茜色に焼かれるのレビュー・感想・評価
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どんなに不条理であっても前を向いて生きていかなくてはならない
この世には誰が決めたか分からないルールや、理不尽なことに溢れている。
自分を何かに合わせて演じて誤魔化していかないと生きていくのがつらい。
でも、そんな息苦しい世の中でも誰かを愛することが生き甲斐になる。
空が茜色に染まるように、塞ぎ込みたくなる曇天模様でも一筋の光を差し込んでくれる。
人はなんのために生きているのか。という命の尊さを改めて見つめ直すことができる作品。
コロナ禍の社会や生活様式を自然と描いていて、この1年ほどでこの作品を書き上げ撮りきり上映した石井裕也監督は素晴らしい。
字幕でものごとの金額が出てくるが、お金に換算できない幸せとの対比を表しているか。
現状のていねいな描写
切ない話が続くよね。
観てて「経済的困窮はしんどいけど耐えられる。屈辱を与えられるのが耐えられない」と思ったな。
あとは、弁護士さんで顕著だけど「話を聞いてますか?」と言う人がこちらの話を全く聞かない。それから、「上に言われて」「上に言われて」が出てきて、弱い者がさらに弱い者を叩く構図。
熊木くんに対する仕打ちは「ひでえなあ」と思った。これも出てくる中で一番弱いところにいったと言えなくもない。
話をまとめずに終わっていて、淡々と事象を描写した作品になっていたけど、観てて考えさせられたな。
尾野真千子が凄かった。でも・・・・・
コロナ禍。 がんばれ!
底辺を描いた映画が好きです。
特にこの映画は、現代に本当にありえることが描かれているので見ていて引き込まれました。
片山友希さんは観ていて個性を感じました。
そこらへんにいる俳優じゃないと思い、家に帰りnetでこの作品に対する思いを知りました。
コロナ禍での映画。
体調とか都合がわるく、少し間が空くと、あっという間に観たいと思つていた作品の時間枠が1枠になっていたり消えていたり。
見逃した作品は10本を越えます。
俳優さんたちも大変だと思いますが、健康に気を付けて頑張ってほしいと思います。
タイトルなし(ネタバレ)
なぜだろう。役者さんは皆良い。尾野真知子の強さも片山友希も。永瀬正敏もさすが、出てくると画がしまる。
息子役が、すごくよかった。卑屈にならず、母を信じて、母子家庭の息子ってこうだろうなぁと頼もしくも感じた。
ただ、何度も発せられるいセリフややりとり、理不尽さを主人公に与える役割が、極端すぎるのか、意図が
わかりやすすぎるからか
計算を感じてしまい今ひとつ前半入り込めなかった。
でもこのコロナ禍で
弱い立場の者たち、理不尽な世の中、
に明るさを与えてくれる主人公であり
ラストのシュールなシーンがオチのようにもなっている遊びゴコロは石井監督ならではだと感じました。
すごく好きな映画
キネマ旬報の批評で高評価だったので観てみたらすごく好きな作品でした。
泥臭くて青臭くて熱量がすごくて、尾野真千子さんがもう圧巻。
どんな表情も見逃せませんでした。
彼女でなくては成立しなかった映画。
一生懸命なんだけど、空回りしたり自分で自分の首を絞めちゃったり。
人生ってそういうもんだよなぁって、
自分はかなり愛おしく共感しながら観てました。
白眉は中盤と終盤、良子とケイが心情を吐露する場面。
もう演技とは思えない。
ウソくささが全くないどころか、今目の前に田中良子とケイがいるんじゃないかと思うほど。
どんな現実よりも映画の中の方が「真実」に思える。
自然に涙がこぼれていました。
片山友希の新鮮さもさることながら、やっぱ尾野真千子スゲェ、、ですよ。
あと冒頭から字幕が要所要所で効いてて良かったです。
良くも悪くもお行儀の良い作品が多い中で、みんなに好かれる八方美人のような作品ではありません。
ここで両極端になるレビューを見ても分かりますね。
凸凹してていびつな尖ってる映画。
でもこの映画の中に大切な「真実」のひとつがあることは断言します。
コロナがなんじゃ!って思えて勇気づけられました。
決してつらく悲しいだけのお話ではありません。パワーをもらえる映画ですよ。
一部レビューを鵜呑みにして見ないのはあまりにもったいない。
不幸を寄せ集めてみたものの…。
コロナという作られた困難にまかせて、不幸を寄せ集めてみたものの、収拾不能な、朝日新聞炸裂の映画が出来てしまった!
