クライ・マッチョのレビュー・感想・評価
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俳優としての集大成
クリント・イーストウッドの監督デビュー50周年作品。『運び屋』のときより元気な気がするが、なんと91歳である。
ロデオのスターだった男の転落人生と、不仲な両親のために人生に絶望している少年の、2人の心の交流と再生を描いたロード・ムービー。苦虫を噛み潰したような表情はいつもと変わらないが、世界の描き方がソフトになったような印象だった。決して“日和った”とか“あきらめた”わけではない。暴力に頼らない解決の仕方を提示してみせたように思った。かっちょイーストウッドだな。
大地にそびえ立つ見事な老木の姿
作品の印象は、91歳のクリントイーストウッドと同じく、広大な大地に静かにそびえ立つ老木、といった感じ。 非常にいい意味で、枯れた作品となっている。 ストーリーテラーとしての腕は健在で、 たっぷりと間を使ったゆったりとした演出。 劇的なクライマックスへと昇り詰めるわけではない。 小さなスリルと心温まるエピソードが巧に配置され、 物語の中に惹きこまれていく。 まさに老練な技。
何より、 老いたイーストウッド自身が、この作品に重みと説得力を与えている。 演技派ではないが、 老いた自分をさらけ出せる彼だからこその演技が、とにかく素晴らしい。 若い頃は自分を強く見せようとしていたーすべてを手に入れた気になるが、ある日その無意味さを知る―という主人公のセリフは、イーストウッドが語るからこそ説得力がある。
半世紀以上も前から無類のカッコよさと強さをスクリーンで魅せてきた男が、平気で老体を晒しているのだ。 監督と主演だから当然といえば当然かもしれないが、 ここまでヨレヨレの爺ちゃんになった自分を客観的な立場で冷静に演出し、演技し、しかも結果的には見事な作品に仕上げているのだから恐れ入る。 老境に達してますます、映画創作に喜びと生きがいを感じているに違いない。 羨ましい限りだ。
いくつになっても人生は美しく温かい
クリント・イーストウッド演じる主人公マイクと少年の交流を大自然を背景に描いた本作は、とても奥深くて温かく、じわ〜っと心に沁み渡る作品でした。
予告編から想像していた「半ば誘拐に等しい少年との出会いから、危険な帰路を走る」ような作品ではなく、多少の危機はあれど、基本的にはマイクとラフォとマッチョ(雄鶏)の旅の過程を映し出す、比較的平坦な物語。エモーショナルな感情表現も全然ありません。
でもだからこそ、砂漠の広大さや自然光の美しさ、そこに暮らす人々や動物たち、そしてマイクの心情の変化やラフォの成長が際立ち、胸に響きます。一つ一つの情景が心に染みて、噛み締めたくなるのです。
そして、クリント・イーストウッドの佇まいにより作品の説得力と深みが増し、91歳の存在感を見せつけられました。マイクが醸し出す大人の余裕と哀愁、懐の大きさ、そして優しさと強さ。とんでもなくカッコ良い!流石です。
年齢を重ねることを悲観するのではなく、受け入れ、楽しみ、居場所を見つければ、温かく生きていける。そんなイーストウッドからのメッセージであり、まだまだ人生謳歌しますよという彼の相変わらずさに笑ってほっこりしました。
良い映画でした。
何歳になっても人生を楽しもう
息が詰まるようなスリリングな展開があるわけでもなく、心揺さぶれる感動のシーンがあるわけでもない。だけれども、終わってみると幸せな気分に浸れる。
肉体的な強さを失い、どん底の人生を経て、あらゆることを飄々と受け流す強さを持つに至ったマイク。両親への愛情に飢え、無軌道に日々を過ごすラフォ。この2人のロードムービーかと思っていたら、車の故障で、とある街に留まる事になってしまう。
この街でのエピソードは、微笑ましくも人の温かさで詰まっている。他人から頼りにされることで、生きる喜びを取り戻すマイク。何歳になっても人生を楽しんでいこう。クリント・イーストウッドの現在の境地が伝わってくる。
MVPは間違いなくマッチョ🐓
てっきり主人公が誘拐した少年の成長物語かと思いきやラブロマンスで終わってびっくりしました。
内容は可もなく不可もなくでした。
ただ、もう少しだけ少年の成長を描いて欲しいという気持ちもあります。
マッチョ🐓が本当に良くて、この映画のMVPは間違いなくマッチョ🐓だと思います。
クリントイーストウッドが主演でなければ「許されざる映画」
クリントイーストウッドが主演だから許される映画でしょう。
あまりフィクション作品に対し現実的に突っ込むのは良くないですが、誘拐を依頼した父親は善人なのか悪人なのかはっきりせず終わってしまったし、助けてくれた女性が警察に追われて初めて街にやってきた二人を何故すんなり受け入れたのか、母親の手下のヘタレっぷり等々、、、、。時間的にもう少し尺をとって父親がやはり悪人で最後にあの息子も合流する所までやって欲しかったですね。
しかしながら、1979年が舞台ですが、現代版の西部劇みたいで絵面は良かった。ガンマンの撃ち合いはないですが旅人が悪人から追われて訪れたとある街の女性と恋に落ちるが、また行かなくてはならない主人公が悪と対決し、またその女性の所に戻る。良くありがちな西部劇の物語、イーストウッドだからこの映画は許されるのです、きっと!そういう事にしておきましょう!
