最後にして最初の人類のレビュー・感想・評価
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想像力全開で立ち向かう。
カッコいいポスターに釣られて見てしまった。
監督兼作曲家なので70分の壮大なMVと見ることもできる。曲は素晴らしく爆音の没入感はかなり気持ち良い。
そう言えば曲というか言葉というか気に入って「メッセージ」はサントラ買ってた。本作が遺作になってしまったのは残念。
絵はユーゴの自然のなかに取り残された巨大なモニュメントや建造物、彫刻を色んなアングルで舐めるように撮っている。 それが時として理解を超えた生物に見えたり、巨大なエイリアンの宇宙船や、2001年のモノリスのように何かを語ってる感じがする。汚れたディテールさえ遥か彼方からものすごい時間をかけて我々に届けられるメッセージにみえる。
ティルダ様は遥か未来の人間(かなり種類がわかれ、形も今の人間とは違うらしい)で我々に警鐘を鳴らす。
しかしその「滅び」はどうやら避ける事は出来ないようだ。
印象として2001年や、タルコフスキー観てる感じ。
ちょっとウトウトしながらも想像力全開にすると極上のトリップが味わえる一品。
二十億年後から届くレクイエム
深淵から湧き上がってくるようなヨハン・ヨハンソンの音楽と魂に響いてくるティルダ・スウィントンのナレーション。開始5分もしないうちにα波が出始め、気がつくとθ波が出ていたようで意識は20億年後のモニュメントを彷徨っていた。
20億年後という途方もない未来まで、人類が生き延びているならば、戦争という厄災は克服したのであろう。最後の人類からのメッセージにもかかわらず、究極に意識が弛緩してしまう心地よさ。
ほめてるんですよ。こんなに心が澄み切ったのはいつ以来だろう。
【考察: 隠されたメッセージ】
この作品は、音楽と、映像と、朗読を組み合わせた、ある意味で、究極の総合芸術を目指したのではないかと思わせる。
映画はもともと総合芸術と呼ばれていたように思うけれども、その定義は曖昧だ。
なんか、この映画は素晴らしいです!皆さん、見てくださいと説得力を持ったレビューになってるとは到底思えない気がする。ごめんなさい。
ヨハン・ヨハンソンは、アコースティックとエレクトロニカ(電子楽器)を融合させたポスト・クラシカルの牽引者と言われた人だ。
坂本龍一さんが、この映画のフライヤーに哀悼の寄稿を寄せたように、多くの人から尊敬を集めていた。
この映画では、バックグランドに人の歌声が合わさったり、更に、風や水滴の自然音が奏でられ、坂本龍一さんにも通じるところがあるように感じたりする。
ヨハン・ヨハンソンは、SF「あなたの人生の物語」を原作にした映画「メッセージ」のサウンドトラックも手がけており、この作品の制作について知った時は、SF繋がりなのかと考えたりしたが、原作「最後にして最初の人類」で、海王星に移り住んだ人類が、音楽こそが宇宙の真理だとして、更なる覚醒を目指す場面を思い返して、これこそが、この原作を映像化しようとした動機なのだと思うようになっていた。
しかし、この映画「最後にして最初の人類」を観て、この映画に語られないところに、実は、大きなヒントがあるのではないかと考えるようになった。
この原作は、1930年にイギリスの作家ステープルドンによって発表されたものだ。
かなり乱暴な概略で恐縮だが、
ヨーロッパで大きな戦争が起こり、アメリカが介入、アメリカがヨーロッパを支配するようになるが、同時にアジアで中国が台頭し、アメリカと争うようになる。最終的にアメリカが勝利を収め、世界政府が樹立される。
しかし、人間の愚かさは残り、新しく発見された(原子力のような)エネルギーの過度な使用で、地球の汚染が急激に進み、人口が急減し、なかには類人猿まで退化してしまうものも現れてしまう。
その後、知的な人類が繁栄を取り戻すが、今度は火星人が襲来、人類はこれを退けるが、人類は火星人の特徴を備えた新たな人類を創造し……と、
