明け方の若者たちのレビュー・感想・評価
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「街の上で」と「劇場」の中間に位置する“シモキタ・ムービー”
下北沢映画祭からの依頼で企画された今泉力哉監督による“ご当地映画”「街の上で」(2021)を筆頭に、又吉直樹原作・行定勲監督「劇場」(2020)、少し前には魚喃キリコ原作・冨永昌敬監督「南瓜とマヨネーズ」(2017)など、下北沢を舞台に若者たちを描く映画が近年増えている。もっとも本作「明け方の若者たち」の冒頭は明大前だし、途中で高円寺も登場するので、下北沢限定というわけではないのだが、特に印象的なロケーションとして使われているという意味で大雑把に“シモキタ・ムービー”とくくれるのではなかろうか。“サブカルの街”下北沢で、音楽や演劇などの夢を追う(そして往々にして挫折する)若者たちの生きざまに恋愛模様をからめて描くことが、定番化しつつあるのかもしれない。また同時多発的に同じロケーションの映画が作られることは、ある作品の登場人物が別の作品の人物と道ですれ違っていたりして……という妄想を促したりもする。
本作で北村匠海が演じる“僕”と、黒島結菜が扮する“彼女”の関係性は、「街の上で」の回遊するような軽やかさと、「劇場」の突き詰めた重さの中間あたりだろうか。“僕”と“彼女”の恋愛にはある秘密があり、その事実は後半になってから回想シーンで明かされるのだが、この構成は巧みでもあり、ずるいとも感じた。その事実ゆえに二人が逡巡し葛藤したであろう内面を、あまりにもあっさりと、ある種“おしゃれな雰囲気”で流している気がするのだ。この二人の恋愛を肯定的に受け止められるか、そうでないかによって評価も大きく変わるだろう。
松本花奈監督は若干23歳ながらそつなく、手堅くまとめすぎている気もする。オリジナル脚本で撮った作品もいつか観てみたい。
個人的な経験で恐縮だが、二十代から三十前後に下北沢と高円寺に住んでいたことがあり、朝まで仲間と飲み明かす感覚も痛いほどわかる。「街の上で」の評で書いたことだが、かつて当たり前にできていたささやかな楽しみが、昨今はコロナ禍のせいでハードルが上がってしまっていて、今の若い世代は少し気の毒だなとも思う。
明け方までハイボールを飲みたくなる映画
2つの作品がある意味がある
毎回何の予備知識もなく映画を見ているので、迂闊にもスピンオフ(ある夜、彼女は明け方を想う)の方から見てしまったが、この作品も等身大で嘘のないいい物語だった。
この作品の大どんでん返しが、彼女からの返信がない理由だ。
しかし同時に、クジラ公園で話したときからそれは彼に伝えられていた。
画像では、外すことのなかった結婚指輪をした左手は抜かれていない。
この作品もまた一人称で作られていて、名前のない主人公の彼の見たことしか描かれていない。
そしてこの作品で描かれている些細な偶然は、スピンオフで明らかになる。
彼ら二人は、すれ違いながらもお互いを思い続けている。
明け方のクジラ公園のベンチに置かれていた2缶のハイボール。携帯を店に忘れたしぐさがあの時の彼女を思い出させ思わず笑ってしまう主人公。
嘘のなかった二人の気持ち。
ただ、「彼女は既婚者で、一度作った幸せを壊してほしくなくて、たまに会ってくれるだけでよくて、浮気も不倫もよくわからなくて、そんなことどうでもよくて、意味わかんなくて、でも誰も許してくれない… 周りにどう思われてもいい…」
夢が壊れてしまう演劇は、二人も、仕事も、ほかの誰かの人生も暗示していた。
何もかもが思い通りにならない人生。
「渋谷をジャックしようぜ」も、
「この機会に、めっちゃいい男になろうぜ」
という言葉も、
どこか嘘っぽいけど、それを信じようとする若さがある。
「彼」は、人生で初めて本気になったのが「彼女」だった。
初めからわかっていながら、どうしようもなくなっていた。
にもかかわらず何もできない。体調不良でしばらく会社を休む以外何もできない。無力感。行き場のない怒り。
彼の頭の中に「魔法みたいな時間だったな」と過去形で呟いた彼女の言葉がこだましていたのかもしれない。そして決して外そうとしなかった結婚指輪。
「これ以上立ち入ってはならない」
それが本当に彼女の気持ちなのか、それとも「常識」を持ち出して自分を規制しているだけなのか? きっと彼は自問自答を繰り返したのだろう。
動けば、誰かが傷ついてしまう。
そして、何もしないという選択。同期たちの結婚、転職… 未だ彼女なんか作れそうにない「彼」
彼の引っ越しの手伝いに来た彼女と同期。朝まで飲み明かす幸せ。思いっきり楽しむ若者たち。自分らしいふるまい。自由で自然で、嘘がなく、そこには「明日」などという果てしなく遠い未知な存在などない「明け方の若者たち」の姿があった。
ただ、彼が振り返ってみれば、その時も、旅行の時も、クジラ公園のときも、いつももしかしたら「彼女」は、きっとその日がやってくるという「明け方」が来ないでほしいと思っていたのかもしれない。
来てほしくない現実。
彼は明け方のクジラ公園に佇み、いつも彼女はそんな明け方が来ないことをひたすら願っていたのではないかと気づいたのだろう。
どうにもできないこともある。この作品が伝えている人間模様のひとつだ。それを押し殺しながら生きて、やがてぽつんと彼女の考えていたことに気づく。苦しみの片方は彼女が背負っていたのだ。
そう思えたとき、彼にはクジラ公園での明け方がすがすがしく感じられたのだろう。
本当にいい作品だった。
原作読了済み。 最後の数分で落ちたので採点はとりあえず…で。 ただ...
