劇場公開日 2021年8月20日

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「良いんだけど、何かが足りない。惜しいなぁ。」うみべの女の子 バリカタさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5良いんだけど、何かが足りない。惜しいなぁ。

2021年8月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

大好きな浅野先生原作。でもって、大注目で好きな女優・石川さん主演の本作。観たくてたまらなかったんです。武蔵野館さんの先行プレミア上映チケットを運良くGETし鑑賞。あぁ、神様チケットありがとうございます。

原作はすごく前に読んだので、ストーリーあまり覚えていないのです。でも、せっかくなので読み直しせずに鑑賞しました。その方がいいかなって。

まず、演者さんよかったなぁ。特筆はやはり主演の青木さん、石川さん、素晴らしかった。それと、中田青渚さん。映画「街の上で」で注目してましたが本作も良かったです。演技の幅がとても大きい女優さんですね。

上映後の舞台挨拶で監督がおっしゃってましたが、二人ともすごい集中力で現場に臨んでいたそうです。同年代が多い現場は和気あいあいで仲良しな雰囲気になることも多いそうですが、そうはならなかったとのこと。うん、確かに二人の役所を見ているとそりゃそーだとなぁって思います。とにかく感情がぶつかり合います。お互いで、自分自身で、静と動入り乱れて。これは演じる側はかなり消耗したんじゃないかな?って思います。良くも悪くも、この作品は主演2人の力量で成り立ったのかな?って思いました。二人から心の揺れがこれでもかと伝わってきました。特に石川さん・・・映画「猿楽町で〜」でも同様に感じましたが、とんでもない表情を出せる女優さんですね。どれだけの表情を持っているんだろう。彼女の表情を見ているだけでこちらの感情が乱されます。青木さんも然りです。青木さん演じる磯辺は中身は同じなんですが全編通してキャラが違うんじゃ?と思うような変化(しているような)します。それを見事に演じていたと思います。磯辺と小梅がしっかりと映画の中で息づいているからこそ、本作は良い作品になったのだと思いました。

ただ、残念も点がありました。原作通りかどうか?はわかりませんが、僕が感じる浅野先生の作品特有の空気感がなくなっているなぁって思ったのです。それは「間」だと思うのです。無言の一コマが雄弁に語る、心情を表すという表現があったと思うのですね。あくまで主観です。ですが、本作品は、多分原作通りのセリフを使っているのだと思いますが、補填する描写が少ないために「セリフ通り」の心情しか伝わってこないのですね。それはそれで正解なのかもしれませんが、やはり足りないなぁって思っちゃうのです。特にオープニングの磯辺と小梅のやりとりのあたりは「何がどうしてそうなった?」が連続で襲ってきます。そして二人の関係の展開についても同じことが言えます。セリフやエピソード、描写は原作通りなのかもしれませんが、そこに至った二人の心情については、表現が足りない気がします。
それが故に高校生になった小梅が彼氏に言葉を放つシーン(このシーンは浅野先生が絶賛してました)のセリフの背景もよく見えないのです。ただ、性経験豊富な女子から童貞男子への一言にしか見えないのです。 「違うでしょー?」と思うのです、そんな軽く見える場面じゃないでしょ?と。

大好きが勢揃いで評点を5点にしたいところですが、ちょっと甘めにこの評点です。主演に力量がなければ、非常に凡庸な作品になってしまったのではないか?と思います。
ですが、若手俳優の魂がこもった演技はぜひ見ていただきたいと思います。切に。

余談ですが、浅野先生のファンの方は小梅の部屋着、部屋内は要チェックです。

バリカタ