ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイのレビュー・感想・評価
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人種差別を問題にした作品はたくさんあるが、どちらかというと新年を貫...
人種差別を問題にした作品はたくさんあるが、どちらかというと新年を貫き通した1人の人間のヒューマンドラマとして素晴らしいと思いました。
カッコいいなぁ!
アメリカという国がダサく見えるのも面白い。
奥深い映画でした。
ビリーとアンドラに最大級の賛辞を
黒人が白人によるリンチで殺害され木に吊るされる姿を『奇妙な果実(Strange Fruit)』と歌い米政府から標的にされたビリー・ホリデイ。
幼少期のトラウマ等から麻薬に溺れながらも最後まで歌手として黒人としてプライドを持ち続けた彼女。今以上に差別が根強い時代に一人で戦い続けた生き様は尊い。
作品の根底に黒人に対する差別がテーマにありながら、ビリーを演じたアンドラ・デイの歌声もじっくり堪能させてくれます。
ビリー・ホリデイと共に彼女の凄まじい人生を身体を張って演じ切ったアンドラ・デイに最大級の賛辞を。
Wikipedia読んでるような作品でした。
アメリカ対ビリー・ホリデイ。興味深い掘り下げ方ですよね。ビリーホリデイについては曲を知っていましたが、個人については以前観たドキュメント映画の中で紹介されていた内容程度の認識です。ドキュメント観た後にも「どうしてこの人はこうなのかなぁ?」って思ってましたから、その理由を知りたかったのと、政府とどんな対峙があったのか?すごく興味がありましたから鑑賞です。
とにもかくにも主演のアンドラ・デイが素晴らしかったですね。多分本人の歌声なんでしょうが、なんとも染み入る歌声です。いいですねー。この方の演技だけでも満足感あるかもしれません。ただそこまでだったかなぁ・・・残念ですが。
どうにもビリー・ホリデイの心根が見えないんですよね。悲しく辛い幼少期があるのはわかるし、かなりトンデモ男ばかりとくっついちゃう事実も知ってます。けど、どうも彼女の行動と心情がリンクできないので「勝手でわがままな自己中心的な人」にしか見えないのです。だからこそ、そんな彼女が「奇妙な果実」を歌い続けようって思う動機付け見えてこないし、劇中で描かれる動機があまりにもチープに見えてしまうのです。きっと脚色なんでしょうが、かなり安易に見えるのです。それが果たして合衆国を相手どる覚悟が生まれるのだろうか・・・?と。わからん・・・。
また、彼女の数奇な人生を描くのがなんのために描いているのか?そこが対合衆国のドラマに繋がらなければならないと思うのですが、その辺りのダイナミックな展開がなく、こんな人でした、こんなことがありました、その後こうなったんです・・・というネットで拾える情報を繋げただけって感じのドラマしかないのでかなり残念なのです。合衆国VSビリーホリデイを描くなら、もっと当時の政府の考え方や差別主義が色濃かった背景を前面に出すべきだったと思いますし、もっともっと国側の腹黒さ胡散臭さ、白人至上主義の歪さなどにフォーカスして描くべきだったのでは?そこにこそ描くべきテーマがあったのでは?って思います。
歌と演技は見事だったので3.0。物語はちと残念、期待してたんだけど。
タイトルこれでいいの?
