「後世に継ぐべきもの」MINAMATA ミナマタ odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
後世に継ぐべきもの
水俣病のことは知っていたつもりだが新たな視点で描かれたことで公害問題の根の深さと世界への広がりについて学べました。
日本人としては大きな汚点、蒸し返されることを快く思われない人たちがいることも理解できます。エンドクレジットにも出てきましたが2013年に当時の安倍首相が水俣病特措法による救済申請を国が一方的に打ち切り、「日本は水銀による被害を克服した」との発言が物議を起こしました。オリンピック招致時の福島原発事故の「汚染水をコントロールしている」と同じですね。チッソは政界工作にも余念がなかったようで政治献金筋を使って早期決着に圧力をかけていたようです。
水銀中毒では天平宝字元(757)年、奈良の大仏の金メッキに水銀を用いたことで多くの職人が死亡、闇に葬られた黒歴史があり因縁深い思いがします。
鑑みれば人命軽視のご都合主義は今もなおはびこっているのかもしれない怖さを禁じえません・・。
著名な写真家スミスさんがライフ誌に写真を送ったことで世界の関心を集め事態が好転したことは事実、日本人が外圧に弱いことを知ってのアイリーン・美緒子さんの企てとしたらすごいことです。「入浴する智子と母」の写真は著名ですが管理を託されたアイリーンさんは智子さんの死やご家族の要望もあり、その後長く封印されていましたが本作を機に解かれたそうです。
観ていて愉しめる映画ではありませんが後世に継ぐべきものとして偉業とも呼べる力作でした。エンドタイトルに流れる故坂本龍一さんのピアノも耳に残りました・・。