仕掛人・藤枝梅安のレビュー・感想・評価
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孤独を抱えた梅安と彦次郎が食べる「飯のうまさ」。
とてもインパクトのある「時代劇」であり、楽しませてもらった。法で裁くことができない悪人を闇で始末する「仕掛人」は、我々の勧善懲悪本能を刺激して愉快である。現実世界でも、殺したい相手がいる人は珍しくないと思う(心の中で思っているだけにしても)。そんな願望をフィクションで叶えてくれている。しかしこの作品の主人公は、表向きは正義のスーパーヒーローではなく、ただの暗殺者に過ぎない。高い報酬を得て非情な殺しをやりながら、当人は道理を弁え、人の道を大切にしているように思える。そんな人間の裏表、二面性が「仕掛人シリーズ」の魅力かもしれない。
返り討ちに合うかもしれないし、正体が知れたら殺されるかもしれない危険な稼業をなぜ続けているのかは分からない。しかしその死と隣り合わせの孤独感や悲しみのようなものはしっかり伝わってくる。梅安と彦次郎は、その思いを共有できる無二の朋友である。何も言わなくても分かり合える二人が、うまそうに飯を食う姿は何とも味がある。豊川悦司と片岡愛之助の絶妙なコンビと言えるだろう。
トヨエツ梅安
「時代劇だから」と敬遠する人にこそ観て欲しい一作。
時代を代表する様々な俳優が演じてきた藤枝梅安役を、豊川悦司が務めた二部作の第一作にあたる本作。池波正太郎の代表的作品だけに、様々に錯綜しながらもそれぞれ味わい深い人間関係、そして池波作品ではおなじみの、ひたすら美味しそうな料理が印象的な一作です。
豊川悦司は還暦を迎えてますます表情に渋さが加わり、また演技も円熟味を増していて、寡黙だがどこか優しさと愛嬌が漂う梅安を好演しています。むしろちょっと美声過ぎるところが目立つほど。
東映京都撮影所が手がけたという映像は隅々まで丹念に描かれていて、陰影を効かせた一つひとつの場面の美しさに圧倒されます。人間ドラマとしてももちろん楽しめる作品ですが、この映像の質感は特筆に値します。前述したように、映像の多くは陰影を強調しているため、場合によっては人物の表情も判別困難な程です。しかし、特に片岡愛之助は、視線の使い方が絶妙で、さすが歌舞伎役者としての圧倒的な存在感を放っていました。
池波正太郎と言えば料理、特に鶏鍋がお約束ですが、本作で登場する料理もどれも非常に美味しそうで、かつ梅安(豊川悦司)と彦次郎(片岡愛之助)の分かちがたい絆を象徴する存在として描かれており、この点でも感心させられます。いわゆる「悪女」の描き方もまた、池波正太郎作品の風味を十二分に再現していますが、現代の視点から見ればやや時代がかった印象を与えてしまうことも事実。ここはもう少し工夫があれば、と感じました(生い立ちを描写するなどの脚本上の配慮は見られたのですが)。
ともあれ劇場で十二分に堪能できる極めて上質の時代劇である事は間違いないし、次作の公開もと今から楽しみです。「時代劇」だから古くさいんじゃないの?と思っている人にこそ観て欲しい作品です。
時代劇好きなら観ておくべき作品
