最後にして最初の人類のレビュー・感想・評価
全24件中、1~20件目を表示
芸術的な作品
自然の中に人工的な建造物が、白黒で延々と流され、
荘厳で運命的な音楽と無機的なナレーションで
ストーリーらしきものを展開していく。
未来の進化した人間から
現在の我々に向けて助けを求めているが
何をどうしたら良いのか
語られないままだった。
でも、それは語られない方が良いのだろう
下手に語ると説教くさくなりかねないし
その成否をめぐり、嘘くささも出てきそうだ。
その方法は、各々が考え思い巡らすと良いのだろう
非常に見る人を選ぶ作品
宇宙の成り立ちや、時間の概念などのSFに
または、建築やクラシック音楽などの芸術に
興味のある人なら、きっとお気に召すだろう。
終末博物館で流れている映像資料
人類終末後に発生した文明が過去の文明を記録した貴重な映像を手に入れたという妄想をしながらこの映画を見てみるとすごく面白いですよ。人類とは結局どんな存在で、どう生まれてどう滅びたのかを星の一生と重ねるところも凄く美しいですし、終末後の博物館でひっそりとこの映画が流れていて欲しいです。
シンメトリー
映画.comの配信で見てみた。スマホなので画面は小さいが、見られただけで良かった。
ヨハン・ヨハンソン、アイスランド出身の音楽家。メロディアスというより、重低音のロングトーンのイメージ。石の建造物をひたすら撮る。白黒で攻めた構図には、緊張感がある。なんだか、写真展にナレーションとBGMが付いた趣き。これは眠くなりますな。でも、とにかく美しかった。左右対称の構図がけっこう多く、下手したらやりすぎになるが、やはり堂々として見える。
映像をただボーっと見ていたら、「コヤニスカッティ」を思い出した。あまりにも昔に見たので、ところどころしか覚えていないけど、自然や建造物をひたすら映しているところが似ている。「コヤニスカッティ」も音楽が独特だったんだよなぁ。
語られる内容は、原作があるそうだが、テッド・チャンの作品からもインスパイアされてるような気がする。「あなたの人生の物語」、「バビロンの塔」が混ざったような。一応、図書館に原作があったので借りてみたが、読み切る自信は全くない(笑)。
ヨハンの息子ヨハン(アイスランドには苗字がないので、父の名に息子の意味のソンを付ける)、なんで死んじゃったんだろうね。もったいない。まだまだ働ける年なのに。残念。
スポメニックは異彩を放つ
SF…それも広大な宇宙と人類…の話という「2001年宇宙の旅」みたいな映画?という ほとんど前知識無しで、夫と観に行った。
最初現れた画像に「え?モノリス?!」と思いきや、それは空に浮かぶ 何か不思議な物体のようで、20億年先の人類が過去の我々に語りかけている…という設定と解るが、次々に映し出されるオブジェ?モニュメント?が何を表しているのか?解らぬまま、壮大な音楽と最後の人類からのメッセージが語られて行く…早くも、あれ?これは もしかして人間が一人も出て来ない映画?なんだ!そういう系?
そして…画像はほぼ全編モノクロ。いつかカラーになるだろうと期待したが、途中に太陽の赤と 謎の緑の「点」のみ。
20億年後の遥か彼方(海王星)から送られて来たというメッセージは何度か「私たちを助けて欲しい」と語るが、人類に何を どうしろと言うのか?人類が 太陽の異変から逃れて海王星に辿り着いた…というのだから…今の人類には 宇宙をコントロールするような知恵も力も無いよ~!としか言えない!
ずっと この建造物が この地球上の何処かに既存するものなのか?はたまた この映画の為に造られたものなのか?そればかり気になっていた…
面白い建造物ではあった。最初こそ物珍しく魅了されたが、そのうち、同じような場面が続いて…寝落ち…しそうになって、隣を見たら寝てた!ツツいて起こした!見終わって、起こして悪かった(笑)と思ったが、この映画を語る為に起こして良かったとも思った(笑)
私は…映像を今の地球だと捉えていたが、夫は海王星の風景と見ていたようだ。そして…意味深な緑の点は…私は宇宙から見た
海王星(太陽の影響で月のように陰の部分が有って楕円形に見える)なのかな?と。夫は宇宙からのメッセージの信号(前時代的😅)だと捉えたようだ。
70分が非常に長く感じられた。いつか 感情を揺さぶられ、悠久の時の彼方に心身が持って行かれるのを期待したが、驚く程に何も得られなかった。
ただ…壮大な音楽と不思議な建造物のコラボ。これを…なんと言う?