1930年発表の原作は、その後の第二次世界大戦や、原子力エネルギーの発見、遺伝子操作技術の確立などを思わせるところがあり、マニアの間では、一時、これはSFではなく、予言の書だと騒ぎ立てるものが出るほどだった。
物語の中の対応する年月を正確に思い出すことは出来ないが、この後、人類は居住に適さなくなった地球を捨て、金星に移住し、更に、太陽活動の変化のために、海王星に移住せざるを得なくなったらというストーリー展開だったと思う。
冒頭で少し触れた、音楽こそが宇宙の真理という話は、海王星に移住した人類が考え始めるものだ。
このように、この原作は、SFや予言の書というより、壮大な寓話だと言った方がしっくりする気もする。
ステープルドンは、神話だと語っていたという記録もあるようだが、壮大という点では、その通りかもしれないと思ったりもする。
この映画「最後にして最初の人類」は、20億年後の未来の人類から、現代の人類にメッセージが届くという形になっている。
しかし、何をどうしろという具体的なものはない。
実は、ヨハン・ヨハンソンは、この原作を世の中の人にもう一度読ませたいか、今、人類として対応すべき問題を想像して欲しいと考えたのではないかと思っている。
米中の対立は現在の大きな問題だ。
確かに、その前には米ソの冷戦があり、今の米中の対立は、ステープルドンが考えたような人種の対立ではなく、どちらかと言うとイデオロギーに人種の感情が混じった対立かもしれない。
しかし、この対立によるリスクは計り知れない。
原子力エネルギーの危険性は、広島と長崎に落とされた原爆、ビキニ諸島の水爆実験、チェルノブイリと福島の原発事故で明らかだし、遺伝子操作も人間の倫理観を損なうリスクを孕んでいる。
そして、環境汚染は待ったなしの状態だ。
決して正確ではないにしろ、ステープルドンというひとりの人間が、90年も前に、想像力を広げることによって、こうした人類のエゴも含めたリスクを物語として残すことが出来たのだ。
宇宙の摂理として、人類の存続に決定的な打撃となる太陽活動の衰退を防ぐことは不可能だろう。
しかし、その他の人類に由来する最悪な事態を想定して、これを回避する行動を取ることは可能ではないのか。
映像に映し出されるスポメニックは象徴的だ。
ユーゴスラビアは、第一次大戦後に、ウッドゥロー・ウィルソンの唱えた民族自決を背景に誕生したが、複数の民族をベースにした連合国は拡大し、ドイツの侵攻を経験した第二次世界大戦の後は、モデル社会主義国として、チトーの指導の下で世界的に注目された時期もあった。
しかし、その後は、経済的に疲弊し、ソ連崩壊後は、分裂、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、スレブニツァの虐殺と呼ばれる、8000人もの大量虐殺が起こり、複数の民族の連合が虚飾に満ちたものだったことが明らかになった。
(※ スプレニツァの虐殺は、「アイダよ、何処へ」として映画化されています。)
何をユーゴスラビアは間違ったのか。
何を社会主義は間違ったのか。
何を世界は間違ったのか。
20億年後の僕達と姿形の全く異なる人類からメッセージをもらうまでもなく、逆説的に、僕達は想像して行動できるはずだと、ヨハン・ヨハンソンは、伝えたかったのではないのか。
想像力を働かせるまでもなく、解決すべき課題はすでに提示されているとも思う。
しかし、唯一、想像力を与えられた生物として、何を成すべきか、考え続けることは決して無駄なことではないと信じたい。
想像力を働かせて生きなさいというのが、この映画の隠されたメッセージのように今は思う。
スポメニックの導入剤として
モノクロのざらついた画面に映し出される、巨大な、奇妙な構造物。アブストラクトな音楽。落ち着いた声の朗読。言ってみれば、この映画にはそれしかない。
巨大建造物は大好きだが、不勉強なことに、映画を見るまで「スポメニック」と呼ばれる旧ユーゴスラビアのこれらの建造物については知らなかった。これを知れただけでも見る価値はあった。残念ながらわたしにとってはそれ以上でも以下でもない。
