「この巨大なスケール感がワイズマンだ」ボストン市庁舎 エロくそチキンさんの映画レビュー(感想・評価)
この巨大なスケール感がワイズマンだ
フレデリック・ワイズマン‼︎
2017年(日本では2019年公開)の「ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス」は、図書館の持つ機能の多様性と存在意義を知らしめるだけでなく、アメリカの近代史、人種問題、格差社会、教育問題など雑多な内容に触れ、アメリカ社会そのもの、その過去、現在、そして未来までを俯瞰しようとする破格の傑作だった。
そして今作もまた、、、嫌になるほどの傑作。
これはワイズマンの生まれ故郷、マサチューセッツ州ボストンの市役所と街の姿を捉えたドキュメンタリー。274分(+休憩15分)と長尺だがストレスは一切なく、膨大な情報量と緻密な構造に圧倒され続けるのみ。
まずは市役所や公共機関がもつ様々な機能をわかりやすく提示していく。サービスを提供する側、される側の思いを丁寧に吸い上げる。
さらに高齢者、ホームレス、貧困、再開発、立ち退き、人種差別、LGBT(レッドソックスの優勝パレードも‼︎)など、山積みの問題に奮闘する市長マーティ・ウォルシュと市役所職員たちの姿をとらえた。
観る我々はボストンの市政をこれでもかと知ることになる。さらにはそれと相容れない州政、国政までもが透けて見えてくる構造。そう、トランプは対岸にいた。このスケール感がワイズマンだ。
それにしても featuring マーティ・ウォルシュ‼︎
この若き市長に対するワイズマンのシンパシーとリスペクトを強く感じた。マーティの言動は実に真っ当だった。
そして当のワイズマン。今は亡き自分の両親と同じ1930年生まれ、91歳のモンスター。彼の作品を観るとタルコフスキーやアンゲロプロスの作品と並べたくなる。彼らは神の領域にいる。
コメントする