「ちょっとお行儀がよすぎたのでは?」MINAMATA ミナマタ トコマトマトさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっとお行儀がよすぎたのでは?
私は、映画の採点については、★4つ以上か、2つ以下でしか書かない。
つまり、2つ以下はお金を出していく必要はない。4つ以上はお金を出す価値はある、そして5つなら絶対見るべき作品…。
本作、日本人なら知っている水俣病にかかわる話を、全世界に50年の時をへて発信している、その価値は認める。
50年も前、米国人からすれば敗戦国が急になり上がり、公害を垂れ流し、産業優先できた日本の暗部をえぐり出してやれ、という「事実」が評者である私にマイナスに働いているわけ…ではない。
日本人ですら、意識の外にあるような歴史に今光を当てて作品化し、世界的大スターまで登場させたことは立派だし、意義はある。
しかし、映画作品として見た場合はどうだろうか。
全編が、日本では一切撮影されていない。
私は、映画について事前の知識は極力入れずに見るのだが、本作が実際に水俣ないしは熊本の空気を伝えるような部分がない、と感じた。ロケ地はどこだろ…と映画のエンドロールを注目して見ていたら、セビリアだ、と。
ふ~ん…。そりゃ、ダメだ。
監督やスタッフは日本にも行ったり、関係者の取材もしたんだろうけど、そこでカメラを回していない。日本人俳優を持ってきても、芝居をする場が異国では現地の匂い、空気が伝わってこないのだ。
水俣で起きた公害事件、それに対峙した被害者たち、その支援者などなど…。
当時の熱を伝えていない、と思う。
「きれいに描き過ぎ」
それが低い評価、つまりお金を出してまで見る作品ではない、ということ。
毎度おなじみ、東京・城東地区の映画見巧者の多いシネコンにて、土曜日の午後に鑑賞。そこそこ客は入っており(座席の半分ほど)、さすがジョニー・デップの威力とは感じた。
彼の芝居も悪くない。いいでしょう、それを見るだけでもこの作品を見る価値はあるとは思う。
それでも、気持を揺さぶられるような作品ではない。文献や教科書にあるようなことを映像化しただけという気がする。
ただ、これもわざわざ映画館に足を運んで初めて分かることなんだけどね。