劇場公開日 2021年12月17日

  • 予告編を見る

偶然と想像のレビュー・感想・評価

全156件中、1~20件目を表示

4.0「ドライブ・マイ・カー」だけじゃない、濱口竜介監督の真骨頂

2022年3月30日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

「ドライブ・マイ・カー」で今や時の人となった濱口竜介監督が手がけた初の短編オムニバス作品。第71回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門に出品され、銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞している。
「ドライブ・マイ・カー」はもちろん素晴らしく、日本映画の2020年代を象徴する作品であることに間違いないが、個人的な好みとしては「偶然と想像」に一票を投じたい。
親友が「いま気になっている」と話題にした男が、実は2年前に別れたかつての恋人だったと気づく「魔法(よりもっと不確か)」では、濱口監督の現場に初参加組と経験組が良いアンサンブルを奏でている。
古川琴音、中島歩、玄理の3人が、今回の濱口組を経て、別の撮影でどのようなパフォーマンスを披露するのか目を離せなくなりそうだ。

コメントする (0件)
共感した! 5件)
大塚史貴

4.0濱口監督らしい短編集にして堂々たるコント集

2021年12月31日
PCから投稿

正直『ドライブ・マイ・カー』に乗れなかったので警戒心を持って劇場に言ってしまったのだが、ある意味でここまでストレートなコントだとは思わなかった。もちろんコント以外の要素もたくさんあるのだが、でも各エピソードの構成の根幹をなしているのはやはりコントだと思う。濱口監督はどうしても意図やコンセプトを前景として感じざるをえず、そこが作風や個性だとは思いつつも乗れない一因になっていて、本作もそこから外れているわけではない。作為的なセリフもナチュラルに発することができる手練れの役者がみごとだからこそ、逆説的に意図の強さを感じてもしまう。しかしながら、それでもなお余りあるくらい笑わせてもらったし、出てくる俳優たちが途方もなく魅力的だった。古川琴音にいたっては、個性と実力のある若手というより、今後の日本映画を担っていくんじゃないかと思わされるほどの貫禄を感じた。

コメントする (0件)
共感した! 12件)
村山章

5.0人は日常で演じている生き物

2021年12月31日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

3本の中編からなるオムニバス映画で、それぞれも物語にはつながりはない。タイトルにある2つの単語をキーワードに人々の悲喜こもごもが描かれるわけだが、濱口監督の鋭敏さが全編に溢れていて大変見ごたえある作品だった。偶然の出会いから、想像性が生まれ、化学反応を起こして一瞬の奇蹟のような瞬間が最後に訪れる。
日常生活で、人は意外と想像して演じているものなのだとよくわかる3本だ。1話では友人の新しい彼氏が自分の元カレだとわかり、そのことを隠して初対面の人間を演じる、2話ではセックスフレンドの大学生に頼まれ、教授を色仕掛けしようと演じる、3話では高校時代の同級生だと勘違いしてしまった2人の女性が、あえてそれぞれの級友を演じる。それぞれ、偶然の出会いから、想像して誰かを演じている。
全編、肩の力の抜けた、一筆書きのスケッチみたいな感覚なのも、心地よい。結構笑える作品なのだ。「うわー、そこで出会っちゃうあ」みたいな間の悪さとやり取りのズレの滑稽さ。誰にでも訪れそうな、ありふれた日常にこんな豊かな物語があるんだと思わせてくれる素敵な作品だった。

コメントする (0件)
共感した! 11件)
杉本穂高

3.5愛・性・人生をめぐる空虚な会話劇に寄り添えるかどうか

2021年12月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

濱口竜介監督の前作「ドライブ・マイ・カー」では演劇要素がかなりの比重を占めていた。主人公が演出家として台本の読み合わせを行っているとき、参加している俳優らに「感情を込めずに台詞を読む」よう指示する。