芸術映画?
帰ってレビューを覗いて見たら、「寝れる」「眠い」などの感想多し(笑)私も映画館でなければ寝てるか、途中下車してた💦
そして、あの建物が現実にユーゴスラビアに有る戦争記念碑(スポメニックというらしい)だと知った!
そして、この物語にはかなり昔の原作が有るのを知った。そして…その物語の方がもっと複雑で面白そうだった。
そして、この音楽家がこの音楽とSF小説をコラボさせて創り出した映画だったと知る。
スポメニックという建造物を初めて見たら本当に宇宙から来たもののように感じられるかもしれない!この建造物を見た音楽家が、その畏敬?とも畏怖とも思える造形に触発されて音楽と造形を融合させたかったのかな?
そもそも、スポメニックがどういう経緯で、誰が創り出したのかの方が、私は非常に興味が有る!かつてはユーゴスラビアに数百のモニュメントが有ったらしい…
いっその事、真正面からスポメニック自体に焦点を当てて時代や人々を壮大な音楽と共に描いていたらもっと面白い映画だったのではないだろうか?SFなど 絡めずに。
単に私の鑑賞能力が劣っているからかもしれない…だけど、残念ながら、オススメ出来ない映画だった。
しかしスポメニックの異様さは観る価値あるのかもしれない。
正直環境映像として素晴らしい
音楽が流れていて、そこに映像とナレーションがついている。ナレーションはきちんと意味ある内容なのだが、音楽と映像のせいで途中から頭が朦朧としてきた。でも心地よい朦朧だった。
休日とか家でテレビでつけっぱなしとかにしておいてもいい。
呉四
見終わった後、妙に頭がクリアになったのは多分上映中寝たからだと思うけど、普段寝る前とかにヨハンソンの音楽を聴いてる勢からするとヨハンソンのスコアを堪能できただけでもまあ良い時間だった。
特に目新しい曲はなかったけど。
ただやはり、あまりにNHK FM青春アドベンチャー過ぎて、映画としての体はほぼ成してないと思う。
それこそヴィルヌーヴ監督とかが映像化したら面白そうな題材ではあるけど。
てかヨハンソンって亡くなってたのね、ついに異界からオファーが来たかという感じ。
不謹慎ですみません。
ヨハンソンの音楽、映像、ナレーション シンプルだが 壮大な異空間を...
ヨハンソンの音楽、映像、ナレーション
シンプルだが 壮大な異空間を体験できる芸術的映画
。
見終わった後 20億年の時を駆け巡ったような感覚がした
20億年後の人類からのメッセージ。
20億年後の人類から、現代の人類へメッセージが送られている。
太陽と何かの光が衝突し、太陽が爆発を起こし、地球に住めなくなったために、海王星に移住し、それでも太陽の熱で住めないために、海王星の軌道を外側に動かしているという。
映像は、旧ユーゴスラビアに点在する戦争記念碑スポメニックの映像ということだ。
しかし、そんなことはどうでもいい。この映画は、よく眠れる。久しぶりに深い眠りに入った。
睡眠障害のある人や、心配事があって眠れない人は、ほんのひとときの時間を、映画館の中で過ごしてみてはいかがだろうか。
目的外使用にあたるかもしれないが、特に何のジャンルにも属さない映画ではある。故人となった監督も、人の幸福のために役立ったということであれば、喜ぶのではないだろうか。
巨大モニュメントのイメージ映像を観ながら、都会の喧騒を離れたい方には、おすすめしたい作品だ。
ぜひ、劇場でご覧いただきたい。
映画館でないと
たぶん観られない映画と思う。
家でみると集中できない。
映像が独特、フイルムで撮っているからかなぁ? モノクロームのざらついた感じ。
記念碑的な建造物が延々と映し出されるが、原っぱや荒野に建っているようだ。明らかにヒトが作ったものだが、画面には誰も出てこない。
映像、音楽、ナレーションのバランスが良かった。1930年代に書かれたSFが原作のようだが、予備知識ゼロでもそれなりに楽しめた。
観る前にダブルのエスプレッソを飲んで、眠気対策したつもりだったが、何回か意識が飛んだ。
ひたすら音楽と映像を愉しむ映画。わかる人にはわかるメッセージが込められている…
唸るような重厚な音楽。
モノクロの寒々しく美しく迫力のある映像。
巨大なモニュメントたち。
このモニュメント群は実在のもので旧ユーゴスラビアに点在する戦争記念碑(スポメニック)なのだそう。
まるでよくあるSF映画に出てくるようなモニュメントが、映画のために制作したのではなく、現実に実在することに驚きです。
どうやら1960年頃に造られたもののよう。
未来から過去へ影響を与えることができる。
過去が変われば未来が変わる。
このタイムラインを選ばないで!
