「ルリ子以外、あまり抗わない。」シン・仮面ライダー ハラタカさんの映画レビュー(感想・評価)
ルリ子以外、あまり抗わない。
本郷猛の結末とその後の一文字隼人が駆るバイクでの語らい。原作に近いクライマックスなのですが、そこに至る過程は、緑川父子と秘密結社が生み出したオーグメントらの物語であり、それぞれの幸福追求の話と言えばいいのでしょうか。全体的な話の流れは興味深く観ていられました。
まず、これまでの「シン・」シリーズでは、使徒や〇〇インパクト、巨大不明生物や禍威獣という、市井の人々を物理的に脅かすものとの戦いともいえますが、それらの作品で描かれた市井の人々の日常が、今回は(洗脳された街の人以外)出て来ない。今回は、絶望的な境遇からAIによって選ばれた個人が、それぞれの価値観や理論に基づき追求する幸福によって自由や権利を奪われる主人公を含む多くの人々のため、主人公は突然与えられた力に苦悩しながら、自身と最大多数人々の幸福のために戦うという点で、他の3作と大きく異なるものと理解して、鑑賞していました。
また、この作品が改造人間ライダーではなく「仮面」ライダーであることも、変身によって変化した顔を隠すだけではなく、主人公の仮面に与えられた役割も含め、大いに意味を持たせた脚本になっていたという見方もあります。
緑川ルリ子にこういう役割を与えることも、立花、滝の立場(途中から、もしやと思ってはいましたが)も、面白かったです。
ただ、Kの役割はロボット刑事に負わすことはなかったかな。あと、緑川兄は改心が早すぎではなかったかな。
緑川兄は強敵だったのでしょうが、SHOCKERは残っています。「死神組」にも言及されていたし、三種合成なんてまさにゲル〜なので、次作を作る場合もネタは豊富なはずです。
映像面では、血飛沫が飛び散る仮面ライダーの強さ、ライダーのキックを受け身体が折り曲がりながら壁に叩き付けられる怪人。まさに「これが見たかった」の序盤から、伏せられていた数々の見たことある登場人物とか、見たことある場所にニヤニヤ。原作やテレビ版、「シン・」シリーズを一通り通過した人は、色々な気づきがあるでしょう。
ただ、VFXは粗が目立つ場面も多いし、大量発生型とのバトルは画が暗くて見えない(IMAXど真ん中での観劇なので、条件が悪いとは言わせない)。音楽も他の「シン・」シリーズより合ってなさを感じるなど、物足りない点もあります。
個人的には、ライダーの見た目の好みが「旧1号>旧2号>新1号・新2号」だったのですが、旧2号、新1号の良さも、改めて認識できたことが最も嬉しかったです。