「パーフェクト・ガンズ・ムービー!」ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3 ヒックス伍長さんの映画レビュー(感想・評価)
パーフェクト・ガンズ・ムービー!
今作は、間違いなくガーディアンズシリーズ史上、そしてMCU史上最高傑作である。
エンドロールの最後の最後までしっかりとガーディアンズシリーズを一旦締めくくる描写的配慮をしっかりと盛り込んで、そして、それが、ひいてはMCU作品全体に対してひとつの区切りとなる、パロディ的オマージュとも言うべきエンディングとなっている。
そして、今回では、前作ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックスで張られていた伏線、つまり人造人間アダム・ウォーロックが、満を持してようやく初登場。
Blu-rayのオーディオ・コメンタリーでもガン監督は
「いつかマーベル映画に登場する日が待ち遠しい」
などと語っている。
そんなアダム・ウォーロックだが、実はアベンジャーズ/インフィニティ・ウォー及びエンドゲームの元ネタとなる原作コミック「ザ♾️インフィニティ・ガントレット」ではアベンジャーズを統率するリーダーとしてサノス達ヴィランに対抗し、最終的にアダムがガントレットを獲得することで戦いに終止符を打つ、という実に重要なキャラクターとして位置づけられている。
ロケットの過去、ネビュラの人格、ドラックスの父性、マンティスの感情、グルートの成長、などシリーズを通して描かれてきたガーディアンズのメンバー像をしっかりと掘り下げ、クラグリンや、コスモなどサブキャラクターの活躍にも焦点を当て、MCUとのクロスオーバーで、本人だけど本人じゃないという、なんともややこしい位置づけのキャラ設定となったガモーラの人格や感情の変化や成長を本作のみで描き切ったジェームズ・ガン監督の手腕は、まさに天才的、いや天才だと言うべきだろう。
また、エドガー・ライト監督などにも共通するが、かっこいい、または面白い映画の何たるかは、劇中で使用されるサントラを聴けば一目瞭然である。
シリーズ的にも毎回素晴らしい選曲だが、本作でのロケットのシーンに置けるレディオヘッドのクリープやレッドボーンのカムアンドゲットユアラブなどの選曲は涙無くしては観られない。
個人的にはレインボー、フェイス・ノー・モア、ビースティ・ボーイズあたりの選曲はどストライクだった。
語りたいことは山ほどあるが、とりあえず愛すべきガーディアンズ達と一旦のお別れを名残惜しみつつ、改めてジェームズ・ガン監督の素晴らしい仕事ぶりに心震わせながら、次の機会を待ちたいと思う。
なお、これはあくまで一個人的な感想なんだが、先日鑑賞した劇場版TOKYO MER〜走る緊急救命室〜とは、ジャンルこそ大きく異なるが、本作で扱う救命、救助、脱出など、物語の構造に置けるシチュエーションには多くの共通点がある。
TOKYO MERには、映画としてそれなりの良さがあり、娯楽性としても成立しているとは思うので、作品そのものをとやかく言うつもりはない。
ただ、ハリウッドだから、とか、邦画だから、とか、資本的な問題がどうこうと言うことではなく、あくまで映画を作るという、撮影に置ける演出や技法的技術、ストーリーテリングに置ける脚本的構造及び展開など、日本映画の中でブロックバスター的娯楽大作を目指すのなら、作り手はジェームズ・ガンのような監督からそのセンスを学んで実践していくべきだと思う。
そもそも、ジェームズ・ガン自身もトロマ出身のB級映画を主体とする作り手だった。
予算が無いなら、それなりに話運びを考え、撮影方法を工夫し、セットに足りない部分を作る。
狭い場所での撮影なら、ワンカットで人物の動き回る臨場感を表現し、ビルが爆破出来ないなら、ミニチュアを作ってでも本物の爆破にこだわる。
まさに、日本映画の先人達も実践してきたことだし、むしろ低予算での映画制作は日本映画のオハコと言っても過言ではない。
あくまで一個人の感想。
日本映画も頑張ってほしい。