一体全体、何が言いたいのか?
税金使った公団住宅に安い家賃で住む母子家庭を馬鹿にする奴が許せないのか!?
母子家庭の母親が風俗で働かないといけないような世の中が許せないのか!?
人を事故死させ謝りもせずのうのうと生きている元官僚が許せないのか!?
風俗で働いている人をバカにして見下す風潮が許せないのか!?
ルールに縛られルールからはみ出した人を排除しようとする人間が許せないのか!?
いじめ、無責任な教師、血の通わない弁護士、人の弱みに付け込む人間、近親相姦、病気、自殺、ありとあらゆる不幸を詰め込み、言いたいセリフを詰め込み、最後は自慢の母ちゃんで終わる!?
そんな、荒唐無稽な長尺映画を観たい方は、映画館へ集合だ!
東京は映画館オープン!おめでとう㊗!
脚本は頂けない。
尾野真知子がこれまでの取り組み方では演技できなかった、というようなことを言っていたので興味を持ちました。
お話は一言でいえば、シングルマザー応援歌みたいな感じの話です。しかし同時に、こんなひどい社会の中で、生きる意味を真面目に問いかけていたんですね。
シングルマザーの反逆っていうか、それによって生きるための推進力を得るということなんですが、理不尽な目にあいまくるシングルマザー役として尾野真知子では重すぎると感じました。
俳優陣は彼女も含めて、熱演で、それは見ていて気持ちのいいものではあるんです。しかし、シングルマザーに焦点を当てるのであれば、尾野真知子では強すぎるんですよね。シングルマザーとして差別されながら、肩身を狭くして生きてる役なんだけど、どうしてもそう見えない…
しかも反抗の中身も、おい、今の社会で怒りの向く先がそこなのか⁉︎ 脚本が本当に表層的で幼稚だなあとしか感じられなかった。石井裕也監督のオリジナル脚本ということなんですけどね。また、あーあな日本映画が追加された、正直そう思ったのです。
ところが驚いたことに、1100円もするパンフレットを読んでみると、ストーリーもさることながら、コロナ禍で映画を作るということにとても重点が置かれていたことが判明。パンフは主な出演者だけでなく、コロナ禍なので極限的に人数が減らされたスタッフの声も載っていて、制作現場の様子がわかり、中身はあるものでした。
それをみると主演の尾野真知子からして、最初はコロナ禍なので仕事はしないことにしていたのに、脚本を読んで出演を決めるなど、コロナによって出演者スタッフ全員大きな影響を受けつつある中で制作されていたのです。そしてそのことこそ、映画が作られた大きな動機なので、話もコロナ時代の中で展開しているんですね。マスクつけてたりして、筋とは関わらないですが。撮影は昨年の8月末から9月いっぱいに行われたものなので、本当に手探りでコロナ対策をしながらの大変な現場だったようです。
とにかく理不尽な社会に負けない!っていうことへ向かって、突発的に、しかし作らなきゃ!と作った映画らしいのです。
この製作陣の熱とは裏腹に、私はますますドン引きしてしまった。希望なしには生きていけないけれど、これで生きていけるのか…なんだか、ラストにほのかに提示される希望にまるでピンとこないというか。
しかも希望がなくなったら死ぬしかないじゃん、みたいなことも併せて言われてたりして…
社会への問題意識はわかったけれど、その先がとても線が細くて、現実社会で闘われている生きるための闘いの重さと比べて軽いんですよね。最後の自転車のシーンは、美しいけれど、なんかやはり頭の中で捻り出されたものでしかない。
最後に付けた劇中劇は賛否両論あるかもしれない。石井監督からしたら絶対に必要な部分でしょう。それは、彼の話を読むと理解はできる。しかし読まないとそこにこそ主眼があったとは、私は理解はできなかった。ええ、そこなの… みんな仮面をかぶって人生演技してるって?あるいは、芝居でしか本音言えないって?なんだかなあ…映画の熱量の中に入れず、さらに脱力。
最初に映画の隅に主人公のことを記載した一文が出てくるんです。そこに確かに監督の大事な思いが書かれていたんだと、パンフ読んでわかったものの、映画の前の宣伝があって、その後に朝日新聞ってのがバーンと大きくそれだけで出てくるから、まだ宣伝なのか?と思ってると、田中良子は…という一文が出てくる。そもそも田中良子が誰なのかもわからない訳ですからね、こちらは。主人公の名前ですけどね。そして何?と思ってるうちに映画が始まるので、その一文は忘れていき、そこに主題があったとはパンフ読むまでわからなかった。
現実のシングルマザーはこれで元気になるんだろうか?