本作「偶然と想像」でも、オムニバス3編の登場人物らはおおむね抑揚の少ない、わりと平板な口調で淡々と会話する。あるいは朗読する。それはたとえば一昔前の小劇場演劇、特に「静かな演劇」と呼ばれた演出スタイルにおける発話を思い出させる。3つめの「もう一度」で、2人の女性が途中から想像をはたらかせて“ロールプレイ”するくだりなどは、まるでエチュード(即興劇)のよう。濱口監督は演劇要素を巧みに取り込み、いわゆる映画的にリアルな会話とはまた異なる会話劇のメソッドを確立したのだと思う。

しかしそうした感情を抑えた、淡々と発せられる言葉から、人物たちのどこか空虚な内面が浮かび上がる感じも否めない。確かに各編の“偶然”は意外性があり、ストーリーの展開も面白いが、都市生活者たちが営む愛、性、人生の空虚さに対する批評なのだろうか。そんな会話劇を繰り広げる人物たちに寄り添えるか否かで、本作を心から楽しめるかどうかが分かれるのだろう。

コメントする (0件)
共感した! 14件)
高森 郁哉

4.0え?短編集?意表を突かれた

2024年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

単純

CSで録画視聴。
まず、びっくりしたのが偶然と想像がまさか短編集だったとは。
短編集ならではの作品ばかりで良かった。
今、邦画には欠かせない中島歩も彼らしい演技をしていた。
音楽の使い方はなかなかいいが、短編にしなくても良かったかもしれない。
観て良かった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ナベウーロンティー

4.0☆☆☆☆ 〝 貴方は本当の事を隠している 〟 これはお見事!恐れ入...

2024年3月21日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆☆

〝 貴方は本当の事を隠している 〟

これはお見事!恐れ入りました。傑作ですね、まごう事なく傑作と言い切って間違いないと思います。

『ドライブ・マイ・カー』が自分には今ひとつ合わなかったので、あまり気は進まなかったのですが。何やら評判が良いので年内に何とか観るか…と。
何ならば、「思いっきり貶してやるぞ」…感満々で観に行ったのに、もう存分に楽しんでしまった。

第 1 部 ☆☆☆★★★

♬ トロイメライ♬ と共に罠はやって来る

この第1部こそは、題名の『偶然と想像』そのものが、はっきりと色濃く出ていると思える。
冒頭から直ぐのタクシー車内。この場面から続く長回しと、絶妙なタイミングで切り替えるカメラのリズムが良い。
正直に言えば、この辺りまでは貶す気満々だったから「ん!やってるなココ!」…と言った感じで斜に構えて観てましたけど。
いきなりのこの話で、観客の気持ちを持っていく掴みとしては充分でした。

第 2 部 ☆☆☆☆

欲望と妄想〜そして偶然へ

トロイメライの調べと共に女が罠を仕掛けて来るのは第1部と同じ。

《あの》渋川清彦の超絶堅物教授がもう最高。
そして何よりも話の全編が大好物なくらいにエロい(^^;)
もうそれだけでご飯3杯はいける。
明らかに演出自体が、途中から2人共に棒読みにシフトして行く事でのクスクス笑いを誘っていて。その事自体が作品の中間部分なだけに、大切な潤滑油となっていた。
(実は渋川清彦自体が、売れっ子俳優だけに。撮影の直前に入る事で、逆の意味でのやむを得ずな演出だったのなら笑っちゃいますけどね)

いや〜とにかく楽しかったです。

第 3 部 他人と建前〜真実と本音

話が始まって暫くした時に、「ああ?これってある意味での『私をくいとめて』的な話だな!」…との当たりを付けた。

まあ、あながち間違いではなかったものの。そこからの展開には、こちらの想像を斜めに超えて行った。
そして、この話を最後に持って来るって言うのが、思い付く事と同じくらいに凄いと思う。
何しろ最後には多幸感に包まれてエンディングに向かう為、多いなる充足感に溢れて劇場を後にする。

何気ない〝 あるある 〟からここまでの展開。
劇場を後にしながら思わず最後に呟いてしまった。

「おいおい!ロメールじゃねえかよ!」…と。

…と、絶賛しといて何ですけど、、、

出来れば♬ トロイメライ ♬ は第3部でも入れて良かったんじゃ?

