偶然と想像のレビュー・感想・評価
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登場人物の言葉と言葉の豊かさ
3話のオムニバスです。ワンカットなのかわかりませんが、セリフ量の多さにアドリブもあるのかもと思いました。どちらにしても登場人物の豊富なやり取りがあるからこそ、作品の世界に入り込み、感情移入もしました。
所々吹き出して笑ってしまうようなやりとりの中に、励ましの言葉が散りばめられている。本当に面白かったです。
見ていて,とてもかゆい映画だったけれど,おおむね描かれている内容...
見ていて,とてもかゆい映画だったけれど,おおむね描かれている内容は深みがあって面白かった.プロットも時々驚きがあったり,自分の体験と共鳴する部分もあり,楽しみつつもいくつか思う事がある.3連休の息抜きにはちょうどいい映画で,視聴後に近所のタバコ屋で一服していると何となく幸せな感じがこみあげてきた.
気になったことは,1日目で描かれている不思議な魅力のある女の子と,それに振り回される男性のこと.この監督の他の作品でも,女性の不思議さ,神聖さ,分からなさに振り回される男性という描写がよく出てくる.作中に登場する女性のうちでも,男性と同じような合理的で自分をコントロール可能な主体として描かれている女性はとても分かりやすいんだけれど,その分かりやすい女性と対比する形で,分からない女性を描くことで際立って見える.今回は途中からその不思議な女の子の視点をとっていたのが面白かったというくらいか.彼らは彼らで悩みが深いのだと思う.自分は男性だけれど,女性と話しているときにいつも思うのは,何かしら悩みを抱えているときに知るべき対象が自分自身であるという事だ.対象がどうであるのかという事よりも,自分がどう思っているのかという事について考えている話をよく聞く.一方で自分の周辺の男性を眺めていても,自分のことを首尾一貫した意思決定をするとみなしていて,自然と外側に感心が向かっているようだ.この男性と女性の謎の周辺については,この監督以上に上手く表現できる人物を知らないかもしれない.おそらく他にもいるだろうから,知っている人は教えてほしい.
2日目では,オープニングのチープなやり取りに辟易したものの,その後の教授との対話のシーンが大きくしびれた.言語化することができない事を安易に片づけてしまうことなく,そこにとどまることを肯定するメッセージであると認識したけれど,結局教授はスキャンダルで追われてしまった.本当に肯定しているのかは謎のままではある.3日目では,初めのシーンが再現されたところで思わずうなってしまった.名前を思い出せないという事,思い出すという事が主題だったと思うのだけれど,結局最後に思い出した名前はどんな意味があったんだろう.むしろ名前なんてものが初めから存在していなかった,二人のやり取りは破綻することもなく続いていたんだろうにと思うけれど.
第3話で受け取った宅急便の宛先の名前
ハッピーアワーを観たときからの熱烈な濱口監督ファンです。「偶然と想像」も期待を裏切らないどころか期待以上の面白さで映画の楽しさを満喫できました。ただ、一緒に観た相方が、第3話で河合青葉さんが受け取った宅急便の送り先の名前に「(小林)ミカ」と書いてあったというのです。僕も宅急便の名前は気になったのですが、確認できずそれが画面に映ったのかどうか確認できませんでした。
もし、宅急便の送り先の名前が「ミカ」だったとすると相方が言うように「…あなたは今幸せなの?」と聞かれたときに困惑して、別人だととっさに嘘をついてしまったというお話しになってしまいます。
本当のところはどっちなのかスゴく気になります。もし、お分かりになる方がいらっしゃったらぜひ教えて下さい。