という未来から過去である現在への警告。
まさに、混乱の真っ只中にいる今の世界へのメッセージとも受け取れます。
原作者、ステープルドンは本当に見えない世界の何者かからメッセージを受け取ったのではないかしら…。
この物語は真実のように感じました。
ステープルドンは宇宙の真理をしっていたのでは?
ヨハン・ヨハンソンも気づいていたのでは??
俄然、ステープルドンに興味が湧いてきます!
賛否両論ありそう、好みが極端に分かれそうですが、おもしろかったです。
早速、原作を読んでみたくなりました。
ん~?どうしたヨハンソン!
<あらすじ>
20億年後の人類からの現代人へのSOS信号アリ
20億年後には地球には住めなくなっているらしい
20億年後には人類は海王星に住んでいるらしい
20億年後には太陽光も随分と減っているらしい
これは大変だ!「Just do it!」
<心の中のつぶやき一覧>
・これってSF作品なんだな。
・環境活動家グレタちゃんに影響されたっぽい
・巨大建造物が大好きですが、ドアップばかりで見にくい。
・もっと建造物の全体像を見せて欲しい。
・20億年後にも人類が存在し、海王星に住んでいるらしいが…逆にスゴイ!
・BGMは最高にディストピア
・マフティのハサウェイ・ノアも賛同するのでしょう。
芸術ってのは…。
壮大な自然の中に現れるSFを思わせる巨大なスポメニックとヨハンソンの音楽。
見事に調和した映像は見事で、ナレーションのティルダ・スウィントンという存在の不可思議さも相まって、知らない世界へと誘われる。
究極の映像と思いながらも眠気にも誘われた。
芸術ってのは…。
幸せな時間であった
このタイプの映画は初めて観た。20億年後の人類からのメッセージを読み取ろうと努力したのだが、いかんせん言葉と言葉の間を埋める音楽が長すぎて、何がいいたいのかさっぱり解らなかった。多分音楽からイメージを読み取って、行間を埋めていくことができれば、本作品も理解できたのかもしれないが、当方には音楽の素養がないので、そんな芸当は不可能だった。
ターミネーターが1984年のアメリカにやってきたのは2029年の近未来からである。本作品は20億年後だから桁が違う。そんな途方もない未来まで霊長目ホモサピエンスが存続し続けているのだろうか。人類の浅はかさを前提にすれば、世界大戦も今後何度か起きるだろうし、食糧危機や内戦や新型ウイルスのパンデミックや異常気象や巨大地震も起きるだろう。世界各地にシェルターが造られて、世界大戦や天災地変のたびに人口が減っていくし食糧も底をつく。
それでも生きられるように、人類はやがて進化を遂げるだろう。呼吸だけで生きられるとか、鉱物を摂取してエネルギーに変換できるとかいった進化だ。あるいは環境と深く結合して、風力や地球の磁力や太陽エネルギーによって生命を維持できるようになるかもしれない。
テレパシーなどの超能力もいくつか身に着ける。殆ど動かず、遠くまで届く脳波によって世界中の人と交信し、瞑想することで科学や文化を発展させることができる。言語は形を変えて、誰とでも円滑な関係性を築ける。脳が驚異的な発達を遂げて、もはやコンピュータは不要となる。あらゆる情報は人類共有となり、人類そのものが科学であり文化であり芸術となる。共有の範囲は時間軸を超えて、ついには過去とも交信できるようになる。しかし同時に人類が直面していたのは、アイデンティティの喪失であった。
当方の想像力ではこの程度が精一杯である。ただ、本作品の音楽は大変に心地のいいものであった。加えてティルダ・スウィントンのナレーション。ティルダ・スウィントンといえば映画「ドクター・ストレンジ」や「デッド・ドント・ダイ」などを思い出す。妖しくも超然とした、独特の存在感のある女優で、声もイメージも本作品にぴったりである。あの半透明のような美しい顔を思い浮かべながら、陶然として鑑賞することができた。幸せな時間であった。
想像力全開で立ち向かう。
カッコいいポスターに釣られて見てしまった。