黒人に対するリンチについて歌った曲「奇妙な果実」。ビリー・ホリデイというとこの曲。というか、他の曲はほとんど知らない。
この曲を歌わないよう政府が圧力をかけていたっていうんだからすごい時代。禁止されながらこの曲を歌い続け、黒人差別に反抗していたビリー・ホリデイの半生を描いた映画と思っていたが、若干違っていた。むしろ過酷な人生を送るビリー・ホリデイの愛を求める物語に思えた。
ドラッグとセックスとアルコール漬けだった生活。しかも小さいときに育った環境がまたすごい。たしかにつらい人生だったと思う。でも、人間としてどうなの?と思うところも多い。愛されることに飢え、でも愛されることを恐れもする。真剣に愛した男性からするととても厄介な女性だ。
だからこそジミーがセックスの際に後ろからではなく、正面から見つめキスしながらの行為を望んたシーンはとても印象的だった。あれで他の男性とは違うことを描写するなんてうまい。
もちろんアンドラ・デイの歌声はよかったし、題材からして感動できるものだった。でも、思ったほどの感動は待っていなかったのも正直なところ。そもそもこのタイトルでいいのか?普通に「Strange Fruit」でよかったのに。
尻を叩くでない
40年代、黒人への差別・リンチが蔓延る世の中でジャズ・シンガーとして活躍していたビリー・ホリデイが「奇妙な果実」の歌が原因で麻薬局からターゲットにされる話。
ラストのメッセージにある反リンチ法案についてあるようにめちゃめちゃ現代に繋がる政治的メッセージを持って作られてる映画で、麻薬局長官のアンスリンガーに関しては実際の映像が太ったハゲおじがケネディ元大統領の前で満面の笑みという極悪人にしか見えないような作りで笑ってしまった。
でもアメリカが麻薬撲滅の名目で黒人を圧迫しているのはおそらく現在進行形の話でもあって、黒人の人達が警察官に殺される問題ってここに繋がると思う。日本人の感覚だと麻薬に溺れる方も悪いってなりそうだけど、アメリカの場合絶対他の白人の人もやってる。なのに黒人の逮捕率が高い事実を考えると、ビリー・ホリデイが狙われてたのも納得。
あとはビリー・ホリデイが麻薬に溺れてしまうのも、過去のトラウマがあってさらに、高圧的な男ばっかりに囲まれて良いように利用され暴力も振るわれてるのに、何事も無かったかのように旦那と普通に接してるのを見ると本当に麻薬しか逃げ道がなかったのだなと思い悲しい。
おそらく麻薬捜査官のジミー・フレッチャーとの関係はフィクションだと思うので、あんな風に優しい男性が誰かいれば何かが違ったのかもと思った。それが「尻を叩く」という行為で反復されててよかった。
アンスリンガーがビリー・ホリデイをアメリカらしくないって批判してたけど、日本人の私からしたら常に色んな疑問と闘争が起きているようなところこそアメリカだと思っているから、その悪い所をもみ消そうとする行為がめっちゃ日本人ぽいなと思った。
アメリカが隠したいものを歌い続けた歌姫をアンドラ・デイが熱演!!
今作は、ビリー・ホリデイを扱った映画ではあるが、彼女の伝記映画というわけではない。というのも原作となるのは「麻薬と人間 100年の物語」という、アメリカのドラッグ100年史のようなものだからだ。
つまり黒人が現実の恐ろしさから目を背けるために、アルコールやドラッグに手を出すしかない、精神状態に追いやられていたことを象徴する人物として、ビリー・ホリデイに焦点が当てられているのだ。
ビリーをアーティスト的側面から描いた作品は、ドキュメンタリー『ビリー』や、ダイアナ・ロス主演の『奇妙な果実 ビリー・ホリデイ物語』などを観た方がいいだろう。監督のリー・ダニエルズも伝記映画はすでに存在しているだけに、そこを目指したわけではないことも語っている。
貧困に苦しみ、生活のために、家族から売春を強要されるといった、壮絶な子ども時代を過ごしたビリーの人生を一から語るとなれば、十代で2回も父親のいない子の出産を経験しているアレサ・フランクリンの『リスペクト』のように、2時間弱という劇時間では、決して語りつくせない。
ビリー・ホリデイに焦点が当たった理由としては、やはり代表曲「奇妙な果実」