ただ、どちらであったとしてもいろいろな想像が広がるという点で素晴らしい映画だったことにまったく変わりはないと思います。
長いこと余韻に浸れる映画
異彩で賛否分かれる、観た時は酷評次第に印象深く
2021年劇場鑑賞40本目 佳作 54点
上映初日に渋谷Bunkamuraにて行われた舞台挨拶で鑑賞
これは映画ではない、ただの会話劇で役者の棒読みも酷い、当方滅多に眠くならないのにちゃんと寝た。年間ワースト10入り間違いなし。
と、鑑賞数日は思っていた。
鑑賞から2ヶ月ほど経ってのレビューになりますが大筋気持は変わってない。けど色々な声を聞いたり思い返してみて、今作を真っ直ぐみるのではなく斜めくらいから観るとなんだか新鮮である種印象に残る映画体験だったなあとも思えてきた次第。
役者の棒読みはあえてらしい。知らんけど
またあの脚本ありきの会話劇から生まれる笑いは2021年邦画だとまともじゃないのは君も一緒や街の上でとはまた違う面白みがあったのは間違いないです。
映画好きや海外でこの監督のおりなすフィルムが評価されるのもわからなくはない、鬼才だとは思うよ。
けど免疫がないのかやっぱり今サイトの☆3.9はとても頷けない、それだけです。
偶然から始まる想像、あるいは偶然を想像すること
面白かった。非常に良くできた脚本だと感じた。
長いワンカットの会話でずっと見続けられるシーンを撮れているのも凄いし、その先にさらなる展開が待ち受けているのが、見応えがあった。
コントと言われれば確かにそう感じる設定や展開ではあるが、コントというジャンルでは括られない、人間と人間のグシャグシャな感情のぶつかり合いを見ているような感じがした。
きっとこの映画では、このシーンのこのセリフで観客を笑わせようという意図を持たずに、誰もが真正面からぶっ飛んだ登場人物たちを演出し演じていたのだと思うし、だからこそ笑えてしまうような作品になったのだと思う。日常でたまに起きる、ありえないような笑えてしまうことを体験するような感覚である。真面目だから面白い。
ただ笑えてしまうだけではなく、悲喜交々を感じることが出来て、最後は曖昧ではなくちゃんと物語がひとつの結末を迎える構成が秀逸だった。
そして「偶然と想像」というタイトル通りの一貫したテーマ性も感じた。やはり何を主題としているか伝わってくることって凄いことなのだなと再認識した。
各短編に共通して存在する、登場人物がカメラ目線で発言するカットなども効いていた。
ただ、絶対に日常では言わないようなクサイセリフがポンポン出てくるのでむず痒く感じる部分も多々あった。
淡々とした口調が、そのクサイセリフのクサミを取り除いているのか、あるいは増長させているのかは分からない。
監督は気楽に観てくださいと言うけれど、、、
見終わってから、自分なりの解釈をしたり想像したりして、なんだか迷路に迷った感じになってます。
1話目(魔法〜)のラストで、2通りのシーンが良かった。そして最後の最後に、カーン、カーンと工事音が響いて、古川さん役の女子の心を自分で叩いてるように感じました。工事中の渋谷?の街並みをスマホで撮って、この風景もまた変わる、そして私も変わるーみたいな。
2話(扉は開けたままで)教授がミセス大学生の声を誉めた辺りから、彼女の瞳や声に輝きがまし、自信に目覚めた感じがとても良かった◎
バスでのセフレとの再会は最初に突っぱねて、よし!いいぞ!と思ったのに、、、
なんなら教授を探しだして、2人で幸せになってほしいぐらい。
3話(もう一度)仙台にすむ主婦に違和感。息子のフィギアに触らせない(じゃあ客間?に置くなって)
「お帰りなさい」って言ってなかったのに「お客さまに挨拶して」って???