「鬼平犯科帳」や「剣客商売」と並ぶ池波正太郎の代表的な時代小説「仕掛人・藤枝梅安」を原作とした作品でした。鬼平などもそうですが、梅安先生シリーズもこれまで何度もテレビドラマ化、映画化されており、今回は梅安役を豊川悦司が、相棒の彦次郎役を片岡愛之助が演じており、その他のキャストも天海祐希、柳葉敏郎らが起用されており、近年製作された創作物の時代劇映画としては、異例と言ってもいいほどの豪華な作りでした。(そもそも戦国時代と幕末物以外の時代劇が、映画・テレビを問わず新しく作られることすら少ないのが現状ですが。。。)
本作のストーリーは、原作でも最初の作品となった「おんなごろし」を土台にしたものでした。金で殺しを請け負う仕掛人の梅安や彦次郎ですが、相手が女性だと躊躇いがあるのか、はたまた請け負った仕掛けの裏に納得できないものを感じたのか、しきりに「女は怖い」というセリフを発していたところが印象的でした。ミソジニーやジェンダーフリーに対する考え方が急激に変化し、数十年前の時代劇なら普通に発せられていたこの類のセリフですが、最近は時代劇の再放送以外では殆ど耳にしなくなっていました。
そもそも時代劇が新たに作られることが少ないこともありますが、新作の時代劇が作られても、現代的な思考回路をもとに製作しているため、この手のセリフはご法度になっている感があります。だからこそ新作時代劇映画でこのセリフを耳にした私は、ちょっとビクッとしてしまいました。まあ池波正太郎の原作にもこのセリフはある訳だし、本作は不特定多数が観るテレビではなく、劇場公開される映画なので、原作の世界を再現するという意味では何ら問題はないものと思いますが、時代が時代だけに時代劇ファンの私ですら、妙な違和感を覚えてしまったのが、実に不思議な感覚でした。
違和感と言えば、梅安が住む品川台町の街並みのバックに、実際の距離からすればあまりにもデカ過ぎる富士山が描かれたのも、ちょっと笑ってしまいました。確かに月夜の晩に富士山をバックにした街並みの夜景は実に綺麗なのですが、この画面を観て、ふと昨年公開されたブラッド・ピット主演の「ブレット・トレイン」で描かれた、西洋人が思い浮かべそうな日本の風景を思い浮かべてしまいました。エンドロールでも、役者の名前が日本語とともにアルファベット表記も併記されていましたので、海外での上映も視野に入れているのかも知れませんね。そのための富士山だとしたら、ちょっと複雑な気分ではあります。
あまり内容に触れないままに総括したいと思いますが、本作は豊川梅安の一作目らしく、今年4月に二作目が上映されるとか。そちらも観た上で最終的な評価をすべきなのかも知れませんが、とりあえず本作については、最近稀な創作物の時代劇映画であり、かつキャストも豪華であり、何よりも原作が池波正太郎作品と言うこともあって安定感があるので、ちょっとした違和感はあったものの、星4の評価としたいと思います。
時代劇だからこそ味わえるエンターテイメント
私がわざわざお金を払って映画館へ行く理由は、現実とは離れた別世界へ連れて行ってもらうためなのです!現代の人がリモートでの生活に慣れてきた中、顔と顔を突き合わせて話をする、体温が感じるほどの距離感で人の温かさを感じます。江戸の風景もほんとうにそこにいるかのような美しい町並み。見たことない景色なはずなのに懐かしい気持ち。仕掛人という未知のダークなキャラクターにもゾクゾクさせられる。キャストは大御所揃いで期待を超える迫力、映画の世界にグングン引き込まれました!池波正太郎さんならではの美味しそうな江戸料理の数々にお腹減りますが、生きてるってことです!