紛れもない最後のカウボーイ映画
なんと言っても、御年91歳のクリント・イーストウッドの主演・監督の新作を観ることが出来る至福感が素晴らしい!何てことないロードムービーだし、近年の作品に比べると正直レベルがやや落ちるかもしれないけど、作品自体はどう見ても西部劇。今のイーストウッドでなければ絶対に出せない、かつてはマッチョだったロデオスターの枯れ切った佇まいだけで、西部劇が成立してしまうのが凄いです。まさに、イーストウッドを鑑賞する映画でした。
イーストウッドは老いさえ楽しんでいる
・ピアノのつぶやくような調べ
・古いシボレーのピックアップトラックでの老いぼれた登場
・運転席の横顔
・ひょろりとした長身の体はより細く骨ばって、足取りもおぼつかない
・昼寝のシーンをはさみ、老いを強調さえする
・元々声量は少なく吐き捨てるようなセリフが一層際立つ
・これら一連の表現で、老いを認め受容する潔さ
オープニングで「あぁ、こういうことか」と思い知る。
しかしイーストウッドは老いさえ楽しんでいた。
本作は、我々がイーストウッドに期待する強さには肩透かしを食うが、
・大地を俯瞰するカメラ
・人間関係を築き信頼していく過程
・優しさや本当の強さ
といったものは十分に描かれている。
また、登場人物が少ないために、相手役に多弁させることでストーリーを補完していく簡潔さで変化のない風景にテンポを持たせた。
ただし、ラファと母親の演技がありきたりでやや鼻白む。
反抗期の少年があまりに素直で拍子抜けするし、ステレオタイプな母親とその取り巻きも月並み。
一方、光っているのはカフェの女主人マルタ。大きな口、くっきりした目元と存在感で、老人イーストウッドに息を吹き込んだ。本当のマッチョはマルタなのかもしれない。
また、いつもながら怪しげな男を演らせるとピカイチのヨーカムもいい仕事をした。
イーストウッド作品に一貫する「本当の強さ」「信頼」といったものはあますことなく現れており、陳腐なストーリーではあるが、ファンとしては見ておくべきだろう。子どもの未来と世代交代を匂わせる佳作だ。
これを最後の作品にしてほしくない。
70年代最終盤の米国テキサス州。 かつてのロデオスターのマイク(ク...
70年代最終盤の米国テキサス州。
かつてのロデオスターのマイク(クリント・イーストウッド)は、ロデオ引退後勤めていた牧場から馘を言い渡された。
寄る年波には勝てず、朝も遅れ気味なのだ。
それから1年。
元雇い主から、別れた妻のもとで暮らす一人息子を連れ帰ってほしいと依頼される。
場所はメキシコ。
誘拐にも近い形かもしれないが、しぶしぶ引き受けたマイク。
元雇い主から伝えられたメキシコの場所では、彼の元妻がいかがわしい商売をしていた。
13歳になる一人息子のラフォ(エドゥアルド・ミネット)は、ストリートで闇闘鶏で金を稼いでいるらしい。
闇闘鶏場で出かけたマイクは、警察の手入れの最中にラフォを捕まえることができた。
しかし、米国への帰途、ラフォの母親からの追手が迫ってきていることに気づいたマイクは、う回路を通って行くこととする・・・
といった物語で、マイク役がもう少し若ければ、追跡アクション映画になるかもしれないが、90歳のイーストウッドなので、そうはならない。
『グラン・トリノ』に近い、老人と少年物語なのだけれど、あの映画よりはかなり緩い。
歳のせいといえばそれまでなのだけれど、イーストウッドには、監督デビュー作『恐怖のメロディ』(1971)の頃から、男女関係においては幾分緩い描写があり、本作でもそれが前面に出ている。
追手をまいたマイクとラフォは、メキシコの小さな町の食堂に行きつくのだが、そこの女主人マルタ(ナタリア・トラヴェン)と懇意になっていく。
その様は、『マディソン郡の橋』のようでもあるのだけれど、マルタに孫がいるところから、まぁ、経年版といったところ。
追跡劇は横に追いやられ、マイクとマルタの関係が大きく描かれていきます。