裕福なのに、なんだか寂しそうな感じはありましたが。
いやはや、続きなんかを誰かと語りたくなる映画でした。
シューマンのピアノ曲「子供の情景」も淡々と優しい感じで映画に合ってて良かったです。
タイトルなし(ネタバレ)
インサイダーとアウトサイダーを軸にした基本的な解説は「おまけの夜」さんのレビュー動画が整理されていて最高だったので、そちらに預けるとして。
『ドライブ・マイ・カー』に続いて観た本作について、比較しながら所感を書き連ねてみる。
まず『ドライブ・マイ・カー』では劇中劇でありながら、カメラはその場面で重要なモノ(者/物)に焦点を当てていて、今何が重要なのか丁寧に解説してくれる映画だった。特に車の中で岡田と西島が語るシーンでは、淡々としたトーンのわりに、あたかも自身がその場にいるかのように、共感度を引き上げられる感じがして胸が熱くなった。
一方で『偶然と想像』ではその場面に登場する人物が全員映るように引きで撮られていて、どの視点でこの場面を見ればよいのか分からなくなってくる。タクシーでたまたまお客さんの話を聞いてしまったような、隣の席での会話をたまたま耳に挟んでしまったような、歩道橋でたまたま通りかかった時に目にしたような、そんな感覚に陥る。自分が当事者ではないそうした場面に対しては、たいていの場合、現実の断片を想像でつなぎ合わせてしまうものだが、この映画は終始それが求められる。多くを語らない、行間を想像でつないでいくのだ。それがまたこの映画の、現実か想像か分からなくさせる不思議な距離感につながっているのかもしれない。
そして登場人物たちは、本来であれば感情的に話すような内容を淡々と語る。でもきっとこれが人の心のうちの本来の姿であって、人は意外と感情を故意に乗せて話しているだけかもしれない。一見、感情が抜かれているかのように見えるからこそ本心に思えて、本心を淡々と言葉を尽くしてぶつけられることに動揺してしまう。それは言葉を尽くす関係性が一見淡白そうに見えるのに、実はかえってエロティックに感じる感覚に近しいのかもしれない。
そして核心に迫ったとき、共通して登場人物たちはいうのだ。「どうして怒ってるの?」このキーワードをきっかけに、次々と繰り出される感情の吐露は、現実味が一気に削がれ、滑稽にも見える。人は本心を語る時、自己防衛から笑みを浮かべることもあるというが、ある種そんな笑みを浮かべてしまうような滑稽さに、気持ちが浄化されるような感覚になっていく。それが鑑賞後の解放感にもつながっているのかもしれない。
最後の場面でピンクの花が出てくる。この花はなんだっただろうか、花言葉はあるのだろうか、言葉の細部まで意味を詰める監督に、そんな邪推を抱きながらも、その爽やかさに目を細めて、この3話の物語が現実だったのか、想像だったのか、しばし余韻を愉しむこととする。
素晴らしい映画〝体験〟
「会話にリズムがあるでしょ?」
全編食らった!
1話目
ちょっとダラダラ感のあるタクシー会話はそのダラダラ感が布石でした。まさかそういう話とは。そして、古川琴音ちゃんが可愛い!好き勝手喋りまくって、途中「なんか楽しくなってきた、会話にリズムがあるでしょ?」ときたか!そういう女性に弱いんだよな男は笑
2話目
1話目の終盤に、想像のシーンがあってグゥイネスパルトロウのスライディングドアを彷彿させる未来2つパターン手法だったから、それを踏襲と思いきや、それもなく。ただただ悲しい結末でしたが、研究室での二人の会話は救われる内容で感動。
3話目
これはもう戯曲!笑って笑って、最後に泣きました!最高の終わり方!
総括
日本に生まれて、日本語の会話劇ほんといいなぁ、と思いました!!
クスクスとゾクゾク
人との出会い
明日も自分をやっていくしかない
演劇というか朗読劇のよう
本当にタイミングが合わず、諦めかけていたけど、奇跡的にタイミングがあって見られました。
柏のキネマ旬報シアター。
千葉県では有名なミニシアターです。
未だに、ひとつ空きの席は良い。空調とかの都合もあるので、公開からだいぶ経つのに満席状態。
周りに袋菓子バリバリうるさくて嫌だったけど、売店でも売ってるし。まあ、こういうものなのだろうと。
映画はとても独特。
たんたんと棒読みさせるのは何故だろう。
会話劇であり、朗読劇のよう。
行間を読む力が試されている感じがする。
最後、どうしてあんなことしたのか?