2021年最大の"怪"作?「映画版」五種競技?でも、見る価値は…あり。
今年86本目(合計150本目)。
同じ題名の小説(1930年)が元にあり、それを下敷きにした作品のようです。
ただ、それだとSFものになってしまうため、チトー政権において、ユーゴスラビア内に、第二次世界大戦の俗にいう枢軸国による占領や、チトー率いる人民解放軍の活躍をたたえて作られたもの(1970~1980)が、映画内に出てくる巨大建築物です(ただし、映画内ではこれらの説明は一切ない)。
内容がかなり特殊で、女性が延々と話している以外、人は一切出てきません(よって、最後の著作権表示も、音楽作者や編成責任者などで「○○役 ××」というような表記は一切出てこない)。元の小説をそのまま要約するような形だと、著作権上の問題もありますし、そもそも「終わらない」ので(70分どころか、700分あっても無理)、1930年の小説を下敷きにしながら、1970~80年の巨大建築物も絡めて、ストーリーの一節(良いところ取り、という感じ?)を作っているような感じです。
ただ、ここ(や、似たような映画評価サイト)で情報を得ているなら「そういう映画なんだな」ということで問題は起きないと思いますが、そうでない場合、「これ何ですか?」という点はやっぱり否めません。
配給はシンカさんで、最近だと「ラブ・セカンド・サイト」もこの会社の映画ですが、かなり毛色が違います。そういう事情があるため、ツイッターの公式アカウント上で、この小説(なお、日本では2004年に原作の日本語訳が発売されるも、現在では絶版。kindleなどでも無理)の序説が、許可を得て公開されています(期間限定/詳細はシンカさんの公式ツイッターアカウント)。
上記の事情により、天文(特に、太陽系)に関する知識は前提であるものの、チトー政権やユーゴスラビア政権などの知識は不要な一方、逆に哲学的な事項(人とは何か、精神とは何か、考えるとは何か…)、生物に関することなどなど、分野違いのことを次々問うてくるので(上記のように70分で、誰かが回答してくれるというわけではない)、ある種「映画版五種競技」みたいな状況になっていて、相当な知識がないと、建築物よかったなぁ…で終わりかねない感じです。
個人的には、まぁ確かに「異質な映画」だとは思うけど、こういう映画を見ることそれ自体にも教養は広まるので(理系・文系を問わない知識の向上)、特に低評価にしませんでした。
なお、1人がずっと話しかけるという性質上、「映画の英語がどこまで聞き取れるのか」という「リスニングテスト」にも使えるんじゃないかな…とさえも思います(まぁ、目的外使用だとは思いますが…。準1くらいあればいけます)。
採点は下記の0.3のみで、4.5までとしました。
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(減点0.3) この映画、2020~2021年にしては珍しいモノクロです(厳密にはモノクロではなく、「ある色」がテーマで出るが、実質的にはモノクロと言える)。そして、「登場人物が誰もいない」「複数の分野に精通していないと理解が難しい」、さらに「前提となる小説は日本では購入すらもできない」という状況であるのなら、公式サイトももう少し、どういう映画か、説明ないし、無料公開分で見せるべきだったのかな…とは思います。
(※) ここや、他の評価サイトを参考にいく分は、何の問題もないが、誰もがこういうサイトを参考にするわけではないので。
(減点なし/保留/判断不明) この映画において「海王星」という語が「最後の希望」という形で出ます。「現在では」太陽系の最も内側にある惑星は海王星です。
しかし、この映画の原作となった小説は1930年発売で、実は冥王星の発見も1930年です(実は、同じ年)。
ただ、冥王星は人が済むには明らかに適さない小さい惑星(当時。今は準惑星に格下げされている)であることは発見当時から知られていたので、あえて無視したのか、作品のほうが早くて冥王星が頭の中になかったのか、知識があると余計に混乱するなぁ…と思えました。