監督兼作曲家なので70分の壮大なMVと見ることもできる。曲は素晴らしく爆音の没入感はかなり気持ち良い。
そう言えば曲というか言葉というか気に入って「メッセージ」はサントラ買ってた。本作が遺作になってしまったのは残念。
絵はユーゴの自然のなかに取り残された巨大なモニュメントや建造物、彫刻を色んなアングルで舐めるように撮っている。 それが時として理解を超えた生物に見えたり、巨大なエイリアンの宇宙船や、2001年のモノリスのように何かを語ってる感じがする。汚れたディテールさえ遥か彼方からものすごい時間をかけて我々に届けられるメッセージにみえる。
ティルダ様は遥か未来の人間(かなり種類がわかれ、形も今の人間とは違うらしい)で我々に警鐘を鳴らす。
しかしその「滅び」はどうやら避ける事は出来ないようだ。
印象として2001年や、タルコフスキー観てる感じ。
ちょっとウトウトしながらも想像力全開にすると極上のトリップが味わえる一品。
二十億年後から届くレクイエム
深淵から湧き上がってくるようなヨハン・ヨハンソンの音楽と魂に響いてくるティルダ・スウィントンのナレーション。開始5分もしないうちにα波が出始め、気がつくとθ波が出ていたようで意識は20億年後のモニュメントを彷徨っていた。
20億年後という途方もない未来まで、人類が生き延びているならば、戦争という厄災は克服したのであろう。最後の人類からのメッセージにもかかわらず、究極に意識が弛緩してしまう心地よさ。
ほめてるんですよ。こんなに心が澄み切ったのはいつ以来だろう。
【考察: 隠されたメッセージ】
この作品は、音楽と、映像と、朗読を組み合わせた、ある意味で、究極の総合芸術を目指したのではないかと思わせる。
映画はもともと総合芸術と呼ばれていたように思うけれども、その定義は曖昧だ。
なんか、この映画は素晴らしいです!皆さん、見てくださいと説得力を持ったレビューになってるとは到底思えない気がする。ごめんなさい。
ヨハン・ヨハンソンは、アコースティックとエレクトロニカ(電子楽器)を融合させたポスト・クラシカルの牽引者と言われた人だ。
坂本龍一さんが、この映画のフライヤーに哀悼の寄稿を寄せたように、多くの人から尊敬を集めていた。
この映画では、バックグランドに人の歌声が合わさったり、更に、風や水滴の自然音が奏でられ、坂本龍一さんにも通じるところがあるように感じたりする。
ヨハン・ヨハンソンは、SF「あなたの人生の物語」を原作にした映画「メッセージ」のサウンドトラックも手がけており、この作品の制作について知った時は、SF繋がりなのかと考えたりしたが、原作「最後にして最初の人類」で、海王星に移り住んだ人類が、音楽こそが宇宙の真理だとして、更なる覚醒を目指す場面を思い返して、これこそが、この原作を映像化しようとした動機なのだと思うようになっていた。
しかし、この映画「最後にして最初の人類」を観て、この映画に語られないところに、実は、大きなヒントがあるのではないかと考えるようになった。
この原作は、1930年にイギリスの作家ステープルドンによって発表されたものだ。
かなり乱暴な概略で恐縮だが、
ヨーロッパで大きな戦争が起こり、アメリカが介入、アメリカがヨーロッパを支配するようになるが、同時にアジアで中国が台頭し、アメリカと争うようになる。最終的にアメリカが勝利を収め、世界政府が樹立される。
しかし、人間の愚かさは残り、新しく発見された(原子力のような)エネルギーの過度な使用で、地球の汚染が急激に進み、人口が急減し、なかには類人猿まで退化してしまうものも現れてしまう。
その後、知的な人類が繁栄を取り戻すが、今度は火星人が襲来、人類はこれを退けるが、人類は火星人の特徴を備えた新たな人類を創造し……と、
1930年発表の原作は、その後の第二次世界大戦や、原子力エネルギーの発見、遺伝子操作技術の確立などを思わせるところがあり、マニアの間では、一時、これはSFではなく、予言の書だと騒ぎ立てるものが出るほどだった。
