「身勝手な大人たちの話。」そして、バトンは渡された ポーさんの映画レビュー(感想・評価)
身勝手な大人たちの話。
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結果から述べると、
身勝手な大人たちが、1人の女の子を苦しめ続けた話です。
ではなぜ感動的な話のようになっているのか。
それはこの話の構成がとてもうまいからです。
冒頭、小学生の女の子と、高校生の女の子、2人の話が並行して映し出されます。
そしてその二つの話の最後が、
森宮さんに出会った日と、卒業(別れ)の日という、印象的な二つの場面が重なるようにできています。
なので、二つの話が実は同じ女の子の過去と現在であるということと、出会いと別れの感動シーンが同じタイミングで起こるので、みんな涙が出るのです。
しかし、時系列に並べたら主人公の人生は身勝手な大人たち(特に梨花)に翻弄され続けています。
大人の都合で実の親と離れ離れになり、梨花の都合で苗字が何度も変わる。
最後も梨花は自分の死に際を見られたくないからと、勝手に姿を消し、死んでしまう。
それを大人たちのバトンと言い換えれば聞こえがいいし、家族の在り方を多様にしようとする昨今の流れに乗っかっているのかもしれません。
この映画を見て、家族の在り方は一つじゃないよね、などと思う人が増えないでほしいです。
本来あるべき姿と、そうでない姿をごちゃ混ぜにして多様性というべきではありません。
たしかに少数派の人たちを見捨てない社会ではあるべきですが、少数派が増えてしまっては、社会は予期せぬ方向へと進んでいくでしょう。
すごくずるいというか、上手くできている物語だなと、危うく出そうになった涙を引っ込めました。
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