狼をさがして
劇場公開日:2021年3月27日
解説
1970年代半ばに連続企業爆破事件を起こしたテロリスト集団「東アジア反日武装戦線」を追ったドキュメンタリー。1974年8月30日、東京・丸の内の三菱重工本社ビルで時限爆弾が爆発し、8人が死亡、約380人が重軽傷を負った。1カ月後、「東アジア反日武装戦線“狼”」と名乗る犯行グループが声明文を出し、この爆破を「日帝の侵略企業・植民者に対する攻撃である」と宣言。その後「大地の牙」「さそり」といった別働隊も現れ、翌年5月までの間に旧財閥系企業や大手ゼネコンを標的とした爆破事件が相次いだ。そして5月19日、東アジア反日武装戦線一斉逮捕のニュースが大々的に報じられる。日本中を震撼させた彼らの素顔は、ごく普通に市民生活を送る20代の若者たちだった。時は過ぎ、2000年代初頭、釜ヶ崎で日雇い労働者を取材していた韓国のキム・ミレ監督は、ある労働者から東アジア反日武装戦線の存在を聞き、彼らを題材にしたドキュメンタリーの撮影を開始。出所したメンバーやその家族、支援者の証言を追う中で、彼らの思想の根源がひも解かれていく。
2020年製作/74分/G/韓国
原題:The East Asia Anti-Japan Armed Front
配給:太秦
スタッフ・キャスト
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理由は忘れてしまったけど。
東アジア反日武装戦線のことを扱った映画を今年見られるとは。なんとも驚きであった。劇場もほぼ満席で、でもそれはわかる、自分が若い頃に比べたらネット、スマホで知ることができる、けどこういうことはやはりclosed で、手に入る情報はかぎられている。
東アジア反日武装戦線のこと、そして、彼らを長く支援する支援連の方たちのこと、死刑制度のこと、さらに東アジア反日武装戦線の武装闘争あるいはテロの背景にある歴史と現在。それらのことを、さまざまな語り口で語られる心情や事実や主張でゆっくりと一緒に考えながら進んでいくような。
池田先生がおっしゃっていたと思うが暴力を振るえるのは権力者の側であり、暴力とは圧倒的なか権力側が持っているということは事実であり、それと闘う側は何をもって戦っていくのか。最近読んだ王力雄氏の私の西域君の東トルキスタンという本でも、
確かに、テロリストはルールを無視し、しばしば民間人や民間施設を攻撃目標とする。だが彼らは劣勢であるが故に、もしルールを守っていたら、何も達成できない。
というようなくだりがあり、もちろん他の方も同じことはたくさんいわれているし、実際に劣勢な方はよくで石礫、どころかなにも戦う術がないことも強いられている。綺麗事ではない、いかなる場合においても、人が人の命を取ること、人が他の人を殺すことは許されない。東アジア反日武装戦線のメンバーや支援者たちは、過ちに気づき反省を重ねそして人の命を奪わないことを全うするために死刑制度反対に連なっていく。
人の命、無差別に民間の人の命や人生を損傷したことに過ちを見出しながら、でも、それでも、、という、さらに巨大で理不尽な暴力搾取差別犯罪に対抗する気持ちもあると思う。
日本のような他者への共感力が希薄な社会では、東アジア反日武装戦線的な考えや行動は広く理解されないだろう。身近に問題があること、在日外国人へのヘイトとか入管問題とか研修生の問題とか、今も同じ文脈同じ理不尽さのまま何も変わらず戦中戦後からほぼメジョリティとしてはかわらず継続している、つまり暴力装置を巨大に持ってるがわは何も変えようとしていない。このもどさしさは、つい、他人の命に対し、でも、それでも、、という気持ちを生んでしまうような気がする、ほんとにもどかしく折り合いつけがたい。そんなことも考えながら、、東アジア反日武装戦線か面白いのは初めに組織ありき、組織と綱領ありき、ではない参集の仕方、そのことも示す具体的ネーミングだなあ、などと、まとまらないことを様々に思った。
傍観者、無関心者であってはならない、、、
も、
2021年7月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
テロは絶対に許されない!そんなことはわかっているが、彼らを暴挙に駆り立てたのは一体何だったのだろうかと興味津々で鑑賞。まずは「日帝」という言葉そのものが懐かしい。学生運動のすっかり収まった時期に大学に入ったのに、学内には極左過激派の立て看板が残っていた。
映画の内容は2000年代になってから「狼」を中心とする過激派を追いかけるドキュメンタリーだったが、素顔はほとんど見えず、支援者だった人々のインタビューが中心。そして、繋ぎの映像は「ここを爆破したらどうなるのか」と問いかけるような橋が靄に包まれているような雰囲気。全体的にガスがかかった暗い絵が多い。