物語の中の対応する年月を正確に思い出すことは出来ないが、この後、人類は居住に適さなくなった地球を捨て、金星に移住し、更に、太陽活動の変化のために、海王星に移住せざるを得なくなったらというストーリー展開だったと思う。
冒頭で少し触れた、音楽こそが宇宙の真理という話は、海王星に移住した人類が考え始めるものだ。
このように、この原作は、SFや予言の書というより、壮大な寓話だと言った方がしっくりする気もする。
ステープルドンは、神話だと語っていたという記録もあるようだが、壮大という点では、その通りかもしれないと思ったりもする。
この映画「最後にして最初の人類」は、20億年後の未来の人類から、現代の人類にメッセージが届くという形になっている。
しかし、何をどうしろという具体的なものはない。
実は、ヨハン・ヨハンソンは、この原作を世の中の人にもう一度読ませたいか、今、人類として対応すべき問題を想像して欲しいと考えたのではないかと思っている。
米中の対立は現在の大きな問題だ。
確かに、その前には米ソの冷戦があり、今の米中の対立は、ステープルドンが考えたような人種の対立ではなく、どちらかと言うとイデオロギーに人種の感情が混じった対立かもしれない。
しかし、この対立によるリスクは計り知れない。
原子力エネルギーの危険性は、広島と長崎に落とされた原爆、ビキニ諸島の水爆実験、チェルノブイリと福島の原発事故で明らかだし、遺伝子操作も人間の倫理観を損なうリスクを孕んでいる。
そして、環境汚染は待ったなしの状態だ。
決して正確ではないにしろ、ステープルドンというひとりの人間が、90年も前に、想像力を広げることによって、こうした人類のエゴも含めたリスクを物語として残すことが出来たのだ。
宇宙の摂理として、人類の存続に決定的な打撃となる太陽活動の衰退を防ぐことは不可能だろう。
しかし、その他の人類に由来する最悪な事態を想定して、これを回避する行動を取ることは可能ではないのか。
映像に映し出されるスポメニックは象徴的だ。
ユーゴスラビアは、第一次大戦後に、ウッドゥロー・ウィルソンの唱えた民族自決を背景に誕生したが、複数の民族をベースにした連合国は拡大し、ドイツの侵攻を経験した第二次世界大戦の後は、モデル社会主義国として、チトーの指導の下で世界的に注目された時期もあった。
しかし、その後は、経済的に疲弊し、ソ連崩壊後は、分裂、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争では、スレブニツァの虐殺と呼ばれる、8000人もの大量虐殺が起こり、複数の民族の連合が虚飾に満ちたものだったことが明らかになった。
(※ スプレニツァの虐殺は、「アイダよ、何処へ」として映画化されています。)
何をユーゴスラビアは間違ったのか。
何を社会主義は間違ったのか。
何を世界は間違ったのか。
20億年後の僕達と姿形の全く異なる人類からメッセージをもらうまでもなく、逆説的に、僕達は想像して行動できるはずだと、ヨハン・ヨハンソンは、伝えたかったのではないのか。
想像力を働かせるまでもなく、解決すべき課題はすでに提示されているとも思う。
しかし、唯一、想像力を与えられた生物として、何を成すべきか、考え続けることは決して無駄なことではないと信じたい。
想像力を働かせて生きなさいというのが、この映画の隠されたメッセージのように今は思う。
スポメニックの導入剤として
モノクロのざらついた画面に映し出される、巨大な、奇妙な構造物。アブストラクトな音楽。落ち着いた声の朗読。言ってみれば、この映画にはそれしかない。
巨大建造物は大好きだが、不勉強なことに、映画を見るまで「スポメニック」と呼ばれる旧ユーゴスラビアのこれらの建造物については知らなかった。これを知れただけでも見る価値はあった。残念ながらわたしにとってはそれ以上でも以下でもない。
2021年最大の"怪"作?「映画版」五種競技?でも、見る価値は…あり。
今年86本目(合計150本目)。