…とか。

第1部の冒頭場面。撮影スタッフが映像を確認している場面。
画面右後方に映り込む女性が居て、「ああ、多分あの人が話に絡んで来るんだな?」…と思っていたら何もなし。
画面を観ながら気になって仕方なかったんだよなあ。
そうゆう画面作りの辺りをもう少し丁寧にして欲しかったところ。
そうゆうところは昔の映画界は厳しかった筈ですからねえ。
まあ、所詮は素人がガタガタ文句こいてるだけですけどもね。

2021年 12月29日 Bunkamura ル・シネマ2

コメントする (0件)
共感した! 0件)
松井の天井直撃ホームラン

3.0やっぱり棒読み

2024年1月1日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする (0件)
共感した! 0件)
プライア

4.0「偶然と想像」この繊細な言葉の組み合わせの不思議

2022年12月13日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

普通、偶然という言葉が想像と結びつきません。
そこに濱口竜介監督の異色な個性と感受性をみました。
私は特に第2話の「扉は開けたままで」に惹かれました。
中年の大学教授・瀬川(渋川清彦)の存在が際立っている。
この性格なんとかならんのか?
学生に単位を与えず留年させる・・・
私の尺度では、こういう人の《妥協を許さない頑迷さ》は、
許し難い。
すごく損する性格だと思う。
「居るだけで嫌われる存在」と瀬川も分かっているのに、
自分の心をコントロール出来ない。
(寛容になろうとしない?)
瀬川に単位を落とされた佐々木は、
ハニートラップをセフレの菜緒(森郁月)に頼む。
瀬川の教授室を訪れて芥川賞受賞作にサインを頼み、
質問と称して作品の
特にエロティックな文章を読み上げる。
菜緒が教授室の扉を閉める。
緊張した表情の瀬川が、扉を開ける。
人との関係は閉ざしているのに、世間体の扉は開けておく。
それが瀬川のせこい処世術だったのかも知れない。
兎も角、この脚本の瀬川教授の造形は、一度だって日本映画に
こんなこじらせキャラの人間は現れただろうか?
濱口竜介監督の脚本の特異性と文学性に驚くとともに、
心理学的分析にも舌を巻く。
第2話が強烈過ぎる。
《人間関係を築けない瀬川の孤立が際立った》
そして5年後になり、佐々木と菜緒は電車で再会する。
その後の展開も気になる・・・秀逸なラストである。

第1話
魔法(よりもっと不確か)
この話しは、男と女は理解しあえない存在だと示唆しているように思えた。
分かり合えた・・・と思うのは、いっときの錯覚で、
愛するとは、魔法よりも不確か・・・
愛してる・・・そういう錯覚を信じている人は何度でも、
失敗る(しくじる)だろう、と思う。

第3話
このお話は、まったく1、2話と真逆。
人と人は分かり合える・・・
信じるに足るモノであると示してくれる。
勘違いで出逢った、まったく見ず知らずの中年女性2人が、
高校時代の友達との交流を懐かしみ、
家族より本音を話せる親友になる話し。
それにしても仙台駅の上りエスカレーターと下りエスカレーターの
演出には思わず笑った。
この3話は、実に説得力がある。
(インターネットが遮断した・・みたいな設定はあまり効果を感じなかった)

1、2話の登場人物より信頼できるのは何故だろう?
ちゃんと生活している大人は、人間としてホンモノなのか?
それとも分かり合える人とは、分かり合える。
分かり合えない人とは、
決して分かり合えない事なのか。