共感できるところはほとんどないのだが、最も印象に残ったのが日本人は中国や朝鮮に行った暴挙を忘れてしまったということだった。70年代は朝鮮特需によってもたらされた好景気と一億総中流という意識の時代。学生運動も衰退し、過激派は市民の賛同・支持も得られない。結局は暴力に訴えるしかなかったのだろうか・・・知らんけど。
映画はどちらかというと懐古的で、否定もしなければ美化もしない、淡々とした印象も残る。しかし、今の世の中、歴史修正主義者が跋扈し、中国人・朝鮮人の徴用さえなかったことにしようとする。さらに、コロナ禍で総中流意識さえなくなった現在、好景気以前の状態に近いのではなかろうか。歴史をもう一度鑑みるにはいいきっかけを与えてくれる作品だとも言えるのです。最近、謝らない、言い訳しかしない、反省しない人間が周囲にもいるのだけど、素直に謝る気持ちくらいは持ちたいものだ。
また、青森ねぶた祭りを死ぬまでには生で見たかったけど、その気がなくなりました・・・
2021年6月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
ー 年代的に、”三菱重工本社ビル爆破事件”はリアルタイムでは認知していなかった。
私がこの事件及び、「東アジア反日武装戦線」の存在を知ったのは、事件後可なり後年、学び舎で”法治国家において、超法規的措置をどう考えるか”と言うテーマで討論していた際である。ー
◆鑑賞スタンス
・”テロはどのような大義があろうとも、許されない。”という当たり前のスタンスで鑑賞。
であるので、”三菱重工本社ビル爆破事件”後に「東アジア反日武装戦線」から出された声明文には、激しい嫌悪感を催した。
何ら罪のない、8名の命を奪われた人と385人の重軽傷者に対して、”彼らは、日本帝國中枢に寄生し・・”と言うコメントは許し難かった。
・だが、その後、大道寺将司の慚愧に堪えない想いが、俳句としてナレーションされる辺りから、やや観方が変わった。
被害者の方々や遺族の方々への、深い謝罪の言葉。
自らの行為への深い悔いを現した俳句の数々。
ー 日本が犯した過ちに対して、別の方法を考えつかなかったのだろうか・・。
”若気の至り”ではすまないだろう・・。ー
・”近隣の国々”の日本への被害者意識を、今一度キチンと理解する事。
”日本を支援していると標榜している国”への被害者意識を忘れない事。
そして、且つて行ってしまった事に対する加害者意識を忘れない事。
但し、「東アジア反日武装戦線」が行ってしまった”誤った加害者意識”による行為に走らない事。
◆京都大学教授の言葉は、ズシンと来た。
・本当に大きな”暴力”とは、官僚主義による”暴力”であったり、司法当局による”暴力”である・・。
ー 再後半、映し出された故、大道寺将司宛てに送られていた膨大なハガキ、封書が段ボールに積まれているシーン。
そして、彼にはその膨大な支援の声が届けられていなかったという事。
学生時代に叩きこまれた
”如何なる人物にも人権はあり、その人物が犯した過ちを裁く際には、人権を尊重した上で適正な法の裁きを下す。”
と言う司法の根底を揺るがすシーンであった。
更に言えば、当時あのような事件を起こした首謀者に対し、擁護する者もいた、と言う事実も明確になったシーンでもある。ー
<この国は、民主主義を標榜しているが、真の民主主義が機能しているのだろうか。
真の民主主義が遂行される国になるには、私を含めた一人ひとりの国民の日々の意識を変える事の大切さ、
”現状を是とせず、カントリージェントルマンの如く、行政府の行いをきちんと確認する事”
を、今一度思い起こさせてくれた作品であった。
そして、今後この国を背負っていく若者たちに、
”今の日本は、オカシクナイカ?”と言う意識を持ってもらう必要性と、時には諭す必要性(不惑を越えたら、そういう事をしなければいけないでしょう、微力だけれど・・。)を感じた映画でもあった。
・嬉しかった事 今作を鑑賞していた観客の半分程度がお若い方であった事である。
<2021年6月13日 刈谷日劇にて鑑賞>
2021年5月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館
とんでもない愚作を観た、と言うのが、観終わっての素直な感想でした。ドキュメント映画として必要な最低限の取材、調査、整理、思索、編集、昇華、思想、等々、何れも見出すことができませんでした。言うなれば、内輪の集まりで上映される素人の思い出ビデオのようなものかと…。こういうものを、ドキュメント映画と言うのであれば、他のドキュメント映画に失礼ですし、全く心が動かなかったですから、プロパガンダ映画と言うのも、他のプロパガンダ映画に失礼です。ただし、ある作品が愚作であるか否かは、最初から最後まで観ないと判断できませんし、愚作であってもそれを表現する自由は、絶対に尊重される必要がありますから、このような作品でも映画館で上映される機会を得たことは、とても素晴らしいことだと思います。