シングルマザーの現実をなんとなく利用して別のことを表現しただけなのか?
とってつけたような希望なんかいらない。
コロナ禍で、このテーマでよく撮ったとか、俳優陣への賛辞だけで、批判がでてこないのなら、日本の映画界には私はやっぱりついていけない。
尾野真知子の力演はもちろん、息子役の和田庵、主人公の同僚役の片山祐希よかった。さらにたった2分ぐらいふら〜っと自転車に乗ってただけで、あとは写真のみの出演のオダギリジョーの存在感は特筆ものかも。俳優陣の良さが救いの映画ということになるのかもしれません。尾野真知子ファンにはお勧めでしょう。
信念に従って生きる母子家庭の大変さを痛感させられました…
世の中は、うそーってことだらけ。
池袋プリウスミサイル事件的な情況で30歳の旦那を亡くした7年後の嫁(母)と13歳の息子の話。
アルツハイマーであったと罰せられることもなく天寿を全うした上級国民な加害者の葬儀からストーリーは始まり、思想を貫く姿、生きる姿をみせていく。
ROCKな男に惚れた女だけど、彼女はROCKというより賢く生きられないだけにみえる。まあ物語として、こういう人柄の設定は嫌いじゃないし、熱さと哀しさは好きだけど。
どうでも良いドラマーらしき男のその後はいらなかったし、ケイの親父に一言ぐらいあっても良かったんじゃ?とは思ったけれど、このストーリーにこのオチですか…w
生きる理由は、自分の場合ざっくりいうと、死ぬ理由がないからかな…。
惜しい。
いま苦悩する女性の物語
コロナ禍である現在を描いた作品です。
夫を交通事故で死亡した7年後の物語で、ルールや価値観に縛られた人生を歩む女性の先の見通せない苦悩を描いてるんだけど、私的には共感を感じることが少なかったです。
耐え忍んで生きてるんだけど、戦わないことがルールになってる様でどうしてもスッキリした感じにはならなかったです。またお金についても、金額が映像で流れるんだけど楽観的なのかどの様に稼ぐのかに言及しなく流されるままに進む感じが。
最後にルールを逸脱し始めることで、少しずつ社会で生きることが苦だけではなく笑顔が見えることが救いなのかも。
ヒューマンドラマから名作誕生❗️
高評価からの参戦。
確かに、納得。
いつもは内容が面白いか?だけのミーハー評価ですが、これは映画と言う評価にふさわしい。
ヒューマンドラマは苦手で飽きる、時計も度々、、、が毎回。
この映画は更に上映時間も長め。
耐えられるか心配でしたが、そんなことはなく全く時間も忘れるほど良かった。
派手じゃないのに、脚本やシーンに無駄がなく、夢中にさせる。そして名演技。
尾野さんは勿論、息子と永瀬正敏さんが凄く良かった‼️
誰かがレビューに、こんなにいい映画なのに上映館が少な過ぎると書かれていたが、それも納得。せめてロング期間の上映を望みます。
PS:上映前の尾野さん石井監督の舞台挨拶も良かった。
決して軽快なトークでは無かったが、ゆっくりと味のある時間だった。近くでお目にかかれて嬉しかったな。
1人の男性を愛した女性の生き様
これが、オレの自慢のかあちゃんだ!