「偶然と想像」
この相性の悪そうな言葉から、かくも想像的な映画を生む
濱口竜介監督の手腕に、唸らせられました。

コメントする 2件)
共感した! 18件)
琥珀糖

5.0緊張感が続く

2022年12月12日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

三話からなるオムニバス作品だが、どれも素晴らしく、緊張感が続く。
第一話は親友の女性同士の恋バナにより、過去の亡霊が現れる。
元カレのもとを訪れた元カノが怖い。
第二話は留年させられた男が、教授にカノジョを使って復讐しようとする。
カノジョの色っぽさに、まいりました
第三話は久しぶりに同窓会で故郷にやってきた女性が、高校時代に仲の良かった女性と再会する。
とても幸せな余韻が残る。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
いやよセブン

5.0絶対に見るべき映画

2022年11月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

2021年。濱口竜介監督。監督の脚本による短編3本のオムニバス映画。こんな映画を見てしまったら人生が明らかに変わります。変化を肯定していくすばらしい映画。生きにくい社会のなかで、つながらないはずの人がつながって、一時的に衝突や災難を起こしながらも、新しい局面が開かれる。逆に言うと、思惑を超えて、立場を超えて、人が人として心から話しをするためには、これほどの偶然と紆余曲折を経なければならない。フィクションを通じたリアルへの探究。
とにかく会話(対話)がすばらしい。監督特有のメソッドによって、登場人物はほぼ棒読みなのだが、それがまったく嘘くさくない。ある種の小説のように奥行きがある人間把握を元にした言葉たち。言語化できない領域を、言語の限界も含めて映像化するチャレンジ。「ドライブ・マイ・カー」と同時並行で制作されているというのもまた驚きで、両作品がそれぞれ別の仕方で映画に挑戦している。それぞれが国際的映画祭で受賞しているのもうなづける。
同シリーズであと4作制作される予定という。楽しみで仕方がない。

コメントする (0件)
共感した! 1件)
文字読み

4.5棒読みとリズム

2022年8月26日
iPhoneアプリから投稿

偶然が巻き起こした不確かで不分明な感情を、棒読みとリズムで浮き彫りにする、ヘンテコな会話劇。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
jinmin

1.5ツーの映画

2022年8月23日
iPhoneアプリから投稿

音楽や映像のエフェクトがないから、
フィクションだけどリアルな感じ。

1の棒読みみたいな台詞の言い方はわざとなの?
2は試されているようで不快な気持ちになった
3はまだよかったけど、、

この映画を良いという人は、
映画の玄人さんが多い気がする。
わたしの周りの映画好きはみんな濱口監督が大好き。

けど、わたしのように時々映画を見るくらいの人にとっては、映画には映像の美、演出の美を求めるので、

エフェクトがない映画は
あまり楽しいと思えなかった。

しかも2に関しては、
演技や役者は素敵だったけど、
内容がなぁ、、。

濱口監督ドSなのかな??

ツーとかカーとか呼び合う とか、
官能小説の音読とか、
シュールな笑いととることもできるけど、

映画に詳しくないわたしからしたら
パワハラ的にも感じてしまって..
(2)

ちょっと辛かったです。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
aiueo

4.0日常の中の非日常

2022年8月14日
iPhoneアプリから投稿

とても好きな作品です。ムラカミノベルを彷彿させる日常の中に非日常を展開し、主人公が人生観を語る様は、空虚な感覚を覚えるものの心地よい

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ハゲタカ

5.0短編小説集の読後感のような

2022年7月17日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

短編小説集のような作品。いずれの作品も女優さんに雰囲気があった。内面に豊かなものを湛えていてそれがあふれ出てくる感じ。3作目は仙台が舞台。お互いに高校の同級生と勘違いした二人が、その勘違いを受け入れた上で、自分の感情を吐露する。相手は勘違いされた人として受け止めて応答する。他人として受け止めるのだけど、同時に、自分と同級生との間に起こった経験として位置づけている。そのように位置づけることで癒やされている。
実際に起こったことを事実というならば、決して事実ではないけど、それを真実と受け止めることで生きる力となっていくことを知らされる。事実と真実の境界がどんどん曖昧になっていくことに眩惑される。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
Maamiifuu

