「持つべきものはやはり友」明け方の若者たち 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
持つべきものはやはり友
「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」
その言葉から始まった、彼女との沼のような5年間。
無事社会人になったものの、思い描いた理想のようには上手くいかない。
同期の親友と彼女の3人で共に過ごす時間が、何よりも救いだった。
しかし、彼女とは決して結ばれない、ある秘密があった。
くじら公園でハイボールから始まった2人の恋。
予想通り前半のイチャイチャな多幸空間は大いなるフリで、これもまたヒロインが可愛ければ可愛いほど、現実に引き戻された瞬間の反動で苦しくなる。
明大前スタートということで『花束みたいな恋をした』と、名曲を使った1人の男の話ということで『ボクたちはみんな大人になれなかった』と比較されがちだけど、これはより一層喪失感が強かった。
仕事中も孤独だし、彼女の喪失からの時間も長い(長く描かれている)。
2人が犯した罪の報いによって2人は引き裂かれる。
ただ、側から見れば正真正銘の〇〇なのに、寧ろこの〇〇は報われて欲しかった。
彼女の寂しさを含んだ目は、彼女がただのあざとく安い女というだけじゃないことを予感させる。
朝ドラヒロインにも抜擢され、今年ますます飛躍しそうな黒島結菜の新たな魅力が見れてとても良かった。
井上祐貴もあまり見たことなかったが、ポスト伊藤健太郎といった感じで、今後に期待。
そして北村匠海は本当にちょうど良い。
しっかりカッコいいのにしっかり溶け込む。
社会の中での“僕”のポジションは私その物だった。
切断された指に興奮してしまう。
分からんでもないけど。
KIRINJIにきのこ帝国、そしてマカロニえんぴつ。
エンディングの『ハッピーエンドへの期待は』は映画を観てからだとしっくりくる。
帰途の暮れ泥んだ空が、色は違えど明け方の彼らと重なってエモかった。