原作読了済み。
最後の数分で落ちたので採点はとりあえず…で。
ただ、ほぼ原作通りに進んで行くのでもう一度観ないと…と言った思いには至らない。
(原作と違う辺りは、出来る後輩と悪友を。同僚の1人で賄っていたくらいだっただろうか?)
それは何故かと言うと。彼女に関するストーリー展開が、読みながら「ん?一体どうゆう事?」…となり。その後の彼のグチグチとした女々しさにはウンザリしてしまったから。
映画では彼女の《謎》を分かりやすく処理していていたが、その後の彼のグチグチっぷりは落ちてしまった側がああだこうだとは言えないかなあ〜と💧
黒島結菜の可愛さに多くの男がノックアウトされるのは必死か。
2022年 1月6日 TOHOシネマズ日比谷/スクリーン7
こんなハズじゃなかった……
何者にもなれなくて
あまずっぱい青春と突き付けられる現実
振り回された先の無い恋愛
純愛ものではない
最初、「花束みたいな恋をした」的な映画かと思って見始めました。
というか脚本自体、多少そっちの方向にミスリードしているようなところもあると思いますが、実際はそういう話ではなかった、というのがこの映画のプロットの核心にもなっているわけですけど。
北村匠海は、夢を持って社会に出たのに、壁に当たってもがく若者という、ともするとステレオタイプな役柄をそれなりに熱演していると思います。
それに対して、相手役の黒島結菜は、ちょっとミスキャストではないかな?
この役をやるなら、もう少しメンヘラ的な感じだったり、陰と陽、奔放と貞節といった二面性を感じさせるような女優さんでないと。
ちなみに、ラブシーンが思いのほか濃厚で少々驚きましたが、そこでも、黒島さんでは肉体的魅力に乏しいためか、北村匠海の腰の動きばかり見せられ、苦笑してしまいました。
前述の核心とも関連する話ではあるのですが、あれの前後で物語のトーンが変わってしまうため、この映画は結局のところラブストーリーでも青春群像劇でもなく、どこか中途半端なものになってしまったような気がします。
もちろん、原作があるので仕方ないのでしょうが。
それと、要所要所で挿入される音楽の使い方や選曲が非常にチープで、興ざめしました。
女優のキャスティングと音楽の使い方次第では、もっとずっと良い映画になったのでは?
黒島結菜、炸裂‼️
マジックアワー
最初は爽やかな青春映画かと思い、自身の大学生〜社会人成り立ての頃の感覚を思い出していたら、まさかの展開。
とても綺麗な顔だちで優しい人なんだけど、彼女に裏切られてから恋愛が苦手になってしまった大学の知り合いを思い出した。彼は立ち直って元気になったかな。
社会人1,2年の頃はまだオールもできて、明け方まで楽しめて、大学生の頃よりはお金があって、マジックアワーという言葉に頷いてしまった。
オール明けの朝って、楽しさの余韻と眠気と、朝の澄んだ空気と、自分たちを置いてけぼりにしたまま1日が始まるような、あのなんとも言えない感覚があるのを思い出した。
大学生までが楽しいんじゃないか、と思いがちだけどいつだっていまにしかない楽しさや良さがあるよなあと思った映画だった。
めめしくてつらいよ
酷評してます
リアリティ抜群
起承てーーーん結!
なんとも言えない気持ち
対等な相思相愛って難しい
1990年前後生まれ、東京の人向け
35本目。
時代は10年前から現在にかけて、舞台は東京。北村匠海が演じる主人公は当時大学4年生だ。そのため、その時代に東京で大学生をしていてそのまま東京で働いた人にとってはドンピシャの作品だと思う。
主人公は何者かになりたい自分を探し求め、これじゃないと現状に不満を抱いて同志達で主張し合う。しかし、その青臭い自意識とは裏腹に、次第に社会に順応せざるを得ないと諦観を抱くようになる。生きていくためには仕方がないと。
彼は恋愛も上手くいかなかった。途中で明かされる交際相手が既婚者という事実。当の本人達ははじめからそれを承知で交際をしていたが。それを長い時間引きずっているようだった。
この映画は仕事も妥協し、恋愛も上手くいかないが、それでも人生が続いていくというメリーバッドエンドの形をとっている。また、主演の二人は目の保養になった。特にヒロインの女優。
昔は良かったなと感傷的になる一方で、こうなったら嫌だなとモヤモヤもする。まだ青臭さが取れていない夢想家なんだと思う。好きなように生きることってなんで難しいのか。現実ってしんどくないか。
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