「今のマスコミには絶対無理」MINAMATA ミナマタ Masuzohさんの映画レビュー(感想・評価)
今のマスコミには絶対無理
【公害(こうがい)】
経済合理性の追求を目的とした社会・経済活動によって
環境が破壊されることにより生じる社会的災害
高度成長期の日本において見過ごされてきた
地域住民に多大な後遺症をもたらした公害
水俣病(熊本)・第二水俣病(新潟)
イタイイタイ病(富山)・四日市ぜんそく(三重)
などは社会の授業でも習うほど今では広く
国民の知ることとなりました
それ以前からも田中正造が明治天皇に
直訴状を書いたことでも知られる
足尾鉱毒事件も知られています
この映画はとりわけ水俣病を扱い
NYのフォトジャーナル「LIFE」誌にてその
惨状を訴えたユージン・スミス氏のエピソード
を中心に取り扱われています
ポイントはそのユージンを演じた
ジョニー・デップ
彼自身の輝けるキャリアとはうらはらに
ヒット作に恵まれずやや落ち目との評価も
聞かれる昨今にあって
かつての名声も消えかかり酒におぼれて
いた当時のユージンに自分を重ねている
部分もあったと思います
そんなユージンはNYの仕事で知り合った
アイリーンに水俣の公害被害のひどさを
伝えられLIFE誌のデスクを説得し
取材に臨むことになります
面白いのはユージンだけでなく
かつてフォトジャーナルの元祖だったLIFE誌も
誌面の半分以上を占める広告収入だけでは
賄いきれなくなり刊行も危機的にな状況で
それでも社会に強く訴える事を最後まで
続けなければならないという使命感に
立ち返ってこうしたテーマに挑んだ部分
ネット社会になってだいぶ用済みになっても
情報弱者向けにテキトーな飛ばし記事書いて
カネを稼ぐ今のマスコミとはえらい違いです
どこまでが本当かはわかりませんが
チッソの病院に忍び込んで実験の証拠を見つける
チッソ側の買収や現像小屋の放火などフィクション
っぽい描写もいくつかあります
どうもロケはセルビアで行われたそうで
工場や病院のシーンは明らかに日本の雰囲気では
なくまあ映画的な見栄え重視と言ったところ
ネガを救い出して暴行を受けたユージンに
渡しに来た男はなんだったのか
葛藤しながら放火してネガを取り出していた
チッソの関係者だったのか
特に説明はありませんでしたが
色々裏設定はやってある感じでした
こうした作品を国内で作れないのは残念な
ところもありますが公害は今でも
シェールガス採掘による水質汚染とか
あちこちの国でまだ起こっています
隠蔽されてるだけで中国もいっくらでも
あるでしょうが環境問題と言うのは
もはや政治的に利用されているに
すぎなくなりました
この映画もエピローグにはなんかそんな
政治的な感じも受けましたが・・
まあこういう作品もたまには
いいと思います
ジョニー・デップはやっぱさすがの俳優ですが
こういう初老の役でイメージを変えていくのかな