「若き感性で作られたエモ×苦甘ラブストーリー」明け方の若者たち たいよーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
若き感性で作られたエモ×苦甘ラブストーリー
この1年の締めに相応しいエモさと若々しい感性。あの頃を思い出すラブストーリーが溢れた2021年の終わりと2022年の明け方を予感させる作品。
結論から言うと、少し粗はある。綺麗事で突き通すには難しいチャプターだし、ややベタではある。プロローグが長く、エモさだけで乗りこなしてしまうのでちょっと物足りない。しかし、その瑞々しさは今年の中でも屈指で、次第に作品のカラーが強くなっていくことで、若さが作品に透過される。動きが大きい訳ではないし、かなりターゲットは絞られるような作品にはなっているが、若い人には大いに刺さると思う。
ヤングアダルトにエイリアンズ、ヴィレヴァンに公園…。下北沢や高円寺、渋谷といった街並みに青春が裾を引っ張る。だからその沼があまりにも深く、抜けられないような感覚がする。その鋭利さと無垢な表情が主人公を包み込むような感覚がして胸が痛い。しかし、こうして1つの物語を駆けた後は、不思議な清涼感が体をまとい、少し歩いてみたくなる。ハイボールを片手にして。
今最も若者を体現する主人公、北村匠海の物憂げな表情はいつ見ても刺さる。臭み1つ感じないし、エモさの体現には申し分ない。また、黒島結菜は新たな1面を感じさせてくれるので、凄く作品の持つ衝撃に尖りを加える。彼女でなくてはいけなかったのだと思わせる。朝ドラのヒロイン前に1つ新境地を見せてくれたこと、ただ今は余韻と共に噛み締めている。
アマプラでは、彼女の視点が描かれるアナザーストーリーが配信されることも決まっている。たぶん定期的に観たくなる気がする。若者であるうちは、きっと。
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