水も滴るいぶし銀のいい男
昔は時代劇の番組が沢山ありましたが、うちはそれほど観る家ではなかったです。水戸黄門に遠山の金さんに銭形平次くらい。どれも子供からお年寄りまで安心して観られるものばかり。好色代官も血しぶきもそんなにありません。子連れ狼は、たぶん、小学生の時に家族で映画館で観たものが今考えてもエロいシーンしか思い出せないような話だったので、我が家の視聴リストから外れたんだと思います。
そんな感じなので、藤枝梅安というドラマは全く知りませんでした。私は必殺シリーズも観てないので、本作は観ようか迷いましたが、トヨエツですから気になりました。
結果、予想以上に面白かったです。落ち着いた暗い色調が美しいし、衣装小道具も良かった。早乙女太一さんの、逃亡して数日たって頭頂部が中途半端に髪が生えて見苦しい感じとかリアルです。
そして豊川さんのカッコ良さ。着流しも頭巾にコート姿も良し。枯れた声が梅安にぴったりで、ちょいと、あたしにも耳元で囁いておくれよ、と言いたくなります。
そこまで説明しなくてもわかるよ、という所はありますが、しつこくはないです。字で解説したのは親切で良いですね。海外での反応が楽しみです。
次も観たいと思う時代劇を作ってくれた感謝の気持ちで、星は甘めになっております。
仕掛人、仕置人、仕事人やっぱいいな~👏
地味だけど存在感は半端ない
豊悦よかったなぁ
これが日本のお家芸。
ささやかな幸せを潰すモノへの怒り
なんで今、仕掛人なのか?と思ったのですが
藤波正太郎氏生誕100年記念とのこと。
それならわかりますわ。
テレビの「必殺シリーズ」の原案にはなっていても
こちらが本家でテレビとは別物という認識はありました。
で、初めて観た本家は
渋い!!で、より凄みがある。
始まりの江戸の街を再現したCGが見事です。
一気に世界観に引き込まれます。
物語は、江戸に蔓延る人の道に外れた悪人を
お金であの世に送るプロの仕掛人のお話ですが
請け負った仕掛けのために、ターゲットの周辺を探るうちに
梅安が過去に請け負った仕掛けと
意外なつながりのあることに気がつく。
そのつながりを探るうちに梅安のある過去に行き当たって〜〜
本来は「人の道に外れた悪人」を始末するはずが
中には「悪人」ではなく、自分に都合の悪い人間を
お金で始末させる「悪い輩」もいる。
梅安はあくまでも「人の道に外れた悪人」を
始末するのであって
悪人の手先にはなるまいという
強い意志を感じる流れでした。
池波正太郎氏といえば「和」の美食家として有名なので
映画の中でも素朴だけど旨そうな料理が度々アップになります。
話の中でも梅安と相棒の彦次郎が酒を酌み交わすシーンが
何度かあるので好きな人には堪らないですね。
闇に紛れての仕掛なのでやはり
黒が際立つ映画館で観る方が世界観に浸れますよ!
で、月に8回程、映画館で映画を観る
中途半端な映画好きとしては
藤枝梅安を演じた豊川悦司さん
淡々とした演技でしたがその分、
仕掛けをするシーンはなかなかに凄みがありました。
原作未読ですが原作に詳しい映画評論家の方によると
梅安は結構女好きだそうですが、
そんなにギラギラした女好きでは無く、
ジワ〜〜っと女が離れられなくなる様な女好きでした(笑)
(どういう意味なんだか〜〜)
梅安の相棒の彦次郎を演じた片岡愛之助さん
愛之助さんは上方歌舞伎の役者さんだから
江戸の粋とは芝居の質が違うので
そこが、ちょうど豊川梅安とのバランスが良かったかな〜
これも、詳しい映画評論家の方によると今回は
これまでの彦次郎より設定がちょっと若い。
なので江戸歌舞伎の芝居だと、ちょっと艶が出過ぎて
梅安より女好きに見えちゃうかも〜
脇も良かったです。
仕掛の元締めを演じた柳葉敏郎さん
ああ、こう言う役を演じる年齢になられたのですね。
久しぶりにスクリーンでお顔を観た菅野美穂さん。
久しぶりなのになかなか色っぽいシーンを熱演されてました。
それとこれはまた珍しい天海祐希さんの時代劇!
さすが宝塚出身の人なので和服での動きもこなしておられました。
そして、全体に渋めの今作を要所要所で
ホッとさせてくれていたのが流石の高畑淳子さん!
おいしい役でもあるけど、とても上手く魅せてくれました。
日本の俳優さん、皆さん実力がありますが
私が密かに注目しているのが
ご本人亡き後の「樹木希林」枠!!
高齢女性重鎮枠です。
ここに誰が来るのか??
今の所、私の中では田中裕子さんが強いのですが
高畑淳子さんもぜひ候補に入れたいですね。
…………(あんた何様のつもり(笑)
豊川梅安は色気あって良しです!