あまり新味はないけれども、マッチョな国メキシコで、男に頼らず生きてきたマルタのキャラクターは、イーストウッドが憧れる女性像なのかもしれません。
また、『グラン・トリノ』のような老人と少年の物語は、その小さな町でのささやかな暮らしとして描かれ、かつてのロデオスターらしく、馬の馴致に成果を出し、ストレンジャーの立場から、町の人々に必要とされる人間へと変化していきます。
ここいらあたりは、イーストウッドの老境のおおらかさが出ており、「俺は、ドリトル先生か」という嘆息とともに笑わせてくれます。
最後は、追手が迫り、町を出、ラフォとともに米国へ・・・となるわけですが、そこはそこ、あまり緊迫感はなく、ふふーん、といった感じでラフォを送り届けることになります。
メキシコ育ちの少年が米国に越境し、米国育ちの老人がメキシコに安住の地を得る・・・というあたりも、悪くない決着。
なので、そこそこのいい塩梅。
ですが、まぁ、米国映画界の人間国宝イーストウッド映画ですので、もう少し期待するところもありました。
イーストウッド監督・主演でなければ、まぁ、普通の映画かなぁ、といったところ。
もう少し若く、70代ならば、もう少しアクション寄りになったかも。
でも、それではさらに、ありきたりな映画か・・・
違和感
特別クリントイーストウッドファンでない人からすると、違和感ありありだった。
おそらく50歳以上年下であろう少年の母から迫られるシーンなんかは、クリントイーストウッドが90こえても俺は現役!女に求められる!男だぜ!のアピールのように思えて、なんだかしんどかった。
あのシーンいる?
同じく農場のマルタさんもそう。
おじいちゃんすぎて、ふつうに恋に落ちるとは思えないんだが...。
実年齢を知ってるからなのか、ものすごいおじいちゃんなかんじだからちょっと違和感があった。
キスシーンとかももうちょっと怖く感じてしまう。
正直、マディソン郡〜ですら、中年の恋愛にちょっと気持ち悪いと思ったたちなので、ちょっときつかった。イーストウッドにとって、老いても男性としてのアピールが結構重要なんだと改めて思った。
肝心の少年も、最初から最後まで普通にいい子で、
おじいさんとの交流で変わってくさまとか、そういうのも全くなかった。
鶏はめちゃくちゃ可愛かったが、ちょっとよくわからない作品。
予想外に凄く良かった‼️
出足はノンビリ、徐々にハマっていった。他人同士が温かい家族になり途中からは感動してしまった。
凄く温かい気持ちになった。良い話し。
あんなお爺ちゃんがいたらいいなと思う。
時間も短めであっという間に終わった。
尺の無駄もない。
非常にできた映画じゃないかもしれないが、期待せずに観れば元が取れた気になる映画。
個人的には非常にお薦めしたくなりました。
クリント・イーストウッドは、まだ頑張ってる
メキシコに住む友人の息子をテキサスの牧場まで送り届ける為、主人公と少年の旅が始まる。
メキシコの田舎町の感じがディズニーランドのウエスタンランドみたいで良いのよねぇ。
今までのクリント・イーストウッド監督映画に比べるとおとなし目な展開。
そりゃあ、イーストウッドも91歳だもの。
監督主演してるだけでも脅威だよ。
チキンとマッチョ
“強さ”に憧れる少年ラフォと、かつては“強かった”元ロデオスターのマイク、二人の絆が強くなるメキシコを舞台にしたロードムービー。
監督製作主演を務めたクリント・イーストウッド・ジュニアの最新作。驚きました、監督91歳だと。カントリー音楽、カウボーイ、メキシコの広々とした風景も美しい。
旅路での思わぬ出逢い、マイクとラフォの築く友情、心温まるシーンや台詞に思わず目頭が熱くなる。
メキシコ行ってみたいなぁ〜。メキシコと言えばテキーラ、警察官とのやり取りのシーンや車の盗難など改めてメキシコの治安の悪さを思い知るけど、、、。
ラフォのダメな母親を演じた見目麗しい女優さんは誰だろう?
これはなんの映画?
