劇場公開日 2022年6月17日

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「“原作”でなく“原案”、オマージュ要素を楽しむ作品」バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版 たま@🍒🍒さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5“原作”でなく“原案”、オマージュ要素を楽しむ作品

2022年6月2日
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鑑賞方法:試写会

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試写会にて鑑賞。
ドラマ版もディーン・フジオカさんのどこか浮世離れしたキャラと岩田さん演じる若宮くんとの掛合いが絶妙で、楽しく観ていました。バスカヴィル家の犬は原作に忠実な英国グラナダドラマ版が大好きだったので興味津々で臨みました。
予告編の印象はオカルトホラー風味だったので、ホラーが苦手な私としては少し心配でしたが、そのへんを不必要に強調する演出はなく程よい怖さ?、ちゃんとドラマ版のテイストで安心して観られました(予告編は絶妙なラインで編集してありますね)。

原作ではまずロンドンパートがあってから舞台がダートムーアへ移りますが、スピーディに開始数分で資産家・蓮壁千鶴男(はすかべちづお)(西村まさ彦)の謎の変死が起こり、早々に瀬戸内海の島に到着します。原作のイメージから寂れた離れ孤島を想像していたのですが、ちゃんと警察署やキャバクラもある、わりと人口多めの島です(笑)。
このへん、チェロの音色を多用した劇伴にも引き込まれテンポよく進みます。

島の山道を車で上ると、ふつうに立派でいい感じの外観の洋館に辿り着き(公式あらすじにある“異様な佇まい”は煽りすぎです・笑)、ここで一気に登場人物が揃います。

資産家・蓮壁千鶴男(はすかべちづお)→すでに死亡
妻・依羅(いら)(稲森いずみ)
長女・壁紅(べに)(新木優子)
長男・千里(せんり)(村上虹郎)
飼い犬・ヴィル(ハスキー犬)

執事・馬場杜夫(ばばもりお)(椎名桔平)
地震学者・捨井遥人(すていはると)(小泉孝太郎)
リフォーム業者・冨楽朗子(ふらくろうこ)(広末涼子)

(※詳しくはキャスト紹介を参照ください)

原作を知っていると、登場人物の名前にほぅなるほど…と思うと同時に、あれ?蓮壁氏、妻も息子も娘もいるの?え、犬、飼ってんの!?とか、使用人1人だけで夫婦じゃないんだ…とか、なるほど湿地帯ないから昆虫学者じゃなくて地震学者か…とか、リフォーム業者??とか違いにちょっとテンパります。同時にここで、「あ、もしかして原作とは全然違う話??」と悟ります。

実際“原作”ではなく“原案”なので、散りばめられたオマージュ要素を楽しむ作品と頭を切り替えると、原作ファンも楽しめると思います。
(私の場合、アガサ・クリスティもののケネス・ブラナー版リメイクは改変部分が気になって楽しめなかったので、原作に忠実に出来ないなら全く違う話のほうがありがたい派です)

様々な要素が原作とは違う形で登場したり回収されたりするので、原作を知っている人は“原作ファン向けのミスリードかもしれない”可能性とも戦いながら推理していくことになり、原作を知らない人よりも余計な情報に惑わされて楽しめるかもしれません(笑)

などといろいろ書きましたが、あれこれ疑問点を考える間もなくぐいぐい物語は進んでいき、あれよあれよという間にエンディングに辿り着きます。気づくと心地よい切なさと共にエンディングロールに浸っていました。
公開されたら誰かともう1回観てもいいかなと思える映画でした。

個人的にミステリーで瀬戸内海の島…といえば金田一耕助なんですが、舞台が瀬戸内海の島だったせいか、シャーロックだけど後半の展開に金田一耕助ぽさをかんじました。名探偵に関する格言「名探偵は事件を~」が思い出しましたね…。

俳優陣では、椎名桔平さん、稲森いずみさんの配役はお二人にしか出せない説得力がありとてもよかったです。

たま@🍒🍒