昨今の邦画上映本数の乏しさは悲しいですが、こちらは鑑賞後の感覚がとても良かったです。
きっとあなたの身近にも居る親子の話。
新型ウィルスのおかげで貧しさに拍車がかかり、荒んだ世間に冷たくあしらわれ、負のスパイラルと言うしかない状況に追い込まれる。
良子、純平、ケイ、涙を流しながらも不器用に真っ直ぐに、まっとうに生きている。
すごい人たちです。
わたしには純平くんに似た年頃の息子がいて、ひどいイジメの場面には身体が震えました。このご時世、子供たちの心は傷ついています。
わたしたち大人にできることは、困っている人には手を貸し、真面目に生活する姿をみせることかなあと思いました。
その点良子は立派な良い母親です。
ラストシーン、純平の声で「これが、オレの自慢のかあちゃんだ!」
あの親子は固い絆で結ばれ、この先幸せを掴むと暗示させる場面でした。
素晴らしい映画でした。
コロナ禍で深まる搾取構造の闇を、茜色に染める
既得権益を持つ者が作った「ルール」の中で、弾かれないよう「芝居」をしながら生きる。その中で募る憤り、それを超えた怒り。
そうした現実に、「情念」を持ち、「ロックに」生きる田中良子に、いつか救いがあるよう、祈りながら観ました。
苦しい現実を前に、意味を求め過ぎれば虚しさが生まれ、でも意味も見出さずにただ居るのはもっと辛い。
「いたしかたなく受け止める」運命論と、「それでもこのためにがんばる」という自由意志。
抗えない現実を、どう捉えれば「マシ」なのか、どう生きれば幸福であるのか、答えの出ない問いがずっと巡っています。
最後のシーンで「いつものセリフ」を求める息子に、「まぁ、がんばりましょ」と言わせなかった脚本に拍手。
だってじゅうぶん、がんばっているもの。
悪い冗談みたいなことばかり起きる世界で
尾野真千子さんの活躍を目の当たりにする昨今…単独主演映画ということで楽しみにしていた。
若い頃から才能を発揮してオリジナルの良作を創り上げてきた石井裕也監督の作品は必ずみるようにしている。
スターサンズ制作、河村Pということもあって社会の矛盾や歪みに斬り込んでくるのだろうな…と。
コロナ禍の今、水面下に潜んでいる悲痛な叫びが予想以上に詰め込まれいて刺される映画だった。
元高級官僚が起こした交通事故で夫を亡くした尾野さん演じる妻と中学生の息子を軸に描き出される世の中の歪み。
夫への賠償金は受け取らず息子・純平を1人で育て、施設に入院している義父の費用、夫の愛人の娘の養育費も払っている良子のプライド。ニコニコ笑う顔の下に苦しむ姿が見え隠れしていた。
カフェの破綻。バイト切り。夜の仕事とのダブルワーク。息子のいじめ。同級生の嘘。
これでもか〜これでもか〜と迫ってくる苦しみに押し潰されそう。
同じ店に勤めるケイちゃんもとにかく苦しい。
尾野真千子さんの熱演と引けを取らない片山友希さんの存在感が心に残って泣けた。
世の中の歪みに振り回されながらも信念をもって逞しく生きる良子と息子の姿にパワーをもらえた映画。
悪い冗談みたいなことばかり起きるこの世界…必死に生きて生きる人びとの生き様。
石井裕也監督の本気を見た!
