「不細工なドキュメンタリーだとしても、最後の“Never Grow Old”までの長い前置きと考えれば良いほど、この歌でのアレサの歌唱は「素晴らしい」としか言いようがない。」アメイジング・グレイス アレサ・フランクリン もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
不細工なドキュメンタリーだとしても、最後の“Never Grow Old”までの長い前置きと考えれば良いほど、この歌でのアレサの歌唱は「素晴らしい」としか言いようがない。
①「ゴスペル(ミュージック)」のことはごくごく一般的なことしか知らない。ですからこの方面での深掘りは無理。でも歌詞の内容がこんなにも宗教的だとは思わなかった。キリスト教徒ではないので正直ついていけないなと思うことも一度ならずあった。アレサ・フランクリンが歌っていなければ尚更。②日本でも沢山の歌手が歌っている「Amazing Grace」も原詞はこんなにも宗教色が濃いものだとは思わなかった。これではキリスト教徒やキリスト教徒でなくても一神教の信仰心の篤い人しか歌ってはいけないくらいだと驚き。③ゴスペルにはあまり造詣はないけれども、このドキュメンタリーを見る限り本来は教会での儀式(礼拝)を盛り上げるものなんでしょうね。欧州の教会音楽ではパイプオルガンをバックに荘厳で清冽な歌声であるのが、ゴスペルではアフリカンアメリカンの生命感・リズム感が溢れ出ていて、これがやがてジャズやブルース、R&Bに影響を及ぼしていったのが良く分かる。また、ゴスペルの方も古い形に固執するのてはなく、現代の大衆音楽も積極的に取り入れる懐の深さがあるようだ。詩の中身が主への祝福や感謝を歌う内容にさえ変えられていれば。④教会で歌うゴスペルシンガーというのは巫子みたいなものなのだろうか。信者はその歌の中に或いはシンガーのなかに神を見るような…私は一神教宗教の信者ではないのでわからないけれど、これだけはわかった…アレサ・フランクリンは歌の神様だということが。⑤どの歌唱も圧巻だが、やはりラストナンバーの“Never Grow Old”が素晴らしい。全身全霊などという表現が及ばない程。命を賭けて歌っているとしか思えない。映画館の中ながら終わった途端思わず拍手してしまった。この歌を聴かされてしまえば映画の出来に関わらず★五つ以外に出来ようがない。⑥シドニー・ポラックは好きな監督だし演出力はある人だが、初めてのドキュメンタリーとはいえ、あまり誉められた出来とは思えない。伝説的なチョンボは別にしても、フォーカスでもピントがなかなか合わなくて見苦しいところが再三あったし、意味のないショットも散見される。ただ、70年代の髪型や服装は懐かしく見れた。