「シン・仮面ライダーは闘う!」シン・仮面ライダー 近大さんの映画レビュー(感想・評価)
シン・仮面ライダーは闘う!
『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』に続く、庵野秀明による往年の特撮作品を現代リブートする“シン・シリーズ”。
その第3弾は…
迫る地獄の軍団から我らや世界の平和を守る為、
ジャンプ!キック!
仮面ライダー!
庵野が自らメガホンを取るのは『シン・ゴジラ』以来。『シン・ウルトラマン』は『シン・エヴァ』を手掛けていたからもあるが、庵野が自身で監督したかった理由も分かる気がする。
『仮面ライダー』は正義のヒーロー対悪の秘密組織の勧善懲悪ではあるが、その根底には、改造人間の苦悩や葛藤もある。やりようによって深いドラマにもなり、何だかそれが『ウルトラマン』より庵野の作風に通じる。
勿論、庵野のオタク心も加味した上で。
さて私は、ゴジラやウルトラマンはそれで育ったくらい好き。
では仮面ライダーはと言うと…、実はあんまり見ていない。
世代的には『BLACK』『RX』で(『RX』の主題歌は超カッコいいんだよね~!)、見てたのはそれくらい。
再放送とかで『V3』『アマゾン』『ストロンガー』などをちらちら程度。初代に至っては見た事ナシ。
U‐NEXTで初代ライダーが配信されており、去年この『シン』に向けて見始めたんだけど…、2号一文字が登場して藤岡初代カムバック前で止まり、最後まで見てない。何と言うか途中で飽きてしまい、つくづく私はゴジラやウルトラマン派なんだなぁ、と。スミマセン、ライダーファンの皆様…m(_ _)m
ちょっとかじった程度。でもその分、ゴジラやウルトラマンと違ってまっさらな状態で見る事が出来た。
Wikipediaによると、『仮面ライダー』の売りは“特撮ヒーロー×怪奇ドラマ”。ショッカーの改造により人間と生物を合成したグロテスクな怪人が登場。
でも実際見てみると、造形やメイクやスーツや特撮もアクションも結構チープ…。東宝や円谷プロより予算が少なかったであろう事は見て明らか。加えて、演出や脚本や演技などもお粗末な点多々。
ヒーローとしての魅力や面白味は充分だけど、クオリティー面でゴジラやウルトラマンよりハマれなかったのが、自分の正直な意見。
今回の『シン』もそこら辺が不安要素だったけど、ある意味そこが充分にも活かされていた。
現代リブート。だから現代感覚に合わせて、幾らでもシリアスにハードにダークに出来た筈。
今は何でもリアル志向。例えば、バットマンが『ダークナイト』になったように。
でも…もしも、クリストファー・ノーランが『仮面ライダー』を手掛けて、超リアルでシリアスなのを見たいか…?
『仮面ライダー』は(ゴジラもウルトラマンもだけど)、大前提は特撮番組。アナログ感やチープさの残り香があってこそ。
その辺、本作は絶妙。庵野ならではのシリアスさやダークさがある一方、オリジナルのようなチープさやCG感丸出しだけどアニメーションのような画作りもある。
ハリウッドのような全て本物に見えるリアルさとは違うのだ。日本の特撮は、特撮の醍醐味あってこその特撮なのだ。
無論オリジナルよりかは遥かにアップデート。
スピーディーな演出、カット割り、アングルもさることながら、小難しい用語や台詞が飛び交うお馴染みの庵野スタイル。
サイクロンやガジェット類もスマートに。
CGを使ってより改造人間バトルをユニークに表現したアクション。
やはり、ライダーキック炸裂やサイクロンに乗っての疾走は興奮。
伊福部ゴジラ、宮内ウルトラマンと同じく、菊池俊輔の音楽をアレンジバージョンや原曲のまま使用。BGMだけではなく、SEも所々使用。EDのメドレーは激アツ!
もうこれらは“シン・シリーズ”の定番と言っていい。
オリジナルは“○○男”の呼び名だったけど、今回は“○○オーグ”。
クモにコウモリにサソリにハチ…オリジナルの怪人たちが“シン・姿”で登場して、ファンには歓喜モノだろう。
勿論オマージュシーンも。私が分かったのは、対クモオーグ。ダムでの闘いは第1話と同じ。再現したシーンもあった。
かじった程度の私以上に、詳しい方ならもっともっと…いや、全てが見所だろう。『仮面ライダー』に浅いのがちと悔しかった。
尚このオーグたち、公表されてる西野七瀬や手塚とおる以外にもシークレットで超豪華な面々が演じ声も当てており、これは是非ご自身の目で!
やはり大きく様変わりしたのは、作風やドラマ面。
明朗なヒーロー活劇だったオリジナルとは違い、先述した通り改造人間となった故の苦悩、葛藤。
開幕シーン。ショッカー基地から逃走。追う戦闘員と闘う。
その際、超人並みの力で相手を瞬殺。たった一発で相手の顔や身体を潰す。
パワー強化された改造人間なのだからそれくらい出来て当然ではあるが、オリジナルでは描かれなかったバイオレンス血描写は衝撃的…!