映画見てから話し合えたら幸せですね。
ストーリーはまさに偶然ですね。
言葉にすれば、結構単純だけど、有り得なそうで有り得そうな偶然。
たんたんと話されると、本を読んでいるようで、逆に想像力が湧く。
そういうことかな?
オムニバス映画なのでひとつの話はとても短い。でも、キャラクターに不思議と感情移入が出来る。切なく、愛らしい。
満腹時に観ると辛いかも。あと、ある程度強制的に集中する環境で見るべきなので、スマホでながら見とかでも辛い。
まさに映画です。単館系の。
朗読劇的会話劇に穏やかに
丁寧な言葉と丁寧な会話
良質な会話劇に感情が上下左右に揺さぶられます。
いやーはやー。
個人的には「ドライブ〜」がいまひとつで
不完全燃焼だったから、本作でたまりきってた
何かが流れ落ちました。
ハッピーアワーが、大好きな僕としては
本作はどストライク。
一貫して流れるテーマ。
兎にも角にも巧みな会話劇の
練られたであろう脚本
見事な演者
カメラワークの妙
コントみたいに軽快に笑いながら
(人間関係なんて滑稽ですよね)
観ていると心があっちこっちにいったり
感情が上下左右に揺さぶられ
何気に気持ち良い疲労感。
結構、えぐい人間のちょい裏を
描いてるにも関わらず、後味が爽やかなのは
なぜなんだろ?
決して暗くない明日が見えるのはなぜ?
それが人間の逞しさだというのでしょうかね?
最高級スルメ映画。
何度も観て、何度でも噛み締めたくなる。
きっとさまざまな味が滲み出るはず。
全部味わいたいなぁ。
傑作短編集でした。
もっと観たい。おかわり!
まるで小説を読んでいるかのような映画
「すいません、いま来た道引き返してもらっていいですか?」 「そんなに読んでません。」「それはそれで羨ましい。」 「本当のこと言うと、私、あなたの名前思い出せなくて。」
"運命"という言葉が脳裏をうろつきまわる、三編オムニバス。三編各々単独で関連はないが、偶然の重なり合うストーリーを目の前にして、こちらはいろいろと想像を掻き立てる。その予測が裏切られる冷や汗と、快感。
「魔法(よりもっと不確か)」は、古川琴音と中島歩の会話劇の妙。相手のセリフを受けながら、探りをいれつつ発する言葉の応酬。そう、これはLINEではなく、面と向かった会話でなければ成り立たない丁々発止。相手がこう来たらこう返す、まさに対決。相手をまだ好きだからこその攻防戦。言葉で相手を打ちのめし、自分のものにする欲望がはじけて発する、「私と会うための魔法」というパワーワード。古川琴音、侮れない。
「扉は開けたままで」の渋川清彦の存在感の異様さ。あえて平坦なセリフ回しは、キャラを消そうとしているのか、読めない変人を装っているのか。ラストは、バカバカしいミスなのか、天罰なのか。そして女は思うのだろう、こいつも、と。
「もう一度」、抜群にしびれた。たいてい、終盤に予想をひっくる返されるパターンが多いのだが、これはけっこう早めに来る。だから、こっちは身構えていないので結構驚く。で、どうするの?と心配してしまうのだけど、いい感じでこっちの想像がどんどん裏切られる。それは快感だった。時折、涙も流れた。自分の人生を無駄にしたくないけど相手の人生を壊したくない葛藤には共感だったし、「穴」「心の燃え立つものがない」は多くの寂しがりやのもっている感情だし、「時間にゆっくり殺されていく」にはグサリときた。ふたりの偶然の出会いが、まるで天の配剤とまで言っても過言ではない出来事だった。そして依存すぎない、程よい距離感の心地よさ。この二人の会話劇もまた、秀逸だった。これ、この二人のダブルキャストで劇場上演してもいいんじゃないかなあ。
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