コロナ禍の今だからこそ
観るべきなのに映画館が閉まっていて心から残念で口惜しいと思う。
一日も早くコロナが収束してこの親子の未来が輝きますように。
生きるための価値観 その優先順位…
息子以外の男&通路挟んだ隣の客(男)
今をその場で切り取って映画にするって、すごく勇気あると思う。
園子温の「希望の国」とかもそうだけれども、まだ答え出てない事を映画にするって大変だと思うのよね。
だから、この時期に大きなお葬式?とか自転車による移動距離?とかステレオタイプな不良中学生とか、まあいろいろ違和感あってもそれを上回るエネルギーを感じた訳です。
息子以外の男の登場人物がみんなどうしようもなくて、でもほんとにあれくらいどうしようもない男ってふつうにゴロゴロいて、そこはすごいリアリティーだなと思いました。
「風俗とかシングルマザーならすぐやらせると思ってる!」ってセリフに笑ってた男とかいて、作品内の登場人物かと思ったよ。
様々な事に振り回されて、もがいて、あがいて、戦って、開き直る事を示してくれる作品です。
以前から気になっていた作品で、鑑賞した方の評判の良いのですが、都内では渋谷の「ユーロスペース」のみの上映となかなか厳しいですが、なんとか機会を作って観に行きました。
で、感想はと言うと、良いね。
なかなかずっしりどっしりな感じで、引っ掛かる部分での「フック」も十分で見応えがあります。
何よりも尾野真千子さんがやっぱり良い♪
アルツハイマーを患った高齢の元官僚の老人が運転する車に交通事故で夫を亡くした良子。
理不尽な事故と加害者側からの謝罪が一切無い事から賠償金を受け取る事を拒否し、また加害者の葬式に訪れるが「嫌がらせ」とされ、一切の焼香にも拒否される。
中学生の息子の純平をひとりで育て、施設に入院している義父の面倒もみているが、経営していたカフェはコロナ禍で破綻。花屋のバイトと夜の風俗の仕事の掛け持ちでも家計は苦しく、息子は言われなき差別と風評被害に苛めにあっている。
だが、どんな時でも「…まあ、頑張りましょう」と前向きな良子。
だがそんな良子と純平、そして風俗店で同じ様に働くケイにも様々な事情があり、皆様々な悩みやトラブルを抱えていた。
世間的に社会的弱者とされるも、前向きに生き、様々な困難を立ち向かっていく。
だが、様々なトラブルが良子たちにのしかかる…
冒頭からいきなりの展開にビックリと言うかショック。
あのオダギリ・ジョーさんをいきなり退場させる荒技はインパクトは抜群であるが、普通に考えると勿体無いw
この事件だけで、あの2019年に池袋で起こった自動車の暴走事故をモチーフにしていると言うのが分かる。
元ネタ(であろう)の事故と映画の内容をリンクさせるのは些か強引であるが、それでも未だに「アクセルとブレーキの踏み間違い」を認めずに裁判で争うと言う姿勢は正直腹立たしいのを通り越して、吐きそうな嫌悪感を覚える。
なので「あの事件」を深く知ろうとするのはあまりにも精神的にもよろしくない。
でも、映画の作品を世の中に問いかける「フック」と言うのには、良い悪いは置いといてかなり効果的。
劇中で加害者の家族は「事故は仕方なし」「国民の為に尽くしてきた親父に対して、あの仕打ちは非常識だ」と言うのは「事故なんて親父の今までの功績を考えれば大した事はない」と言う事なんだろうけど、身勝手な「上流国民」の劇中のセリフとは言え、ムカムカします。
そんなイライラとムカムカで始まったと思えば、尾野真千子さん演じる良子の逞しさと飄々とした態度と行動に呆気に取られる。
もちろん、いろんな事を考えた上での行動かと思うが、貧乏に瀕しても賠償金を受け取らないのは謝罪をしなかった加害者へのせめてもの抵抗と言うのはある程度理解しようとしても、やっぱり全部を理解は出来ない。
生活費を稼ぐ為に風俗店で働くのも賠償金があればそうはならなかったのではと思うだけに、どうしても良子のエゴに感じてしまうんですよね。
でも、この辺りの良子の「正義」に呆気に取られるが多分、これも作戦の内で「観る側を手玉に取ってる」んでしょうね。
それぐらいに良子のしたたかさと純情、バイタリティが画面を通してグイグイきます。
あと、尾野真千子さんのベテラン(に見える)風俗嬢っぷりにはドキドキしますw
キャストは尾野真千子さんを筆頭になかなかな布陣で力強さを感じます。
個人的にはケイ役の片山友希さんが良い感じ♪
純平役の和田庵さんは絶妙なチョイスかと思います。
良い部分が多くて、観ていてもグイグイ引き込まれる部分があるんですが、ただそれでもツッコミどころはあるw
そんなツッコミどころを書いておくと…
・純平のいじめっ子が放火未遂で純平達が団地を追い出されるのに、いじめっ子達には何もないのか?