4.5同じ監督

2022年7月7日
Androidアプリから投稿

ドライブと同じ監督とは思えぬオモシロさ
才能はスゴいのですね~

コメントする (0件)
共感した! 0件)
雨の夜はヤバイゼ

4.0脚本の魅力

2022年6月16日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

偶然から始まり想像の中で広がる "人と人の関わり合い" を描いた短編集。構成する三作はまったく独立していて相互の関係はない。

1 魔法(よりもっと不確か)

自分の同僚が自分の元カレと付き合いだしそうなことを知った女性の話。

「今日は不思議な時間を過ごしたね。特別なことだ。もし次に会ったとき、この魔法が解けてたら、と思うと怖いね」といった会話をしたと語る同僚。話を聞いた主人公は、同僚が降りたあとのタクシー運転手に「今来た道を引き返してもらっていいですか?」と言う。この象徴的なセリフ。この監督の映画は、みんな小説みたいだね。小説を、読んでいるのではなく観ている感じ。

そして本作は、俺にとってはとても怖い。こんな程度まで自分の感情に正直でそのまま出す異性とは、絶対に付き合えない。「怒っているとしたら、この運命に対してかな」「好きな人を傷つけることしかできなかった。欠陥品のような気持になった」「カズは、魔法よりもっと不確かなものを、それでも信じてみる気はある?」
監督、すごいと思う。きっと実際にこういう人もたくさんいるのだと思う。その心の中を想像できる点が、俺はすごいと思う。そして俺はそういう関係には全く耐えられない。お互いにオブラートをかけたような関係が自分が望むものだ。裸の心をそのままぶつけあう人生は俺には無理だ。

映画って感じのオープニング映像。やはり「外」を撮るとき、映画ってきれいだな。夕方の雰囲気、夜の雰囲気、いずれも光は当たり前だが、雰囲気とでも言うのだろうか。いい監督の作品を観ると、やっぱり映画っていいなあと思う。

そしてラスト映像もかっこいい。再開発中の渋谷、建築中のビル工事現場。思わずその写真を撮る主人公。なんて思わせぶりな映像なのだろう。

まったく共感できないが、映画としてはすごいな、と思わせる映画だった。「寝ても覚めても」の視聴後感に似てるかな。

2 扉は開けたままで

文学賞を受賞した教授に落第留年された恨みをもつ男子学生のセフレである主人公が、教授にハニートラップを仕掛ける話。

中盤を構成する長い長い教授と女性友達の会話。濱口監督の特徴の一つである「抑揚を抑え込んだ会話。脚本を棒読みするかのような会話」が続く中で、最初は「教授はハニートラップにかかるのだろうか」と下世話な興味で映画を観ている俺を、まったく違う世界に連れていく。言葉がほとばしる。
「言語化できない未決定の領域にいれるという才能です」、「行動原理がわからなくて怖かった面はあります」

「理由がなくても、ただ生きているだけで嫌われるということがあります」という共通点がみつかる。「社会の物差しに抵抗してください」「ひとりですることはとても辛いことです。でもだれかがそれをしなくては、いつまでもそれは起こりません」(なに書いてるかわからないかと思いますが、観たらきっと書きたくなっちゃう気持ちもわかってもらえるかも)

よく聞く「魂のふれあい」みたいな言葉。それを脚本上で、映画上で実現しているのだと感じる。

終盤のバス内でのシーンは、観ている時には復讐のはじまりを感じて「怖っ」と思ったが、こうやって書いてみると(教授と女性友達)新たな魂のつながりのはじまりだったのかもしれないな。

3 もう一度

Xeronというコンピューターウイルス被害によって世界中が大被害を受け、いまだに世界中のネットワークが遮断され、郵便と通信だけの世界に逆戻りしている現代で、高校の同窓会に出るために20年ぶりに仙台にやってきた女性と、もうひとりの女性が出会う話。

この話もすごい。まずこういうことがあるかもしれないなと思わせる力。半端ない。その上で、その偶然の出会い、お互いの相手に対する想像から生まれた友情というか愛情。その話を違和感なくみている俺。第1作じゃないけれど、この作品そのものが、短編3作それぞれが、俺にとっては魔法だよ!

