
そして何よりも、その音を再現してくれたミキシングの「エルナン」
ジェシカは彼と親しくなり、花農園用の冷蔵庫の視察にまで出かけた。
エルナンはジェシカの「音」をヒントに、自身の専門である作曲をしてジェシカに聞かせた。
ところが再び彼を訪ねたが、そこに事務所やミキシングスタジオなどはなく、近くのスタッフに訪ねてもエルナンという人物を知らないという。
そして聞こえてきた音楽 演奏する4人 その音楽は、「エルナン」が作曲したものだったに違いない。
その音楽をエルナンは「妄想の深淵」といった。
これら不思議な出来事が次々とジェシカの前に現れ始めた。
妹が入院していた大学病院で仲良くなった女性と彼女の人類学 遺骨の発掘 6000年前の少女
この作品の舞台はコロンビア スペイン語圏の国
そして彼女の研究に魅了されて訪れたジェシカは、その発掘場所を訪れた。
そこで出会った不思議な男
彼は頭の中の「音」に悩むジェシカの姿を見て「大丈夫か?」と声をかけた。
彼の名前はなんと「エルナン」
そしてこの男は自身を「ハードディスク」だという。
また、ジェシカを「アンテナ」と例えた。
アンテナ能力が芽生えたジェシカは、エルナンの記憶を共有してしまう。
彼の幼い頃の記憶を見て、自分の体験だと勘違いする。
さて、
この作品には効果音や音楽は一切使われず、日常と自然の音だけがある。
あの「音」だけが唯一の効果音だろうか。
発掘現場近くに住んでいたエルナン 彼の手を自身(ジェシカ)の腕に置くと見えた彼の記憶と、彼が石から見た記憶が伝わってきた。
「何故泣く? 君の記憶じゃないのに」
「あの音が聞こえる。これもあなたなの?」
「そう。でももっと昔の音」
エルナンの言葉は非常に奥が深いと思われるが、なかなか読み解くのは難しい。
特に、「猿の言葉がわかる。憶えている。宇宙で探していたら、俺が生まれた」というセリフは非常にスピリチュアル的で解釈すれば誤解がつきまとうだろう。
簡単に言ってしまうと「私とは、宇宙そのもの」という意味。
そして私自身が宇宙を内包するように、宇宙とは一人に一つずつ「存在」する。
この作品は、この「事実」を解釈せずに表現している。
ジェシカの頭の中にだけ聞こえる「音」
それは、ジェシカの覚醒のきっかけだったが、その原因は一つの宇宙をジェシカが葬ってしまったこと。
ジェシカとはごく一般的な人間だが、その一般という日常にあふれる常識や普通とかという名の影に、本心とかセルフとか言われる真の自分が隠れてしまっている。
それは成長の過程なので、セルフも問題にすることはないと思われるが、ジェシカ本人にさえ気づかない本心が「声」を上げたのだろうと解釈した。
その声に応えたのが「セルフ」のようなもので、彼女に「音」を聞かせたのだろう。
そうして彼女がたどるようになった軌跡こそ、「シンクロニシティ」だった。
その過程で、彼女は妹の話やスタジオのエルナンとの不思議な齟齬というのか、すれ違いのようなものを体験する。
この描写は日常のあるあるだが、実際には「パラレルワールド」に移動したのだろう。
彼女は今までの日常から、別の日常へ移っていった。
また、
発掘現場そばの病院で、医者はジェシカに「ご主人は?」と尋ねるが、彼女はそれには答えない。
答えられなかったという方が正しいかもしれない。
それは、何らかの理由で夫と別れたのだろう。
それは彼女にとっての大きな「喪失」であったが、同じ喪失を愛犬には安楽死という方法を取ったことで、彼女の中の「本心」が「ざわついた」のだろう。
この物語のすべての「原因」
都会であっても雨は降る。
この自然現象は、地球があるから起きるが、当然宇宙がなければならない。
同じように「私」と言う存在は、「私」単体では成り立たない。
この私とは何か?について考えると、私自身の自己紹介が始まるが、その場所や、特別な「もの」について説明し始めると、そもそもの「私」という存在の説明から徐々に遠ざかってしまう。
つまりそれらすべてが「私」と何らかの関係があり、この関係性(縁起)によって「私」が居ることになる。
この関係性はすべての「もの」と関係している事がわかるが、つまりそれは地球であって、そもそも宇宙だ。
この作品は、このようなことを説明せずに描いている。
この妄想が正しいとは言えないが、一つの解釈だ。
妄想の深淵にこそ、真実が宿っているのかもしれない。
超難しい作品だった。

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R41

0.5 幻聴に悩むおばさん放浪記

2025年9月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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odeonza

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