う~ん…いろんな物が消化不良であってもここは台詞だけでも良いのでキチッと決着をつけて欲しかったなと。
弱みに付け込んだり、自己満足の為に弱者をいたぶるのは描写であっても大嫌い!
他の部分は割りとオチがついてるのに、これだけほったらかしになってるのは納得いかんです!
・良子が勤めている風俗店「カリペロ」w、他の女の子が居る描写がない(殆ど)!
控え室は結構広いのに2人では結構もて余している感じ。
交流は無いにしても、他の女の子達の描写があるともっと良かったかなと。
・良子の同級生の熊木との出会いは出来すぎじゃあないすか?
かなり唐突過ぎw
ちょっとドラマを作り過ぎてしまっていて、分かるんだけどなんかこのエピソードだけ浮いてる感じがするんですよね。
放火の後に団地を追い出されるのが決定して、良子が包丁をカバンに入れて、向かうのはいじめっ子達か?はたまたここまで無関心を装った学校の担任か?と思いきや…自分を軽く遊びのつもりでもてあそんだ熊木だった!
思わず“そっちか~い!”とツッコミましたw
自分の大切な息子を苛めて、挙げ句の果てに放火未遂とは「お天道様が許しても私が許さん!」と来るのかと思いきや、自身の「女」の部分のプライドが最優先w
いや~ツッコんでしまいましたw
他にも幸子と滝のシーンは思わず「えっ?」となって「あのシーンているのか…」となったりしますが、永瀬正敏さん演じる風俗店「カリペロ」の店長の唐突な登場であってもスカッとする仕事人っぷりに思わず「カッケー!」となって、その後の仕事きっちり!っぷりにカタルシスが下がっても、出来ればいじめっ子達にも成敗して欲しかったし、ケイを幼少期からレイプした父親が火葬場にしれっと来ているのにも良子もしくはカリペロ店長の正義の鉄槌が降るかと思いきや…降りなかった。
また、13歳でスポーツとかやっているそぶりがないのにやたらと純平がムキムキっとした細マッチョだったりw、あと、純平のIQの異様な高さが光明であるにも関わらず、そんな天才としての事実も後々にはスルー気味だしw
年上の女性のケイに憧れて、自転車をかっ飛ばす純平の真っ直ぐな純情は思わずうなずいてしまいますが、純平の思春期の恥ずかしい妄想行為にはあんまり触らないでおくれw
そんな何かと観る側の「ひだ」をくすぐる「何か」尾野真千子さん含めて、色々と用意しているんですよね。
石井裕也監督の作品って、今までも「舟を編む」や「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「町田くんの世界」といった個人的には良作があるんですが、前作の「生きちゃった」は個人的にはちょっと「やらかした」感があって、少しランクダウンw
でも、人物のひだを大いに触って、刺激して、優しくなぞる様な描写が気になるし、割と好きなんですよねw
でもなんと言ってもやっぱり尾野真千子さんに尽きるかなと。
茜色に焼かれると言う、何処かノスタルジックで優しい感じに聞こえても、ファンタジーにもミステリアスにも感じるタイトルも秀逸。
ラストの自転車の二人乗りもとても良いし、何処か突発的に決めた介護ホームでのリモート芝居も呆気に取られながらの純平のツッコミ的セリフがナイス。
「そこに愛はあるんか?」と言われたら、間違いなく愛はありますね♪
怒りや苦しみ、他人の無関心や無自覚で理不尽な悪意。様々な事に振り回されて、もがいて、あがいて、戦って、開き直る。
「明けない夜はない」なんて言いますが、夜になろうとする夕暮れの茜色に焼かれる様に染められるのは、他人がどう言おうが精一杯生きている証。
都内での上映館が少なくて、物凄く割を食った感じが勿体無い。
でも、とても見応えのあって、刺激もある「良い」作品かと思います。
興味があって、まだ未鑑賞の方は是非是非な作品。
お勧めです♪
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