劇場公開日 2021年10月8日

  • 予告編を見る

「忠誠心のあり方」ONODA 一万夜を越えて グレシャムの法則さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5忠誠心のあり方

2021年10月9日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

この作品で私が思う最大のポイント、それは小野田さん自身は、自分が下した判断をどう評価しているのか、ということです。

もし、さしたる教育も受けずに司令官としての判断どころか、ただあの場所に送り込まれて上官の指令に従うしかない立場の人であったら、巡り合わせの不運を嘆き、時間的かつ精神的なロスをどう快復させるのか、という構図の中で比較的分かりやすく感情を推し量ることかできると思います(今を生きる私たちに小野田さんの実体験を肌感覚で理解することは不可能だとしても)。

小野田さんは只者ではありません。選ばれたエリートとしての特殊な訓練を受けています。戦争参加国の事情についても無知ではありません。
ラジオから得られる情報は限りがあるとしても、国際情勢を分析して、島に残ること、生き延びることを選んだのは司令官としての自分です。
最初に訪れた赤津や父親の説得に応じなかったのも、それなりの分析と判断の結果です。

自分の頭で考えることのできる人が、部下の運命をも左右する決断をするということには、責任という重さが加わりますが、それを遂行し切れる背景には、〝忠誠心〟という概念が存在していました。
この忠誠心というのは、とても曖昧です。
2019年のラグビーW杯におけるワンチーム。
このチームの選手は全員がチームへの忠誠心を身体を張ったタックルで示し、それは我々にも分かりやすく伝わってきました。

ところが国家への忠誠心は、忠誠する主体がコロコロ変わり、忠誠を命じられた小野田のような人たちを平気で裏切ります。この映画では、その変節ぶりをイッセー尾形演ずる谷口に象徴させていました。
日本に戻った小野田が忠誠心を根拠として下した自身の判断について、どのように整理したのか。
その点がとても気になりましたが、そこまでは映画では追いかけていません。帰国後の小野田さん個人の心の内まで踏み込まなかったのは、製作者の方たちの小野田さんへのリスペクトの結果なのだと解釈しています。

浅学ではありますが、国家への忠誠が平和と富と安定を長期に亘ってもたらした例は、古代ローマと中世のヴェネチア共和国くらいしか思いつきません。

このチーム、この団体、この政体を守り維持・強化したいと、そこに所属する人間が自発的に思えることはどれだけ稀有で素晴らしいことなのか、あらためて感じることになりました。
規模としては小さいですが、宮崎駿監督の描く〝風の谷〟やエボシ御前の治める〝タタラ場〟などは、そこの構成員がごく自然にこの共同体を守ろうという忠誠心に溢れている好事例だと思います。

グレシャムの法則
2021年10月15日

忠誠心のあり方とあり、面白そうですね。また、どうぞよろしくお願いします!😆

美紅
2021年10月15日

こちら観ようと思っています😃

美紅
2021年10月15日

グレシャム様
こんばんは😃🌃

美紅
しろくろぱんださんのコメント
2021年10月10日

グレシャム法則さん。
共感、コメントありがとうございます。
そして名前の映画にも共感頂いてありがとうございます。仰る通り名前で津田さんを知り映画ONODAを観賞する事に。
青年期の遠藤さんよかったし津田さんも素晴らしかったです。

しろくろぱんだ