アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド

劇場公開日:2022年1月14日

アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド

解説・あらすじ

実写版「美女と野獣」のダン・スティーブンスが“完璧な恋”を仕かけるアンドロイドに扮したラブストーリー。ベルリンの博物館で楔形文字の研究をしている学者アルマは研究資金を稼ぐため、ある企業が実施する極秘実験に参加することに。彼女の前に現れたハンサムな男性トムは、初対面にも関わらず積極的に彼女を口説いてくる。そんなトムの正体は、全ドイツ人女性の恋愛データ及びアルマの性格とニーズに完璧に応えられるようプログラムされた高性能AIアンドロイドだった。「3週間の実験期間内にアルマを幸せにする」というミッションを課せられたトムは、抜群のルックスと穏やかな性格、豊富な知識を駆使したあざやかな恋愛テクニックで、過去の傷から恋を遠ざけてきたアルマの心を変えようとするが……。アルマを「まともな男」のマレン・エッゲルトが演じ、2021年・第71回ベルリン国際映画祭で最優秀主演俳優賞を受賞。2人の実証実験を見守る相談員を「ありがとう、トニ・エルドマン」のサンドラ・ヒュラーが演じた。ドラマ「アンオーソドックス」など監督としても注目を集める女優マリア・シュラーダーがメガホンをとった。

2021年製作/107分/PG12/ドイツ
原題または英題:Ich bin dein Mensch
配給:アルバトロス・フィルム
劇場公開日:2022年1月14日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第71回 ベルリン国際映画祭(2021年)

受賞

最優秀主演俳優賞(銀熊賞) マレン・エッゲルト

出品

コンペティション部門 出品作品 マリア・シュラーダー
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(C)2021, LETTERBOX FILMPRODUKTION, SÜDWESTRUNDFUNK

映画レビュー

4.0 「ありがとう、トニ・エルドマン」のサンドラ・フラーが脇役ながら好演。ベースと鍵盤のデュオ、ブレーマー/マッコイの劇伴も良い

2022年1月24日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

楽しい

知的

まずキャスティングがいい。主人公アルマ役のマレン・エッゲルトは、そろそろ中年の域にさしかかろうかという年齢で、美人ではあるが地味目で堅物の印象。研究一筋で恋愛にはあまり縁がなかったのだろうなと自然に思わせるルックスだ。アンドロイドのトム役には端正な顔立ちのダン・スティーブンス、的確な身体動作で機械的な動きを見事に演じてみせ、驚きとともに笑いも誘う。英国人俳優ゆえドイツ語に訛りがあるのだが、それをしっかり脚本に反映したのも巧い。2人に比べ出番は少ないが、「ありがとう、トニ・エルドマン」で最高だったサンドラ・フラーが相談員役で健在ぶりを見せてくれる。

人間と機械(ヒューマノイド、AIなど)の恋愛の可能性を描くSFテイストの作品は多数あるが、人間が男性、機械が女性という組み合わせに偏っていたのは、SFの作り手に男性が多かったのも一因だろう。原作の短編小説を書いたエマ・ブラスラフスキ、監督のマリア・シュラーダー(役者でもある)はいずれもドイツ出身の女性で、かの国で女性の社会進出が進んでいることを喜ばしく思うし、女性側の視点や考え方を学べるという点で男性にとっても貴重だ。

とはいえ、本作はハードSFというわけではなく、どちらかと言えばアルマとトムの関係性の変化を通じて、人間と機械、あるいは人間同士のコミュニケーションとは何かという、ある種哲学的な思索を促すような内容になっている。ジャンルは違えど、平野啓一郎氏の小説『本心』で描かれた、仮想空間で故人を再構成する“ヴァーチャル・フィギュア”を介して問いかけるテーマに通じるものがあると感じた。

サウンドトラックのセンスもとてもいい。本作で初めて聴いたのだが、アコースティック・ベースのジョナサン・ブレマーとキーボードのモーテン・マッコイのデンマーク人デュオ、ブレーマー/マッコイによる北欧ジャズ風味の空間と残響を活かした音楽が、映画のエモーションに心地よく寄り添う。Spotifyで多数の曲が聴けるので、気に入った方はぜひ探してみて。

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高森郁哉

4.0 想像以上に奥深い”感情のドラマ”だった

2022年1月14日
PCから投稿

とろけるようなラブコメディかと思いきや、その実、人間性のずっと奥深い領域へといざなってくれる作品である。近未来SF的な装いがあるわけではないのに、ほのかにそれが香るのは、ベルリンの街並みが持つ特別な雰囲気のせいか。ダン・スティーヴンスにしても、喋り方や身のこなし、目の動きだけで、その特殊な役柄をまっとうしてみせる。こういったアイディアや演出、カメラのアングル一つで観る者の想像力を刺激するあたりに作り手の巧さが滲む。主人公が楔形文字の研究者という設定から見えてくるのは、太古の昔からアンドロイド技術に至るまで、絶えず”感情を伝えること”に腐心し続けてきた人類史の片鱗だ。一方の横軸には、研究実績や私生活、老いた父親との関係性や、過去の悲しみの出来事などが幾重にも折り重なる。その縦軸と横軸が交錯した人生のその場所で主人公は何を思うのか。押し付けがましさのない自然体な結末が独特の穏やかな余韻を残す。

