「自立と地域共生の難しさ」梅切らぬバカ kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
自立と地域共生の難しさ
自閉症の人が自立し地域で生活していくことはとても困難で、家族や支援する人や近隣住民の協力や支えが必要だ。しかも母と同居し、50歳になろうとしている人の自立支援は深刻とも言える。
でも、加賀まりこ演じる母と、塚地武雅演じる忠さんの関係性と2人の演技がそれをほのぼのとした人間ドラマに変えてしまった。特に塚地武雅の演技は堂々としたもの。山下清を演じたこともあるので安心して観ていられた。俳優としての凄みが増してきてるな。
話の方は正直、大した事件は起きないし、根本的なものは何も解決していないし、大きな感動が待ち受けているわけではない。意外とリアルな話だなと感じた。
グループホームの近隣住民が反対する理由もわからないではないし、そこを反対されてしまうと地域で暮らすことができないというホーム側・利用者側の意見もわかる。これは発達障害だけでの問題ではない。障害者が地域で暮らすこと、そして障害者が大人になって自立していくことの難しさが表現されていた。ほのぼのとした雰囲気の映画だがテーマは深い。
ただ、何も変わっていないわけではない。2人の行動や発言が確実に周りを変えていったことがわかる。いや、映画だからそうなったとも言える。でも実際、そんな地域もあるんじゃないかという気がしてきた。少なくとも映画を観た人は近所にグループホームができても反対しないんじゃないか。反対しないでほしい。
コメントする