このタイトルの意味は、南部でリンチにあった黒人が木に吊るされ、腐敗した姿を指していることから、この曲は白人たち、特に政府からは嫌われていた。アメリカが隠したい汚点をダイレクトに伝える歌詞であったのと同時に、首都圏では大移動によって黒人の人口が、急激な増加傾向にあったこともあって、歌詞に触発された黒人の暴動の恐れもあり、常に政府はビリー・ホリデイの動向を監視し続けていた。
近年でも『それでも夜は明ける』のように、奴隷制度や黒人リンチを扱った作品は、配給や上映関数が取りにくいといった事例もある。特に白人至上主義を概念として受け継いだ保守的な白人たちは、今でも良くは思っていないだろう。
『マ・レイニーのブラックボトム』でも描かれていた通り、当時白人たちは、ジャズやブルースなど黒人音楽を娯楽の一部として楽しむ傾向にあり、アーティストは、一目置かれる存在であっただけに、批判的な歌詞の歌を唄うというだけでは逮捕できない環境にあったため、ドラッグを理由として逮捕できないかと探っていた。
公民権運動が本格的に始まったのは、50年代に入ってから。40年代で黒人の尊厳を主張するアーティストというのはとても珍しく、しかも成功しているとなれば一握りにも満たない。それだけ注目を集め、黒人も「奇妙な果実」を公の場で披露することを望んでいたのだ。
ビリー・ホリデイを演じるのは、第58回グラミー賞にノミネートされた経験もある歌手のアンドラ・デイ。今作では歌唱シーンは吹替えなし、さらにヌードにも挑戦するなど、ビリーの生き様を体現したかのような、体当たりな演技に圧倒されてしまう。ゴールデングローブ賞を受賞し、アカデミー賞にノミネートされたのも納得できる
観賞後は本物のビリーを聴く。
映画観賞後に是非ともビリー・ホリデイの「porgy」を聴いて複雑な心境をリセットする事を提案。
とても上手に歌っていましたが ビリーホリデイ独特の譜面に張り付いた音符のような 決して浮き出すことのないメロディーのベタッとした 歌い方 の表現はなかなか難しいと思います。 ビリーホリデイの隣で首をかしげてテナーサックスを吹いているプレスことレスターヤングはもっと繊細なミュージシャンでビリーホリデイよりも早く逝ってしまった。 映画では表現しきれていませんでしたが ビリーホリデイの歌うメロディに添い寝をするようなレスターヤングのオブリガートがとても 味わい深いので色々探して聞いてみましょう 。
南部の木には奇妙な果実が生る。
ビリー・ホリデイについての知識はほぼゼロ。サザンの桑田が歌ってた昔のシンガー、くらいのものだった。タイトルからは、国家権力に抗った黒人歌手、という印象があったがちょっと違ってた。それよりも、黒人社会を押さえつけるために、格好の標的とされた有名人ビリーの悲劇、といった一方的なものだった。
映画は、すでに売れっ子となってからのビリーで始まる。そこで「奇妙な果実」という歌に対する思い入れの強さを訴えながら、これが当局との軋轢の元であることを知る。その意味するところは、劇中でも衝撃をもって登場する。彼女がこの歌を歌う理由も、それを英雄視する同胞たちの気持ちもよく伝わってきた。伝わってきたのはなにも、ただこの歌のメッセージ性が強かっただけではなく、演じたアンドラ・デイの歌声が素晴らしかったからだろう。
映画の中で描いたビリーの人生も強烈なのだが、帰ってから調べて知った生い立ちなども人生を踏み外すには十分の出来事ばかりだった。そんな彼女の人生は44歳という短い生涯だったにせよ、少なくとも世にその存在を知らしめるだけの足跡を残せた分、ほかの同胞に比べて幸せだったのかもしれない。そう、彼女のステージを歓迎する観客を見渡せば、黒人も白人も老いも若きも、皆笑顔と盛大な拍手で登壇を出迎えているのだから。
最後に、反リンチ法の現状がテロップで流れた。それほどこの法案に対する抵抗勢力が根強いのか?それとも、もうこんな法案はなくとも共存できる世の中になったのか?
人権問題は根が深い。
これは昔話ではない。つい最近の戦後の話だ。
これは難しい。この映画は、なんと評価したらいいのだろう。
彼女は幸福を望んでいたか?答えはノーだろう。
彼女は死への階段をのぼりながら、生きるためではなく、死に場所を求めて生きていた。
そして、歌を歌い続けた。
彼女の人生は、誰かを幸福にしたのだろうか?