「大切なことを話していない。あなたはいま幸せ?あなたがどう思っているかを聞いているの」 1作めでも書いたが、まっすぐな心を、まっすぐに伝えようとする登場人物たち。まっすぐだからこその緊張感が、溝口監督の映画の真骨頂なのだろうか。

「あの人の昔の彼女とのメールを読んだの。いい文書だった。「君が言ってくれたことが、今でも僕の背中を押してくれている」 何度も読んじゃった」
ああ、これこそ会話劇。観ている俺を引きずり込み、想像させる力。この映画を観たという偶然と、そこで出会った想像。
「あなたは他の誰かでいいかもしれないけれど、私は他の誰かじゃダメなの。そのことを言うべきだった。言うために来た。あなたにも穴があいているはず。それを埋めることはできないかもしれないけれど、私たちはその穴を通じてつながっているかもしれない。それを伝えに来たの」

こうした会話もまた、「抑揚を抑え込んだ会話。脚本を棒読みするかのような会話」だ。そしてだからこそなのか、スクリーンの中というか、どこか遠いところから俺の心の中に降り積もってくる。

ああ、俺は溝口監督の魔法にすっかりかかっているのだなあ。たしかにこの人、語り部だ。脚本で、無から有を生み出している。

溝口監督の映画のレビュー書くの、楽しい。「寝ても覚めても」「ドライブマイカー」そして本作。この後も、ちょっと楽しみだ。いつかはスカッとさせてくれる映画も観てみたい。

コメントする 3件)
共感した! 5件)
CB

3.5この映画は、、、。

2022年5月14日
iPhoneアプリから投稿

普段の何気ない日常の延長線上の様な感じ、普段こんな感じに一日が終わるんだよね。 映画が終わった後もまだ映画が続いている気がする。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
映画大好き

5.0ストーリーが良くて、鼻に付く時も。

2022年5月3日
Androidアプリから投稿

ストーリーが良くて、鼻に付く時も。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
NAO

4.5脚本の素晴らしさと役者の力量が際立っていた

2022年5月1日
iPhoneアプリから投稿

偶然のある出来事からおこる日常の中の非日常を全く違うシチュエーションの中で表現した3部作。
脚本が見事だった。
見る側の想像力もかきたてるようなセリフは役者の力量が大きく物を言う。今回のそれぞれの役者はその点でも素晴らしかった。
3部作はそれぞれに見応えがあったけれど、私は3番目に強くひかれた。まさに偶然と想像のタイトルを体現したかのような女性2人のやり取りは、味わい深く、ドライブマイカーにも感じた2人の気持ちのつながりが感じられた。
とてもいい映画だった。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
ニョロ

4.0コトバの魔法

2022年4月22日
iPhoneアプリから投稿

知的

短編集とはいえ、登場人物が少ないにもかかわらず、言葉のやりとりだけで、これほどドラマチックな展開を魅せることができるのか?という驚きと発見。それぞれの話の背景が、日常生活の中にありそうで、なさそうで、ありそうな?歯痒さがたまらない。

映像の中で、バス、電車、タクシー、エスカレーターといった移動手段としての乗り物がとても効果的だった。

また、どんな大作や傑作と言われる作品(日本映画)でも、女性の描き方だけは、どこかヒロイン的に描く男性監督が多い中、過剰な美化をせず、複雑な女性心理が等身大に描かれていて、とても好感が持てた。

コメントする (0件)
共感した! 0件)
upyo