原作は読んでないけど昔テレビでやってた仕掛人、仕事人は大好きでした。特に初期の頃のドロドロ.ダークな感じが好きでした(必殺仕事人は名作)。結局、誰も救えない感じとか、善悪混合な感じが良いのです。仕掛も仕事も、結局は根本的にはなーんにも晴れないってトコとか人間社会っぽくて好きなんだよなー。決して仕掛人(仕事人)はヒーローではありません。最近のジャニーズ仕事人は、仕事人にあらずです。
今作は出口がそこそこ見えたり、なんとなーくスーパーマン的なキャラで.ま.エンタメだよなって。
あんまり暗くて重ければ売れないかかなぁ?仕方ないかなぁ?時代劇が好きな年代向けのダークエンタメってとこに落ち着かせている気がします。だからあんまりモヤモヤしません。
なんか、全体的に(良い俳優さんたちばかりですが)影少なめなんですよね。悪い奴は悪い奴にしか見えない、というわかりやすさがそうさせているのかもしれません。また「起こり」が託す理由となる部分はもっともっとえぐくしてほしかった。「仕掛」自体が軽く見えちゃうんですよね。本作で梅安自身、一番大事で重要な仕掛があるんですが、その重みが他の仕掛とあんまり変わらないように映っちゃってるのはよろしくないと思います。
画面作りも結構ドロドロ感少なめなんですよね。かっこいいけど「裏稼業の業の深さ、やりきれなさ」みたいな感じが欲しかったなぁ。何度もですみませんが、TV「必殺仕事人」の光の演出ばりの光と影、欲しかったなぁ。逆光に浮かぶ深い青と黒、そしてスモーク・・・格好良かったなぁ。ま、個人的な好みの話ですがww
けどけど、、あぁ、プロが殺してるなーって感じの梅安の仕掛のシーンは好き。大人の色気感じるところも良いですね。もっともっと俗人感あっても良かったけど。
全体的にそんなこんなで僕の評価は低めです。豊川さんの演技ありでこの評点。ただ、2連作の1作目だからここで評価しちゃいけないのかもしれません。あ、僕は事前情報入れていかなかったので半分見逃しちゃいましたが、エンドロール後に2作目への布石エピソードあります。エンドロールで席を立たずに最後までご覧になった方が良いです。
松竹の時代劇に死角はない。
「時代劇チャンネル(CS)」では、たまにオリジナル良作品を放送しているので、日頃から 楽しませてもらっているが
本作も、配信で観れば良いかなぁ。。。と考えたものの
映画を主幹するのが、悪の「@@@制作委員会」ではなく、時代劇チャンネルと松竹の2強がタッグを組み、本気でつくった映画故え、
よほどの自信作が創られるものと思われたので、一応 劇場で観る事にしました。
原作があるとはいえ、必殺仕事人 はもう内容が出尽くしているだろうから
本作はオリジナル書下ろしのシナリオだと思うが、"時代劇の松竹"が自信を持って世に出す映画の内容は完璧なまでに面白いのは必然。
考証も完全であり、町人は町人らしく、商人は商人らしく、浪人は浪人らしく、武士も江戸時代の武士らしく
安心して観ていられる。
戦国時代の大合戦の様な 派手さ はないが、教科書に載せても良いくらいの考証力は流石である。
また、撮影や音響も完璧で、ケチのつけようがない。
特に 影を使った明暗は 時代劇にリアル感を与え、NHKの4K画像でなくても、撮影者の技量だけで
芸術的な光の演出を行えていた。
最初の 起こり が使った 小刀は見事な品だった。
流石、松竹は良い小道具を所持しています。
隣に座っていた爺さんは、上映中にポップコーンを大量にぶちまけてしまったせいか
エンドタイトルの途中で、席を立って 帰ってしまったが。。。大間違い
エンドタイトルの後、重要な1シーンがあるので、この映画は明るくなるまで、きちんと鑑賞した方が良いでしょう。
本作を観たら、当然2か月後の次作は非常に楽しみだ。観ます!
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