「【ボレロ/愛と哀しみのボレロ】」クレッシェンド 音楽の架け橋 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【ボレロ/愛と哀しみのボレロ】
なんだろう。
この映画の物語は実在のオーケストラをモデルにしているとのことだが、まあ、フィクションだし、物語だから、こういう構成なんだろうなと納得する反面、それだったら、その継続してるオーケストラの活動をドキュメンタリーでも観てみたいなと考えたりもする複雑な心境だ。
また、是非知ってほしいのは、現在、イスラエルやパレスチナの若者のなかには、融和をお互い求める動きが少しずつだが出ていることだ。
映画にも描かれているように融和を邪魔するような連中もいるが、若者がずっと争っているだけではないのだ。
(以下ネタバレ)
この作品の後半は、演奏する楽曲とストーリーがマッチするような演出になっている。
どこか噛み合わない「カノン」。
皆が冷静になり始めた時には、ドヴォルザークの交響曲第九「新世界より」の第二楽章。
日本では、キャンプファイヤーの時にお馴染みの曲だ。ショッピングモールの閉店近くにかかることもあるような気がする。
そして、不穏な未来を予感させるヴィバルディの「四季」の「冬」。
この後、悲劇が起こる。
ヴィバルディの「四季」では、冬の後には、また季節が巡り春が来るということだったように思うが、ここでは不穏な感じだけが残る。
そして、空港で演奏されるラヴェルの「ボレロ」。
僕は、このイスラエルとパレスチナの若者のガラスで隔てられた空港での「ボレロ」の演奏は、映画「愛と悲しみのボレロ」へのオマージュなのだと思った。
実は、この作品の意図はここにあるのではないかと思ったりもする。
映画「愛と悲しみのボレロ」は、ナチス・ドイツによるユダヤ人への迫害や虐殺などが背景にある物語だ。
スポルクが、自分の両親が収容所の医師として虐殺に関与していたことを独白するが、親がそうした戦争犯罪を犯したことによって苦悩する子供も多くいるのだ。
欧州で長く続いたユダヤ人の迫害、ナチスのユダヤ人の虐殺、イスラエル建国、パレスチナ人への迫害、続くパレスチナ人とイスラエル国民の争い。
まあ、よく考えてみると、オーケストラ云々ばかりして、近視眼的になっていた自分に気が付きもする。
でも、やっぱり、実在のオーケストラのことがもっと知りたくなった。