自らの力に戦慄する本郷。この力は悪の組織による恐ろしい産物なのか…? それとも…?
自分が緑川博士によってショッカーと対する為に改造された事を知る。
この力は闘う為、守る為。
しかしそれでも本郷は苦悩する。
何故自分が闘うのか…? 何の為に闘うのか…?
闘うのは一人じゃない。取っ付き難いが、常に寄り添い、サポートしてくれる人がいる。緑川博士が息を引き取る前、託された。娘を守ってくれ、と。
闘うべき理由、守る相手。
共に立ち向かいながら、答えを見出だしていく。
池松壮亮の本郷猛は賛否分かれるだろう。
やはり本郷猛と言ったら、藤岡弘、が演じた真っ直ぐな正義感と熱血漢。
“シンジくんタイプ”の本郷なんて本郷じゃない。私も本郷を池松が演じると聞いた時、驚いたもんだ。
しかし主人公像も庵野カラーになった時、熱血漢じゃ合わない。
庵野が常に描くのは、悩み苦しみながら闘いに身を投じ、己の宿命を切り開いていく若者。
複雑な内面で、優し過ぎる新たな本郷を、池松が体現。
その分、周りが彩る。
真面目な本郷に対し、ラフな一文字。この性格付けはオリジナル通り。
当初は敵同士。同じ能力を持ったライダーバトルは見もの。
やがて共に闘う。相棒であり同志であり、友。
そして1号から2号へ。“継承”の物語でもある。
柄本佑が助力。
対するラスボスは、チョウオーグ。正体はルリ子の兄、イチロー。彼もまた改造強化され、変身。仮面ライダー0号。何だか『BLACK』『RX』のシャドームーンを彷彿させた。森山未來が怪演。
竹野内豊と斎藤工が意味深な“○○関係者”役であちらからマルチバース出演!?…と思いきや、そこそこ話に絡み、最後に名前が判明。そう来たか~!
キャストのVIPは浜辺美波だろう。
いつものキュート系じゃなく、クールで出来る“用意周到な女”。
終始彼女の魅力にメロメロ。だから(ネタバレだけど)途中退場した時はがっかり!
だけど、あのビデオメッセージにはまたヤられた。
庵野も狙って撮ったのであろう。彼女のPVと言って過言ナシ。
それは冗談だとしても、彼女こそ真の主役なのは間違いない。
『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』の例を挙げるまでもなく、賛否両論は必至。
本郷もルリ子もまるで別人。
ショッカーも違う。戦闘員は「イー!」と言わないし、死神博士や地獄大使も出ない。
何より作風。こんな暗い『仮面ライダー』なんて見たくない!
…でも、昔のまんまやったって意味はない。
今新たに『仮面ライダー』を“改造”する。何が出来るか、何を描けるか、何を伝えられるか。
賛否の声が出るのは仕方ない。人それぞれの仮面ライダー像があるからだ。
明朗なヒーローとしての仮面ライダーも仮面ライダー。庵野が描く複雑な仮面ライダーも仮面ライダー。
一つのヒーロー/キャラ像から様々な受け止め方があるという事は、それほど魅力に満ちた存在。
庵野は自分の色を出しつつも、娯楽やヒーロー活劇、ファンなら喜ばずにはいられないネタを織り込み、“用意周到”。
仮面ライダーは世界の平和を守る為、人間の自由の為、闘う。
シン・仮面ライダーもそれらと我々の興奮と感動の為、マスクの中に思いを秘め、風を受け、闘う!
キャスト4人による2日間で全国の映画館を回る行脚。
我が福島には、柄本佑が。北海道から南下し、再び東京で合流するというハードスケジュールの中、貴重な話を聞かせて頂きありがとうございました。ご苦労様でした。
トーク終わって、記念撮影。
私は真ん中の通路席に座っており、ちょうどそこに佑氏が!
距離的に2mくらいの至近距離で、ワォ!
ひょっとしたら写真を上げた公式Twitterに写ってるかも?…と思ったら、前の席の人の手に被ってギリ写ってなかった。
ちょっと恥ずかしかったもんね…(^^;
浜辺美波の役所が、マンマ出世作の「君膵」オマージュみたいなのが笑えましたね。
主人公の本郷猛がコミ障設定なのも頷けます…..
あとNHKでやった、制作時同行取材のドキュメンタリーも、庵野氏と出演陣や制作スタッフとの関係性ややり取り等なんかも中々面白かった(?)ですし、楽しませて貰いました。
いつも共感ありがとうございます。
レビュー読ませてもらってRXのオープニングYouTubeで久しぶりに見たんですがやはり完成度高いですね!
BLACKの方は全然ですけど(笑)
またよろしくお願いします!