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牛津厚信

2.5 退屈

2025年9月3日
iPhoneアプリから投稿

アマプラで観ましたがとにかく退屈
長い映画の大半が退屈な会話
せめてあと30分短ければ⭐︎3かな

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承太郎

4.5 超真面目なドイツ人

2025年7月31日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

解説にはラブストーリーとあったが、この作品をジャンル分けすればSFになるように思う。
そしてこの作品は、様々なモチーフを使いながら、人型ロボットと人間とは「伴侶」になれるのかどうかを視聴者に問うている。
問うているので物語は多義的に感じるし、そのように作られている。
冒頭 主人公であるアルマがとある会社に選ばれ、こことについて意見報告を求められることになる。
アルマのほかにも「博士」とか「ドクター」と肩書きのある人物たちがこの実験に参加している。
近未来SF
そして少し前に言われたシンギュラリティ
そして昨今身近になってきたAI
当然ロボットなので、その技術はAIとブレインマシンインターフェイスのようなものだろうか。
これを開発した会社の意図は不明だが、表面上描かれているのが人間とロボットが伴侶として生きていく未来。
その根拠として、アルマの実家にいる認知症の父の介護の問題が設定されていた。
このSFが秀逸なのは、この近未来の技術と考え方を受け入れられるのかどうかということを映画の力を使って、アルマの過去現在、そして来るべき未来を想像しながら「考えさせる」構造になっていることだろう。
だからこれに関する答えは、視聴者個人が持てばいいということになる。
そして私は、アルマのケースを想像する。
アルマはトムを追い返した。
それがどうしてもできないという理由から、「私のために去って」と言った。
おそらくトムには360度にセンサーがあるのだろう。
トムにはアルマがどこにいるのかわかる。
これは元カレユリアンが大きな絵を取りに来た後、車にその絵を運ぶシーンでわかる。
つまりトムは去った後も、上からアルマが見ているのを知っていた。
それ故、パフォーマンスとしてゴミ箱に腕を突っ込んで「私はゴミになった」というメッセージを彼女に送った。
このシーンは重要で、感情というものがないロボットは、常に人間の心情を学習しながら読み、先回りして行動するプログラムになっている。
そもそもアルマを幸せにするためにプログラミングされているので、彼女の気持ちが動くように行動している。
アルマは、この会社が開発した人型ロボットについて報告書をまとめた。
「人間以上の存在」と評価する半面、「ボタン一つで人間の心を満たしていいのか」という疑問
そして「私は反対する」という強い意見
葛藤しながらようやく導き出した答えと、ボタン一つで思い通りになってしまうことへの怖さ。
それの答えは正しいのかという疑問。
この彼女の報告書にたどり着くまでのアルマの過去 初恋と恋人ユリアンと妊娠と、3年間もの研究が他の研究機関に先を越されてしまったこと。
この満たされない気持ちのオンパレード
不条理で理不尽なこの世界への不満
ユリアンの新しい伴侶 彼女の妊娠 もうやり直すことも敵わなくなってしまった「現在地」に立つアルマ
そして、その代用としてのロボットという考え方
アルマの思考 研究者としての論理的思考
この割り切れない思いがある事実
最後に会社の女性(ロボット)が訪ねてきて、おそらく失踪してしまったトムを見つけたのだろう。
そこへ向かったアルマ
「あなたがいないとただの人生になる」
ここに隠された人間の本心 満たされたい想いが描かれていた。
「君が見つけてくれるまで」
そう語ったトムの「作戦」
それを作戦とはどうしても思えない人間の「想い」という感情
アルマが思い出した初恋相手のこと
人は皆、そんなころからずっとずっと満たされない気持ちを抱え込んだまま生きてきた。
大人になって、キャリアを見つけ、そのころに出会う恋人
妊娠がきっかけで結婚を約束したけど、おそらく流れてしまい、それがきっかけで二人は別れることになったのだろう。
同時にキャリアでは世界で最初の文字を持ったシュメール文化と、その後に文字を持ったペルシャやアッカド
彼らが文字として残した「詩」と隠喩という概念の研究調査
文字の余白
この隠喩に例えられるこの作品の余白はとても重要な部分だと思う。
アルマという人物の人生は、決して不幸ではないものの、いつも肝心な部分が満たされないという思いで一杯になっているように感じる。
それでも大学で教鞭をとるように、彼女は生きているからこそ前を向いている。
父の認知症と徘徊というリアルな現実
妹に面倒を押し付けている感覚も否めないのだろう。
このどうにも満たされない状態が限界に来た時、あるいはロボットの存在が必要になるのかもしれない。
論理的思考は、本当に正しい答えを導き出すのか?
恋人と別れ、競争に負け、それでもなぜ立ち続けなければならないのか?
何もかもが八方塞になったとき、ロボットに頼るのは間違いなのだろうか?
満たされない心を少しでも満たすためにロボットを使うのは間違いなのか?
これらの問いに対する答えを、常に自分と向き合って、自分自身が出さなければダメなのか?
このような疑問がアルマの頭を駆け巡ったのだろう。
力を抜いてもいい場所が、いつの間にかなくなっていた現代社会
どこにいてもそうあるべき自分像を「演じ続けている」
この苦痛に気が付けば、その演じていた自分が足元から崩れ落ちてしまうのかもしれない。
さて、
このSFが現実になったとき、おそらくLGBT法のようにロボットに人権をという概念が登場するだろう。
この作品の余白のひとつとしてこの問題があるならば、まず貧困層を根絶することが優先されるべきだと主張したい。
ロボットを作った会社の思惑はわからないが、貧困層の人権を踏みにじっている連中がロボットの人権を主張することは今のところ許されないとおもう。
この作品を通して見るドイツ人は、うわさ通りに超真面目な人種だった。

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共感した! 7件)
R41

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