70分、己の限界が試される作品
写真家の瀧本幹也氏が「コヤニスカッツィを思い出した」と仰っていましたが、コヤニス~の方が圧倒的に観やすいです。まだ人の営みの風景もあるし、場面も動くので。
20億年先の未来人から現代人にテレパシーで警鐘を鳴らす、という内容。
20億年先の未来人、なんで英語使ってんすかっていう私みたいなリアリストは、この映画には合いません。Don't think!Feel、です。
この未来人の役をティルダ・スウィントンが演じているのですが、実体がない(白目)。
マジでこの映画、人っ子ひとり出てきません。
じゃあ何が出てるかと言うと、巨大なモニュメントの映像のみ。
ラストで若干山とか建物っぽい景色とか出てきますが…。
このモニュメント、遺跡かと思ったら旧ユーゴの戦争記念碑らしいです。『スポメニック』。
それがクローズアップされてるということは、さて20億年後はどんな未来が待っているんだろうか…といったところでしょうか。
他の方も「意識飛ばした」と書かれてらっしゃるのと同じく、私も途中で意識飛ばしました。
基本的に起承転結があって無いようなもんです。
それに、ティルダ演じる未来人はよく『人類』とか『太陽系』とか壮大な単位で物事を語るので、今晩の飯は何にしようとか、明日の仕事めんどくせえとか考えてる私のような卑小な人間に、この映画は合いませんでした(2度目)。
ただ、もしこれがオーケストラを従えた生朗読であれば(元々はこの形式だったと映画.com速報さんが書いてる)、ティルダとオケのビジュアルも楽しめるので、そっちの方が面白かった気がするんですよね。激重い内容からの逃避という観点で。
監督ご逝去後の映像スタッフさんの計り知れないご苦労には申し訳ないですが、70分間、延々とモニュメントの映像を拝見してるのはちょっとしんどかったです。
モノトーン、緑の波形、哲学的な詩の朗読
荒々しい映像に力強い白黒の構造物
超みらいからのメッセージ
質が高くて良く響く音楽
暗闇、ノイズ
緑の波形
霞
風景
赤の球体
認識できない物体の数々
イマジネーション
…最後にして最初の人類
以上…いや意識を失ったところもあるので…
未来からの遺言、手塚治虫の無機物世界観にどっぷり浸かれる禁断の体験。
久しぶりの映画酔いを経験した。
手塚治虫の火の鳥にたびたび展開される、人類の滅亡した世界の様子を最初から最後まで見せられたようだった。
ナレーションは人類に語られているのだが、その人類がどこにいるのかが、映画の中では全くわからない。
何しろ、人の姿はこの映画に現れないのだから。。。
宇宙に漂う受け取り人のいない電気信号。
暗闇の海原に漂流する手紙の入った瓶はこんな気持ちなのだろうか。
無機物の気持ちになれる稀有な映画体験だった。
前衛芸術的
残念ながら時々意識を失ってしまった。最後の人類を救うための現人類へのメッセージが最後まで分からず、決定的なナレーションを聴き逃していたかもと思ったが、Som Tamさんの解説(感謝)を読む限りそうでもないようだ。
2001年宇宙の旅は好きでそれに通じる深淵さは感じた。娯楽作ではないことを理解して(体調のよいときに)鑑賞すればかつてない経験が得られるかも。宇宙的なタイムスケールに合わせて気を長く持って。
荒涼とした自然の中のモニュメント”スポメニック”
見上げるような威容。しかし打ち捨てられた遺跡にしか見えない。
人類が宇宙に残した爪痕をイメージするにはちょうど良いか。
今となっては良く分からないが”何か有ったんだろう”という感じ。
まだ50年もたたないモニュメントに137億年の夢をこめられるのは人間的な営み。
「メッセージ」で初めて知ったヨハン・ヨハンソン。印象的で気になってたのに…。
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朗読は誰だろうと考えながら見てた。
田口トモロウで覚醒するか、
新垣結衣で眠りにつくか。
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