幸福の意味を知らない人間が、人を幸福にすることができるのだろうか。
彼女の歌は、彼女の死後も残った。
それは、とても悲しい歌だ。
心の叫びの歌だ。
体当たり演技
ホリデイ役のアンドラ・デイの体当たり演技がすごくて、彼女を見るためだけに観に行っても損はないです。
ただ、タイトルからの印象や、予告編のイメージとは違ってしまっていました。
観る前は、黒人差別を当たり前とする当時の白人の醜さを全面に告発するような、サスペンス映画に思ったものの。
麻薬犯罪化の歴史を描いたヨハン・ハリ著のノンフィクション書籍「Chasing the Scream: The First & Last Days of the War on Drugs」を下敷きに作った作品と聞いてましたが、ビリーを麻薬漬けから救おうと逮捕に関わったジミー・フレッチャー捜査官との恋愛を抜き出して使ったのか、結果的には麻薬被害者としてのビリー・ホリデイの姿と、ジミーのビリーへの「報われぬ愛」がテーマになってしまったような。
もっと連邦麻薬局長官のハリー・アンスリンガーとの対決を軸に描いた方が、タイトルには沿ってたんじゃないかと。
エンドロール後半に、アンドラ・デイが歌う映像がくっついているので、最後まで席を立たない方がいいです。
未だリンチを禁ずる法案が可決されない国
Black Lives Matterのデモが、あれだけ世界各国で起こったのに
2021年においても未だリンチを禁ずる法案が通らない米国。
数年暮らしていた国だけど、沿岸部の都市はそれ程ではなくても、中西部は未だ酷い。
先進国なのに、蛮国だわ。
自分より下である存在を作らないといられない精神って、誰にもあるのだろうけど、
やっかみや嫉妬を正義にすり替えるって恐ろしい。
ビリー・ホリデイの負の伝記
ステージのシーンは文句なし。アンドラ・デイの歌声に酔いしれる。残念なのは、ビリー・ホリデイの負の側面に重点を置きすぎていて、彼女が黒人差別と戦った意味が薄れてしまっている。重度のジャンキーで、男に食い物にされ、助けてくれる仲間を切り捨ててしまう身勝手なビリー・ホリデイ。
たとえ事実だとしても、この描き方ではビリーに感情移入できない。必要以上に長いセックスシーンも興醒めする。
ミュージシャンの自伝映画なんだから、ステージをラストに持ってきて欲しかった。
『ボヘミアン・ラプソディ』『リスペクト』で証明されている鉄板のメソッドなんだから、使わない手はない。
重厚な伝記ドラマ
ビリー・ホリディという一人の女性の生き様を力強い歌声と共に描いた本作。「奇妙な果実」というセンセーショナルな歌詞が綴られた楽曲をきっかけに、薬物中毒者であることも相まって追い詰められていく様が容赦なく映し出されていました。
エンタメ要素を排除しかなりリアルに作られているのと、そもそも実話なこともあり、特別ビリー・ホリディに思い入れがない私からすると正直面白いとは思えず。知識不足が故の理解ができない箇所や価値観もかなりありました。
でも歌唱シーンはどれも圧巻でしたし、しゃがれた声で歌い上げ、尊厳を保ちステージに立ち続ける姿は胸を打つものがあります。
ルールに従って良い子で生きることを選ばなかったビリー・ホリディという一人の女性のことを、本作を通して少し知ることができて良かったです。
可もなく不可もなし、個人的には何も響かない
恥ずかしながらビリー・ホリデイの存在については名前は聞いたことあるものの、今作で初めて知った。ジャズ界では有名な方なのかしら?