驚くほどにサラッとした内容で、観終わった後にほとんど何も残っていないというのが正直な感想。
マイクとラフォの2人の関係をしっかり描く人間ドラマかと思いきや、それほど描かれず。それじゃあロードムービーかなと思ったら、中盤で1箇所に留まり始めて移動はほぼ終了。
迫り来る危機はわりとサラッと切り抜けて(違法行為しまくりだけど)、ラフォとの別れもアッサリ。父親も下衆だし、あの後にどうなったのかが知りたいのだけど…
何より、1番描かれていたのが途中で出会ったメキシコ人家族との関係って…まさか高齢男性のラブロマンス映画だとは思わなかった。
演出や脚本の意向で説明をなるべく省いたのかもしれないけど、あれだけ省いてしまうと映画の内容が薄く感じてしまう。
上記にもある通り2人の関係性の変化は「察して」程度にしか描かれず、なんなら途中からラフォはほぼ通訳だし、流石に扱いが雑だったような気がする。
マイクが特別強い人間として描かれてもいないので、終盤のマッチョに関する台詞もあまり響かなかった。
唯一良かったのは、イーストウッドの芝居が枯れても尚若々しかったことか。正直、イーストウッドぐらい人生経験を積んだ役者が演じなかったら、マイクという役は全く説得力が無かったと思う。
けっこうよかった
先日見た『マークスマン』と、メキシコ国境の舞台と、少年と年寄りなど、テーマが被る。こっちは完全にメキシコで、子どもも13歳でけっこう大きい。敵がほぼ一人でしょぼい。しょぼいところがリアルだ。
イーストウッドと子どもと鶏が並んで歩いていく後姿が印象的だ。イーストウッドが動物の相談が殺到して「オレはドリトル先生か」と言う。
少年のママさんに迫られるのだけど、あの年でたつのだろうか。最終的に彼女も作る。
あの女の子たちは、後々カルテルに誘拐されないかと心配だ。鶏を飼ってみたい。
イーストウッド過去作のエッセンスを集約
デニムシャツ、ウエスタンブーツ、テンガロンハットを着こなし、女にモテまくる91歳なんて存在するわけない。でもクリント・イーストウッドが演じると違和感がない。背筋は曲がり足元もおぼつかなくなったけど、彼が演じると様式美の域に達してしまっている。
「イーストウッドの集大成」とキャッチコピーがあるけど、これが言い得て妙なのは、これまで彼が撮ってきた作品のエッセンスが盛り込まれているからだ。
そもそも(元)カウボーイという役柄が『ローハイド』だし、老人と少年の交流というテーマが『グラン・トリノ』であり、境遇こそ違えど、老齢の男女が恋に落ちるのは『マディソン郡の橋』を思わせる。動物と仲良くなれるという能力(?)に至っては、相棒がオランウータンだった『ダーティーファイター』ですでに身に付けている。何よりロードムービーという形式そのものは、『ガントレット』や『センチメンタル・アドベンチャー』などなど、何度も描いている。
そして、何度も何度も演じてきたマッチョ(男らしさ)を、本作では少年に“伝承”する。『グラン・トリノ』では自己犠牲でそれを伝承していたが、本作では生きながらにして行う。真のマッチョとは内面の弱さを伴う事で得られると諭し、イーストウッドは安住の地へと戻っていく。
ストーリー自体はありきたりかもしれないが、イーストウッドというフィルターを通してしまうとどうしても許容してしまう。新作が発表される度に繰り返し言うが、彼には時間の許す限り、気力の続く限り映画を撮り続けてほしい。
キャスティング
今回のイーストウッド作品はヒリヒリ感がなく、全体を通してハートウォーミングな物語となっています。十分に楽しめてそれなりに満足感はありますが、、、
正直に感じた点は、今回は御大自らでなく、適当な年齢の他の誰かをキャスティングしても良かったのでは?と。(Wikipediaによればシュワルツェネッガー主演で進めていた時期もあったとのこと)
勿論、イーストウッドの演技にケチをつけるつもりはないのですが、物語の主役でイーストウッド演じるのマイク爺さんは、「以前は一世を風靡した元ロデオスターで、今はもう世捨て人に近い枯れきった老人」です。
イーストウッド本人はまだまだ矍鑠とされていて、実年齢を感じさせないかもしれませんが、逆にこういう役を演じるとどうしても、崖を上るシーンで(気持ちとして)手を取ってあげたくなったり、女性とのダンスもなんだか介護っぽく見えてしまいます。
これが例えば『運び屋』のアール爺さんみたいな脂ぎって癖のある老人役だと、そのメリハリに「まだまだイケるぞイーストウッド」と思えるのですが、今回はちょっと気になっちゃいましたね。
逆に、驚くべき光っていた助演をしていたのが「マッチョ」です。マイクと対する人懐っこさと、やや都合よく見える展開も許せる彼の演技(?)。今回は彼に助演男(雄)優賞をあげたい笑。
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