同じ題名の小説(1930年)が元にあり、それを下敷きにした作品のようです。
ただ、それだとSFものになってしまうため、チトー政権において、ユーゴスラビア内に、第二次世界大戦の俗にいう枢軸国による占領や、チトー率いる人民解放軍の活躍をたたえて作られたもの(1970~1980)が、映画内に出てくる巨大建築物です(ただし、映画内ではこれらの説明は一切ない)。
内容がかなり特殊で、女性が延々と話している以外、人は一切出てきません(よって、最後の著作権表示も、音楽作者や編成責任者などで「○○役 ××」というような表記は一切出てこない)。元の小説をそのまま要約するような形だと、著作権上の問題もありますし、そもそも「終わらない」ので(70分どころか、700分あっても無理)、1930年の小説を下敷きにしながら、1970~80年の巨大建築物も絡めて、ストーリーの一節(良いところ取り、という感じ?)を作っているような感じです。
ただ、ここ(や、似たような映画評価サイト)で情報を得ているなら「そういう映画なんだな」ということで問題は起きないと思いますが、そうでない場合、「これ何ですか?」という点はやっぱり否めません。
配給はシンカさんで、最近だと「ラブ・セカンド・サイト」もこの会社の映画ですが、かなり毛色が違います。そういう事情があるため、ツイッターの公式アカウント上で、この小説(なお、日本では2004年に原作の日本語訳が発売されるも、現在では絶版。kindleなどでも無理)の序説が、許可を得て公開されています(期間限定/詳細はシンカさんの公式ツイッターアカウント)。
上記の事情により、天文(特に、太陽系)に関する知識は前提であるものの、チトー政権やユーゴスラビア政権などの知識は不要な一方、逆に哲学的な事項(人とは何か、精神とは何か、考えるとは何か…)、生物に関することなどなど、分野違いのことを次々問うてくるので(上記のように70分で、誰かが回答してくれるというわけではない)、ある種「映画版五種競技」みたいな状況になっていて、相当な知識がないと、建築物よかったなぁ…で終わりかねない感じです。
個人的には、まぁ確かに「異質な映画」だとは思うけど、こういう映画を見ることそれ自体にも教養は広まるので(理系・文系を問わない知識の向上)、特に低評価にしませんでした。
なお、1人がずっと話しかけるという性質上、「映画の英語がどこまで聞き取れるのか」という「リスニングテスト」にも使えるんじゃないかな…とさえも思います(まぁ、目的外使用だとは思いますが…。準1くらいあればいけます)。
採点は下記の0.3のみで、4.5までとしました。
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(減点0.3) この映画、2020~2021年にしては珍しいモノクロです(厳密にはモノクロではなく、「ある色」がテーマで出るが、実質的にはモノクロと言える)。そして、「登場人物が誰もいない」「複数の分野に精通していないと理解が難しい」、さらに「前提となる小説は日本では購入すらもできない」という状況であるのなら、公式サイトももう少し、どういう映画か、説明ないし、無料公開分で見せるべきだったのかな…とは思います。
(※) ここや、他の評価サイトを参考にいく分は、何の問題もないが、誰もがこういうサイトを参考にするわけではないので。
(減点なし/保留/判断不明) この映画において「海王星」という語が「最後の希望」という形で出ます。「現在では」太陽系の最も内側にある惑星は海王星です。
しかし、この映画の原作となった小説は1930年発売で、実は冥王星の発見も1930年です(実は、同じ年)。
ただ、冥王星は人が済むには明らかに適さない小さい惑星(当時。今は準惑星に格下げされている)であることは発見当時から知られていたので、あえて無視したのか、作品のほうが早くて冥王星が頭の中になかったのか、知識があると余計に混乱するなぁ…と思えました。
全24件中、1~20件目を表示