申し訳ないですが、私としては見終わった後何も残らない作品だった。
主演のアンドラ・デイ、もちろん歌は上手いんだけど、心に響くような、何か訴えかけるようなメッセージ性も少なく…。
それにしても、天賦の才能を持つ歌手の多くがクスリとセックスがお約束のようにセットで描かれて、ドラッグで身を滅ぼしている。ビリーもクスリ漬け、そして男を取っ替え引っ替えだらしない。言っちゃ悪いが自業自得よ。
ただ、不遇な幼少期を過ごしたことには同情する。「奇妙な果実」の歌詞にも衝撃を受けた。
ただ、それだけ。
正直、しんどい
正直、しんどい。
生い立ちやら、過去やら、選ぶ男のしょうもなさやら、セックスの傾向やら、依存症やら、幸せを感じたときに自らそれをぶち壊すことしか出来ないところやら、すべてがしんどい。
今もリンチが止んでいないことも、リンチを罰する法律がいまだに成立していないことも、被害者である黒人がいまやアジア系をリンチしていることも、すべてがしんどい…
それにしてもこんなに愛されてたのか、ビリー・ホリデイは当時から。
それにしてもこんなに孤独だったのか、大スターなのに…
僕らは「『奇妙な果実』を歌ってよ!ビリー!」という客のように、なにも分かっておらず、なにもわかり得ないのではないか…
そんなことを思い知らされる映画、それがこの映画だよ。
何故こんなにも執拗にビリーが狙われたのか、分からないうちはこの映画を分かったとは云えないんじゃないかな、きっと…
美空ひばりを想起した
タイトルで損をしている。ビリー・ホリデイが合衆国政府と法廷闘争をした話かと思ってしまった。ビリー・ホリデイをよく知っているアメリカ人ならそんな誤解はしないのかもしれないが、かなり昔に亡くなったアメリカのジャズ歌手は、当方には馴染みがなかった。
ジャズは飲食店のBGMでインストゥルメンタルをよく耳にする。耳当たりがよくて食事の邪魔にならない。勝手な印象ではあるが、飲食店のBGMはジャズが一番多いと思う。
当方は個人的にジャズをときどき聞く。ビル・エヴァンスやオスカー・ピーターソンといったピアニストが好きで、特にピーターソンが歌う「It's Only a Paper Moon」や、サッチモ(ルイ・アームストロング)が歌う「When the Saint on Marching In」や「What a Wonderful World」がとても好きだ。誰でも聞いたことがある歌である。
本作品でビリー・ホリデイが歌う「All of Me」も聞いたことがあったが、歌手がビリー・ホリデイだとは知らなかった。シャンソンの「Hymne A L'Amour 」(「愛の賛歌」)を長いこと越路吹雪の歌だと思っていたようなものだ。
さて本作品はビリーホリデイの凄絶な半生を描いている。だからタイトルは「ビリー・ホリデイ」だけでよかった。合衆国の弾圧よりも、麻薬の誘惑との戦いの方が多かった気がする。のべつ幕なしに煙草を吸い、男と麻薬に溺れる。麻薬が駄目なら代わりに酒をがぶ飲みし続ける人生だ。人前に立ち続けるのはそれほど魂を削ることなのだろう。
当方は、1989年に亡くなった美空ひばりを想起せずにはいられなかった。万人受けする歌ばかりを歌っていたような印象の歌手だが、実はそうでもない。ビリー・ホリデイが「奇妙な果実」を歌ったように、美空ひばりは「一本の鉛筆」という骨のある歌を歌っている。ジャズも歌っていたが、これが実に上手かった。
国民的な歌姫、早すぎる死、そして必ずしも幸せだったとは言えない壮絶な人生と、共通点はいくつかある。もちろん黒人差別という大きな足枷をかけられていたビリー・ホリデイの苦悩と比較すれば、美空ひばりはまだ幸せだったのかもしれない。
しかしその歌は、あまり歌い継がれているとは思えない。「一本の鉛筆」を歌っている歌手は、当方が知る限り、シャンソンのクミコただひとりである。世界的に有名な「奇妙な果実」とはあまりにもかけ離れている。美空ひばりも魂を削りながら歌ったことでは、ビリー・ホリデイに負けていないはずだ。「一本の鉛筆」がメジャーな歌になることを願ってやまない。
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