「【不完全で窮屈だけど、希望のある僕達の世界】」アメリカン・ユートピア ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
【不完全で窮屈だけど、希望のある僕達の世界】
デイヴィッド・バーンや、トーキング・ヘッズのファンじゃなくても楽しめる圧巻のステージ。
これを映画として残そうと考えた、スパイク・リーにも拍手を送りたい。
トーキング・ヘッズが解散してから30年ぐらい経過すると思うが、まあ、インテリ感あふれる風貌を嫌う人もいるスノッブなバンドだった。
トーキング・ヘッズの音楽はずっと変化しっぱなしだったが、メンバーの方向性の違いが鮮明になり、僕の好きなヴィム・ヴェンダースの作品「夢の涯てまでも」に楽曲を提供して解散したことで、更に強烈に僕の記憶に残っている。
今回のステージは、メッセージ性が強い。
脳の神経細胞が成長するに従い減少していくのは、人間が大人になるとバカになってしまうということなのかというテーゼからスタートし、多くの楽曲を通じて、多様性の重要性や既成概念からの脱却の可能性を示唆し、余計なものを削ぎ落し、僕達は成長しているのだという方向性を、つまり、それがアメリカン・ユートピアではないかというメッセージに繋がっているように感じる。
人種や国籍、ジェンダーが異なる世界中から集まった多様なメンバー(多様性)。
そして、固定されず、ひとところに止まることのない楽器をもったままで歌い動くメンバー(既成概念からの脱却)。
目指すものはアメリカン・ユートピア。
僕達の住むこの世界は、実は、不完全で窮屈だけど希望のある世界なのだ。
それが、タイトルロゴの逆さになっているUTOPIAの文字に示されているのではないのか。
だから、これをひっくり返したら良いのではないのか。
選挙、投票率の話が出てくるが、アメリカでは、昨年の大統領選の後も、有色人種有権者(特に黒人有権者)の選挙登録をしにくくする試みが共和党の右派から行われている。
それが、最後のメッセージにもなっている......が、
それにしても、やっぱり、なんといっても、音楽とステージが素晴らしいのだ。