「『ほんとそれな』」明け方の若者たち いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
『ほんとそれな』
この作品を観た理由は2つ。一つは明大前沖縄料理屋『宮古』がロケ現場。そして、若い頃によくあった都市伝説ででいうところの"印刷会社指切断"話。
宮古は私も学生時代によく行った店。劇団の千秋楽の反省会などで店の店主から鍵を借りて、朝まで泡盛で潰されたものである。
そんな懐かしさに誘われ、そして映画クーポンが期限切れに迫っていたので何か観なきゃ勿体ないと思ってのチョイスだ。
なので観る前にガッツりネタバレ考察を読んでしまった。今作品の最大のキモである"信用ならざる語り手"という叙述トリックを使用したストーリーは、粗方理解した上での鑑賞である。
『実は結婚していてそれでも関係を持ちたい』という願望をお互い享受しながら突然の別れに困惑と堕落を経た後にほんの一寸の前向きさを予感しつつカメラは明け方の明大前の空にパンしてfinといった感じだ。
原作未読なので世界観の摺り合せがどうなっているのかは分らないが映画だけでいったら、展開やトリックといったものは悪くはない。よくある不倫話を
新しいアイデアで演出することは興味深い。
但し、俳優陣の能力不足、特に主演の北村匠海の表情の乏しさが悔やまれる。財布の中のレシートの山等々伏線は張っているのだが、やはり一番の伏線は、幸せの中の一抹の不安感をどうやってカメラの前にみせるかがキモなのであろう。
今作品はそれが出来ていたか、否である。
バスローブ濡れ場なんてのは、女優としての黒島の度胸の無さ、いや事務所の都合なのかもしれないが、せめて男の方は裸でケツを振るのが見せ場なのではないのだろうか。
種明かしした後のストーリー展開の鈍重さは頂けないだけに、そこまでのドラマ性をもっと掻立てて欲しかった演出である。